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【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第4回 バラエティに富んだユニークな「鬼」たち

この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。

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第4回 バラエティに富んだユニークな「鬼」たち

「山河令」で悪役として登場する鬼谷の悪鬼たち。第17話では無常鬼の野心が明らかになり、それぞれの思惑を持つ悪鬼たちがますます暗躍していくことになります。そんな「鬼」と呼ばれるキャラクターは中国の歴史・文化ではどのような存在なのか紐解いてみましょう。
           


「山河令」第17話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.


中国語で「鬼」といえば、一般的には人間が死んだ後の魂を指します。よく見てみれば魂という漢字には「鬼」の字が入っていて、中国では霊魂や幽霊を「鬼」と呼ぶのです。その中には人間に悪さをする亡霊もいますが、中国から伝わり日本でも厄除けとして人形や絵が飾られるようになった「鍾馗様」のように、「鬼」を由来とする説話がありながら神様として祀られる存在もあり、中国の「鬼」は必ずしも悪いイメージとは限りません。

一方、インドから中国に伝来した仏教の概念では、悪行を重ねた人間が死後に行く場所として地獄道、餓鬼道、畜生道があり、餓鬼道に堕ちた亡者とされる「プレータ」は日本では「餓鬼」と呼ばれますが、中国ではこれも「鬼」と呼びます。餓鬼道の「鬼」は36種類に分類されていて、その中には生前に肉ばかり食べていたために餓鬼道では血しか吸わせてもらえない「食血鬼」、生前に善人を餓死させたために餓鬼道では何も食べさせてもらえない「無食鬼」など、それぞれ特徴のあるユニークな「鬼」たちがいます。

中国では仏教の教えとともにこうした「鬼」たちのキャラクターが民衆の間にも広まると、彼らが人間界に現れ人間に取り憑いたり悪さをしたりする「妖怪」のような存在として語られるようになっていきました。生まれ変わるために人間を自分と同じ死に方で死なせる「吊死鬼」や、人間をあの世へ連行するためにやってくる「無常鬼」など、バラエティ豊かな「鬼」が多くの民話や伝承で語り継がれるようになったのです。

このように中国で言い伝えられてきた「妖怪」としての「鬼」のイメージが、「山河令」に登場する鬼谷の悪鬼たちにも受け継がれているといってよいでしょう。彼らは従来の「鬼」と違って幽霊ではなく生きた存在ではありますが、それぞれが人々に恐れられる強烈な個性を持つキャラクターとして生き生きと描かれています。


「山河令」第7話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.


なお、「山河令」の悪鬼は鬼谷に入る前にそれまでの記憶を消すために「孟婆湯」を飲みますが、これは中国の伝承では人間が転生する際に前世の記憶を消すために飲むものです。つまり、鬼谷は悪鬼が過去を捨てて新たな人生を生きる場といえますが、その弱肉強食の世界で苦難を味わう彼らが本当に望むことは、いつか真っ当な人間の世界に戻ることなのです。

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