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【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第2回 音楽の力で戦う武器となる「楽器」

この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。

連載 中国の歴史・文化からひも解く「山河令」
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第2回 音楽の力で戦う武器となる「楽器」


中国時代劇に欠かせないアイテムといえば楽器。ドラマで登場人物が何かしら楽器が弾ける設定となっていることが多いのは、古代の中国で教養人が嗜むべきは「琴棋書画」(琴・囲碁・書・画)とされていたからで、「山河令」にも様々な楽器を奏でるキャラクターが登場します。また、その中には中国の古典に見られるエピソードと同じく、楽器を奏で音楽を通して友情を深める“安吉の四賢”のような人々も出てきます。

さらに、「山河令」では楽器は音楽を奏でるだけでなく戦闘でも活用されます。劇中では毒蝎四大刺客の1人、魅曲秦松の弾く琵琶の音色が“魔音”となって周子舒、温客行たちを襲い、それを撃退すべく周子舒が温客行の持つ蕭を吹いたり(第4話)、蝎王が琵琶の“魔音”で薬人を操ったり(第6話)します。このように楽器が武器として使われるのは中国時代劇では珍しくありません。


琵琶の“魔音”で薬人を操る蝎王 「山河令」第6話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.


中国の歴史をひも解いてみると、楽器が戦場で思わぬ威力を発揮した興味深い逸話があります。

例えば、小説「三国志演義」に書かれた諸葛亮孔明の「空城計」。蜀の諸葛亮孔明は圧倒的な兵力の差がある魏との戦いに苦戦していました。そこで彼はあえて城門を開け放つと、魏の兵士たちを招き入れるかのように一人楼台の上で琴を弾きはじめました。すると、それを見た魏の司馬懿は何かの罠ではないかと疑って、城内に攻め込むことをしませんでした。

また、西晋時代から五胡十六国時代の武将として有名な劉琨は、匈奴(モンゴル高原を中心に勢力を誇った遊牧民族)との戦いで楽器を使う奇策を用いました。まず、酒席を設けて楽器を演奏することで、大勢の伏兵がいると敵軍に思わせ足止めすると、自ら竹蕭で悲しげな曲を奏でた上で、味方の兵下たちと匈奴の胡笳(葦の葉で作った笛)を吹いたのです。すると、望郷の思いにかられた敵兵は戦意を喪失して引き揚げ、劉琨は不戦勝を得たといいます。

「山河令」に登場する楽器は、こうした人々に大きな影響を与える音楽の力をドラマティックかつ幻想的なイメージへと昇華させたものといえます。その音色は人を狂わせるなど相手にダメージを与える場合もあれば、温客行が蕭を吹いて周子舒の内傷を癒す(第4話・第9話)ように相手にプラスの力を与える場合もあり、楽器が武術と同じように「攻撃力」と「治癒力」を発揮するのです。

ちなみに、チャン・イーモウ監督が手がけた名作映画『HERO』には「武術と琴の音は違っているようで原理は相通じる。いずれも“大音希声”の境地を追求するもの」という名言があります。「老子道徳経」に書かれた “大音希声”とは「いい音楽とはたとえ大きな音でも極めて静かなもの」という意味で、道家(春秋戦国時代に現れた思想家・学派である諸子百家の一つ)の祖とされる老子の唱えた“無為自然”の思想を表しています。

つまり、楽器で戦うのは荒唐無稽のように見えて実はそこには奥深い哲学があり、武術と音楽に共通の美学と精神性を見出す中国らしい表現といえるのです。

\「山河令」特集はこちら/

TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。

Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)

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©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.
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