そんな鬼谷の十大悪鬼たちのそれぞれのプロフィールとその由来も紹介しておきましょう。中国の民間伝承でおなじみの「鬼」もいれば、胆小鬼（弱虫）、 愛哭鬼（泣き虫）、小気鬼（けちんぼ）、酒鬼（酒飲み）のように現代ではすでに人の特徴を示す代名詞となっている「鬼」がいるのにも注目です。


無常鬼
プロフィール
鬼谷のナンバー2。慇懃無礼な態度で、野心に溢れた腹黒い性格です。

由来
閻魔の部下で魂を黄泉へ連行する使者。二人組の白無常・黒無常として描かれることが多いのですが、「山河令」では無常鬼の下に黒無常と白無常がいるという設定になっています。また、黒無常と白無常は生前、義兄弟の契りを交わした親友同士で、天気が悪くなり傘を取りに帰った白無常を橋の上で待っていた黒無常が溺れ死に、白無常が後を追って首吊り自殺をしたという伝説もあります。



黒無常
プロフィール
無常鬼に仕えています。黒い帽子に黒い服、西洋の死神のような大きな鎌を持っています。

由来
上記の無常鬼と同じ。全体的に黒いイメージ。一般的には連行する人間をつなぐ鎖を持った姿で描かれることが多いです。帽子に書かれた「天下太平」は、どんな悪人も彼に会えば怯えて大人しくなるので、「世に平和をもたらす」という意味です。



白無常
プロフィール
黒無常とともに無常鬼に仕えていましたが、第10話で温客行に見せしめとして殺されます。

由来
上記の無常鬼と同じ。人間だった時に首を吊って死んだため舌が伸び、全身は白いイメージで、哭喪棒（喪に服しているのを示す棒）を持っているとされています。帽子に書かれた字は「一見生財」で「会えば金持ちになれる」という意味です。これについては、彼にレンガを投げつければ金銀を投げ返してきて、それがなくなれば逃げていくので、出会った人は金持ちになれるという言い伝えがあります。



喜喪鬼
プロフィール
羅浮夢という名の令嬢でしたが、趙敬に裏切られて鬼と化し、世の薄情な男たちに復讐する仕置人というべき薄情簿主となりました。鬼谷の中でも女性たちを守る存在です。

由来
「山河令」のオリジナルのキャラクター。中国語で「喜喪」はいわゆる大往生で亡くなった高齢者の葬儀をお祝いとして行うことを指しますが、本作では死者である花嫁との婚儀で薄情な新郎の命を奪うという、本来は喜ばしいはずのめでたい婚儀が葬式となることを意味しているといえます。



艶鬼
プロフィール
本名は柳千巧。かつて于丘烽との不倫の恋で心も名誉も傷ついたところを喜喪鬼に救われ、彼女に仕えるようになりました。顔に醜い傷があり、四季山荘で扮装術を教わった過去があります。

由来
全般的になまめかしい美女の姿をした鬼を指す名前です。



急色鬼
プロフィール
女たらしの色男で、やわな優男に見えて戦闘能力は高く、無常鬼の側について暗躍します。

由来
現代では女性とすぐに体の関係を持とうとするような「色魔」の男性を指す代名詞です。



食屍鬼
プロフィール
人間の死体が好物。悪鬼にしてはユーモアを感じさせるとぼけたキャラクター。

由来
中国由来ではなく、アラブの神話に登場する人間の死体を食す怪物「グール」のイメージ。「グール」はアメリカで創作された架空の神話「クトゥルフ神話」や、日本の漫画『東京喰種トーキョーグール』などの元ネタにもなっています。



開心鬼
プロフィール
武術を鍛錬した時の後遺症で、面白くなくても話すと笑ってしまう症状があります。急色鬼とともに無常鬼に協力します。

由来
「開心」は「嬉しい、楽しい」という意味。「開心鬼」といえば中国伝承の鬼たちをパロディにした香港映画の人気シリーズのタイトルとして有名（日本で『ハッピー・キョンシー』のタイトルでリリースされた作品も）ですが、特定の鬼の名前ではありません。



吊死鬼
プロフィール
蜘蛛の巣のように糸を繰り出す纏魂糸匣という暗器を使います。鬼谷の谷主から琉璃甲を奪って逃げたとされていますが、第1話で何者かに殺されます。

由来
首を吊って亡くなった人が鬼となり、人間に取り憑いて首を吊らせるという伝説があります。この鬼は「聊斎志異」など多くの民話に登場し「縊鬼」とも呼ばれます。



長舌鬼
プロフィール
纏魂糸匣で吊死鬼のふりをして鏡湖派を襲います。第6話で周子舒・温客行と戦った結果、命を落とします。

由来
長い舌を持つ鬼。民話では舌が口から長く垂れ下がった姿で描写されることが多いです。

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Edited：小俣悦子（フリーランス編集・ライター）