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【台湾】太台本屋 tai-tai books 黄碧君さんが教えてくれる、台湾の読書事情とオススメ本3選

11月の特集テーマは「読書」。海外旅行に行くことが容易でない今、本を通じてアジアを感じてみませんか?
今回ご紹介するのは、韓国、タイ・チベット・トルコ、台湾、中国、香港。それぞれの読書事情や入門編にぴったりのおすすめ3冊をご紹介します。


台湾の本について教えてくれるのは…

太台本屋 tai-tai books 店長
黄碧君さん 

  

台湾出版界のトレンド&特徴は?

南国のイメージが強い台湾だが、実は「出版大国」だということはあまり知られていない。統計数字によると、2019年の新刊点数は3万6千点あまり。ざっくり計算して人口一人当たりで日本の約3倍の新刊書籍が刊行されていることになる。新刊の25%は海外作品の翻訳書で、その過半数が日本の作品だ。

では、台湾オリジナルの本のトレンドはどうだろう? アジア映画ファンの皆さんは、2010年前後には映画界で、魏徳聖(ウェイ・ダーション)が、監督した『海角七号 君想う、国境の南』(08)、『セデック・バレ』(11)、プロデュースした『KANO ー1931 海の向こうの甲子園ー』(14)など、日本時代の台湾と関係する作品を立て続けに作り、それぞれ興行収入で台湾映画史に残る大ヒット記録を打ち立てたことをご存じだろう。実は出版界でも同じ時期に、「日本統治時代」をテーマや背景にした小説や人文書のブームがあった。台湾人のアイデンティティ探しブームとシンクロし、中国とは違う自分たちのルーツを掘り起こし、祖父母や親の世代はどんな時代を経て、どんな経験したかを知りたいと思う人が大勢いたのだ。


映画『海角七号 君想う、国境の南』 ©2008 ARS Film Production. All Rights Reserved.
DVD発売中 ¥1,410+税 発売・販売元:マクザム


そして数年前からは、日本時代よりさらに時代を遡って、大航海時代や台湾の原住民文化などにまで注目する書籍——史実にヒントを得た小説や、面白く歴史の小ネタが読める本などがたくさん出てきている。いま、台湾400年史というスパンで自分たちのルーツを考えるのがほぼ定説になっている。

台湾の本についてもう少し特徴をあげると、同志文学(LGBT文学)、原住民文学、詩などのジャンルの作品が昔から盛んに書かれてきた。小説については、かつては純文学や文章表現の技巧に凝った作品が評価される傾向があったが、80年代後半以降、海外の同時代作品が大量に翻訳出版された影響もあり、若手の作家の作品には「読んで面白い」小説が増えている。台湾のいまを代表する作家を一人紹介するなら、台湾の若い読者に強く支持され、日本でも翻訳が出ている呉明益(ご・めいえき)があげられる。彼の小説やエッセイは、創作作品としての面白さを備えながら、どれも台湾の歴史や自然環境や原住民文化、エスニックに強く根付いていて、台湾を深く認識するための入り口の一つと言っても過言ではない。作品は欧米をはじめ現在十数国で翻訳出版されている。

人文書、ビジュアル本なども、この10年あまり大きく成長し、続々と刊行された。特に、最近の書籍デザインのセンスは飛躍的に進み、日本の出版人からも注目されている。

私が代表をしているユニット「太台本屋 tai-tai books」は、そんな台湾から、日本人にも面白いと思ってもらえる作品を独自にセレクトし、日本の出版社、読者に向けて紹介する活動をしている。この11月には、日本語で読める台湾の本の中からおすすめの18冊を紹介する小冊子「TAIWAN BOOKS 台灣好書」を企画した(台北駐日経済文化代表処台湾文化センター発行)。台湾の本を読んでみたいけど、どれから読んでいいかわからない、という方のガイドになればうれしい。


太台本屋tai-tai books企画・編集・制作「TAIWAN BOOKS台灣好書」

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