中国にある世界最大規模の映画スタジオ「横店影視城」。数多くの映画・ドラマが撮影され、華流ファンにとって「見たことある！」な風景がいっぱいの“横店”を、華流エンタメに精通したライター 小酒真由子さん＆島田亜希子さんが訪問！　現地で取材した、横店の基本情報からエリアごとの見どころなど、全５回＋番外編で紹介します。

※ご紹介している情報は、2025年6月時点のものです。

第５回　水路に舟が浮かぶ「夢幻谷・江南水郷」

  
夢幻谷の観覧車に乗れば上空から江南水郷を眺められます！

杜牧の「江南春」では「千里鶯啼いて緑紅に映ず」と自然の美しさが詠われ、白居易の「憶江南」では「能く江南を憶わざらんや」とその地を慕う気持ちが吐露されているように、江南（長江下流域）は緑と水が豊かな魅力的な土地として古くから人々を惹きつけてきた場所。時代劇ドラマでも度々、主人公が思いを馳せる故郷や皇帝が巡幸に出向く重要地として登場します。

そんな歴史上の江南を再現して多くの時代劇ドラマの撮影地となっているのが、夢幻谷・江南水郷。横店の中でも遊べる施設が多く大きな観覧車が目印となっている夢幻谷に隣接する江南水郷は、普段は一般客には公開されていませんが、春節など特別な期間に開放されることがあり、中を見学することができます。

江南水郷に足を踏み入れると……そこは張り巡らされた水路に小舟が浮かび、いくつもの橋がかかっていて、“東洋のベニス”と言われる水の都・蘇州を思わせるような景色。「陳情令」で魏無羨たちが訪れる彩衣鎮、「山河令」でひなたぼっこする周子舒が温客行と出会う場所、「明蘭〜才媛の春〜」や「墨雨雲間〜美しき復讐〜」のヒロインが住んでいた街……そこで繰り広げられた様々な名場面が脳裏に鮮やかによみがえり、ドキドキワクワクさせられる空間です。

POINT1　小舟が浮かぶ雰囲気満点の水路

©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

入り口近くの水路には撮影に使われたと思われる小舟がいくつも浮かんでいました！　「山河令」第2話でも周子舒（張哲瀚/チャン・ジャーハン）が小舟に乗る場面がありましたが、江南水郷の撮影では水路が印象的に使われています。

POINT2　水路にかかるたくさんの橋

©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

「山河令」第1話で周子舒がひなたぼっこしていた橋を発見！　周子舒は写真右側に移る橋のたもとにいて、その向かいに建つ富鼎軒に温客行（龔俊/ゴン・ジュン）と顧湘（周也/ジョウ・イエ）がいました。訪れた際には現場はガランとしていて次の撮影の準備なのか作業中でした。

POINT3　広場から水辺に下りる階段

©H&R Century Pictures Company Limited

広場からは水辺に下りる階段もしつらえてあり、ドラマによっていろんな演出が。「青雲志〜天に誓う想い〜」第14話ではリー・イーフォン（李易峰）、チャオ・リーイン（趙麗穎）、ヤン・ズー（楊紫）、チョン・イー（成毅）らが演じる登場人物たちがここに集まって語らい、水辺で灯籠を流していました。　

POINT4　白壁の家々と石畳の通り

© Daylight Entertainment CO.,LTD

白壁の家々が並ぶ石畳の通りもいろんなドラマで見覚えあり！「明蘭〜才媛の春〜」第3話、子供時代の盛明蘭（趙麗穎/チャオ・リーイン）が母親のために医者を探して駆け回り、顧廷燁（馮紹峰/ウィリアム・フォン）がそれを助けるシーンもここで撮影されました。　

ちょこっと豆知識

横店には他にも春秋唐園など一般の観光客には積極的に開放されていないオープンセットがあります。撮影のために立入禁止になっていることもありますが、タイミングによっては入れる場合も。ぜひWeibo（微博）やrednote（小紅書）の横店影視城の公式アカウントなどで最新情報をチェックしてみてください。

《番外編　現代ドラマの舞台「上海」》

TEXT： 小酒真由子（フリーライター）
映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。『月刊スカパー！』などの雑誌、『見るべき中国時代劇ドラマ』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』『華流ドラマガイド』などのムックのほか、Cinem@rtにて「『山河令』の台詞を読み解く」「アジアドラマの処方箋」などを執筆。