中国にある世界最大規模の映画スタジオ「横店影視城」。数多くの映画・ドラマが撮影され、華流ファンにとって「見たことある！」な風景がいっぱいの“横店”を、華流エンタメに精通したライター 小酒真由子さん＆島田亜希子さんが訪問！　現地で取材した、横店の基本情報からエリアごとの見どころなど、全５回＋番外編で紹介します。

※ご紹介している情報は、2025年6月時点のものです。

第３回　北宋文化を再現した「清明上河図」

   
ここで撮影されたドラマもたくさん！

北宋の画家・張擇端による“清明上河図”を基に当時の都・汴京を再現したスタジオ。ここは1998年に秦王宮の隣にオープンしました。北宋の汴京の暮らしを描いたドラマといえば近年、「明蘭〜才媛の春〜」「夢華録」「五福の娘たち」といった作品がヒット。これらのロケ地となっているほか、北宋が舞台ではない作品でも名家のお屋敷や酒楼、屋台で賑わう街のシーンなどがここで撮影されているので、見覚えのある景色が多いはず。秦王宮との行き来は徒歩約10分なので、併せて観光することをオススメします。

SPOT1　名家のお屋敷はココ！「蔡京府」

立入禁止の札がなければ屋敷の中にも入れます

「明蘭」に登場した中庭を発見！

正門のそばには高府、東門のそばには童貫府、蔡京府など、ここにはお屋敷のセットがいくつかあります。 屋敷の中に入ってみると、撮影に使われたらしい本棚やベッドがそのまま残されていたり、これから撮影に入るための準備をする作業員が働いていたり。劇中に登場するお屋敷は表の門と内側は別々のセットで撮られていることも多いようですが、実際に屋敷の中を探索してみると、庭や渡り廊下まで作り込まれていて、ドラマの世界に入り込んだ気分が味わえます。

▶︎「明蘭〜才媛の春〜」のこのシーン！

© Daylight Entertainment CO.,LTD

「明蘭〜才媛の春〜」に登場するヒロイン・盛明蘭（趙麗穎/チャオ・リーイン）の実家、盛府の中庭は蔡京府の中で撮影されています。中国の伝統的な庭園に見られる美しい円形の開口部“月洞門”が目印！

SPOT2　いつもの大きな酒楼はココ！「樊楼」

ランドマークとなっている水辺に建つ大きな酒楼

ここから外を眺めるあのシーンも！

清明上河図のランドマークと言えるのが樊楼。時代劇ドラマに頻繁に登場する立派な酒楼はかなりの割合でこの樊楼が使われていて、劇中でど〜んと映し出されることが多いので、皆さんも知ってる〜となるはず！　夜にライトアップされるとさらに華やかな雰囲気。最近では「蔵海伝（原題）」の酒楼のシーンもここで撮影されていました。

▶︎「山河令」のこのシーン！

©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

「山河令」第9話で周子舒（張哲瀚/チャン・ジャーハン）と温客行（龔俊/ゴン・ジュン）が “高山流水”の故事さながらに“安吉の四賢”が音楽に興じる様子を眺めるシーン。樊楼に並んで立つ2人の姿を美しく捉えた清々しい名場面となっています。

SPOT3　裁きが行われるのはココ！「開封府」

北宋の名裁判官・包拯がいたことで有名な開封府

別の時代設定のドラマでも裁判を行う役所として登場

北宋時代に裁判所や警察のような役割を担った役所としての開封府を再現したセット。樊楼の裏手にあり、私が行った時には何かのイベントの後で外観はレッドカーペットやランタンで飾り付けられていました。でも、中に入ると見慣れた段差のある特徴的な渡り廊下や裁きを行う大きな広間が。思わずここだ〜とテンションが上がってしまいました！

▶︎「高潔なあなた」のこのシーン！

©YOUKU INFORMATION TECHNOLOGY (BEIJING) CO.,LTD.

「高潔なあなた」の主人公カップル、展昭（吳希沢/ウー・シーザー）と莫研（張慧雯/チャン・ホイウェン）は包拯のいる開封府に勤務。その開封府の中も外もここで撮影されていて、武侠ドラマでありつつ歴史的な風格も感じることができます。

SPOT4　賑やかな街の通りはココ！「小御街」

撮影では屋台が並び人々が行き交う通りに！

沿道には織物店や酒楼などのお店のセットも

北宋が舞台のドラマに限らず、時代劇で屋台が並ぶ賑やかな街の通りといったら、たいてい小御街で撮影しているのではないかと思えるほど出現率高し！　樊楼を正面から見て左側にある通りです。道幅も店舗のセットもドラマからイメージするよりこじんまりしていてびっくり。ここではちょっとしたイベントなども開催されていてワクワクできます。

▶︎「惜花芷〜星が照らす道〜」のこのシーン！

©2024 Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd. All Rights Reserved.

︎「惜花芷〜星が照らす道〜」第9話でヒロインの花芷（張婧儀/チャン・ジンイー）が、一家で作った山査子のお菓子を売る屋台を出す通りもここ！　小道具や飾り付け、エキストラの衣装などによって通りの印象がガラリと変わることに注目です。

《第４回 明・清代の紫禁城を模した「明清宮苑」》

TEXT： 小酒真由子（フリーライター）
映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。『月刊スカパー！』などの雑誌、『見るべき中国時代劇ドラマ』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』『華流ドラマガイド』などのムックのほか、Cinem@rtにて「『山河令』の台詞を読み解く」「アジアドラマの処方箋」などを執筆。