インタビュー|『来し方 行く末』リウ・ジアイン(劉伽茵)監督 “自分が一番やりたいことから逃げない”
※以下の内容は、物語終盤の内容について触れています。鑑賞後にお読みになることをお薦めします※
—— 撮影現場で、特に印象に残っていることは?
リウ監督 終盤に、動物園でウェン・シャンが母親と電話で話すシーンがありますよね。ウェン・シャンがほぼ突っ伏しながら泣く、かなり重要なシーンを撮影した時のことが印象に残っています。
私たちは資金が無かったので、動物園の撮影使用料をたくさんは支払えず、短く限られた時間の中で撮影を終わらせないといけませんでした。しかも、だんだん日は暮れかかり、自然光が弱くなってくる。とにかく急がなくちゃいけなかったわけです。でも、あのシーンではフー・ゴーさんの気持ちを母親との電話に集中させるために、彼を静かに見守らないといけない。早く撮影しないといけないけど、フー・ゴーさんを焦らせてもいけない。私たちスタッフは緊張しつつも遠くから見守るような形で待ち、マイクさえもフー・ゴーさんの目に触れないようにセットしたりしました。
あのシーンでは、ホッキョクグマの檻の前でウェン・シャンが母親に電話します。ここでウェン・シャンは、この映画の中で初めて泣きます。唯一彼が泣くシーンです。青い色調の中で白いホッキョクグマが、泣くウェン・シャンのすぐ背後にやってきて、ゆっくり横切っていく。あのホッキョクグマの動きは、もちろん演出したわけではなく、偶然でした。ホッキョクグマの歩き回るという習性は知っていましたが、どこからどう歩くかは把握できません。でもラッキーなことに、ウェン・シャンが泣いているその時にホッキョクグマがやってきて、彼の真後を歩くわけです。フー・ゴーさんの演技も素晴らしく、あの演技は私の脚本を超えていました。
—— ホッキョクグマがやってくるあの完璧なタイミングが、まさか偶然だったとは……。
リウ監督 本当にラッキーでしたね。私たちにもっと資金があれば、色々と用意できたのかもしれませんが、とにかく私たちはお金が無かったので(笑)。
—— 映画の神様が微笑んでくれたようなシーンですね。
リウ監督 そうですね、見守ってくれたんだと思います。とても幸せでした。
聞き手:Cinemart編集部
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd
監督・脚本:リウ・ジアイン[劉伽茵]
出演:フー・ゴー[胡歌]、ウー・レイ[呉磊] 、チー・シー[斎溪]、ナー・レンホア[娜仁花]、ガン・ユンチェン[甘昀宸]
2023年/中国/中国語/119分/カラー/1:1.85/5.1ch 原題:不虚此行 字幕:神部明世 配給:ミモザフィルムズ
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd
【公式サイト】https://mimosafilms.com/koshikata/
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