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ドラマ「驪妃(りひ)」から、皇帝の妻たちのパワーバランスを考える|中国時代劇トリビア #89

リー・チン(李沁)、チン・ハオ(秦昊)主演のドラマ「驪妃(りひ)-The Song of Glory-」は、大ヒットラブ史劇「王女未央-BIOU-」のスタッフが再集結した注目作品。南朝宋皇帝の文帝・劉義隆の時代を舞台にしたこの物語には、実在した人物たちをモチーフとしたキャラクターが登場してきます。今回はドラマ「驪妃(りひ)」で描かれる身分、階級に焦点をしぼって探っていきます!

皇帝の妻たち、そのパワーバランスとは?

 「驪妃(りひ)」孫太妃
孫太妃(「驪妃(りひ)-The Song of Glory-」より)© 2020 Croton Entertainment Co. Ltd.

王朝の中で一番の権力者が皇帝であれば、その次に高い地位とされるのは皇帝の妻である皇后。常に皇帝と皇后がたてられてきたかというと、皇后が初めて登場するのは秦代からで、史書から間違いなくその存在が認められるようになるのは漢代からになるそう。

皇后とは、皇帝の嫡妻(正妻)を指す用語で、漢代の皇后は皇帝と共に“天下の母”として君臨する存在であり、皇帝と一体とみなされていました。このため、皇太后を先帝皇后が称するのが慣例となります。しかし、後漢の第4代皇帝・和帝が亡くなった実母へ皇后の諡号を贈り追尊を行うなど、時代が下るにつれて、皇帝が自分と血縁関係のある生母を重んじる傾向が見られるようにもなっていきました。

なぜ、こうした位置づけが発生するのでしょうか? それは皇后が必ずしも皇帝を産める状況ばかりではなく、後宮にいる多くの妃嬪の産んだ子が皇太子となることや、嫡子優先とされながらも嫡子がいない場合には、そうした庶子の子がやがて皇帝になる、ということがあるからなのです。このため、唐から宋にかけては、皇后との位や身分の差は明確でありながらも、皇帝の母としての「生母」の地位が上昇していったそうです。

その後、明代後期以降の皇帝の多くは妃嬪たちの産んだ庶長子であり、即位したときには、先帝皇后の「嫡母」と、先帝妃嬪の「生母」という二人の母を持つことにもなりました。こうした複雑な位置づけが、宮廷ドラマなどでは権力争いの火種となって描かれてもいくのです。

さてここで、視点をドラマ「驪妃(りひ)」に戻して、関係性をみていきましょう。

「驪妃(りひ)」孫太妃2
孫太妃(「驪妃(りひ)-The Song of Glory-」より)© 2020 Croton Entertainment Co. Ltd.

「驪妃(りひ)」では、先帝の側室であった孫太妃が重要な人物として登場します。孫太妃は竟陵王・劉義宣の実母で、彭城王・劉義康を保護し育てた養母でもあります。太妃の称号を持つ妃は、王または群王の生母ではありますが、政治的な地位は無いとされていたので、先帝が亡くなり、新帝の文帝・劉義隆が王位につくと、孫太妃は宮廷を去ることを余儀なくされます。

しかし、彭城王は世論を否定し、世俗的な意見に逆らい、孫太妃を実の母のように敬い、礼をもって彼女を王府に迎え入れます。孫太妃にとって、幼い彭城王と竟陵王をそばにおき、大好きな栗をむいて二人に与えていた頃が一番幸せで満ち足りていた時間であり、二人の王にとっても孫太妃は大事な母であったはずが、いつしかただひたすら実子の竟陵王だけを偏愛し、帝位を狙い権力を得るべく策をめぐらす存在へと変貌を遂げていくことに……。

母と子の愛憎が絡んだ権力争いの結末は一体どうなるのか? 続きはぜひドラマでお楽しみください!

「驪妃(りひ)」から知る、名族、庶族ってなに?

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

このコラムに登場した作品
「驪妃(りひ)」キービジュアル

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