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【インタビュー】『よい⼦の殺⼈犯』ジャン・ジンシェン監督 "愛と血のつながりは関係ないんじゃないか?"



― 主人公アナンを演じられたホアン・ハー(⻩河)さんですが、彼を起用した理由を教えてください。

ホアン・ハーさんと長い付き合いですが、今まで一緒に仕事をする機会がありませんでした。脚本を書いている段階ですでにホアン・ハーさんに主人公を演じてほしいと考えていました。

前作『HIGH FLASH 引⽕点』で仕事をしたウー・カンレン(呉慷仁)さんもそうなのですが、ホアン・ハーさんも真面目さと想像力・創造力を持っていて、自分の考えとアイデアがある俳優です。僕にとってこれらの要素はとても重要なんです。

脚本が完成して彼に見せると、彼はとても気に入ってくれて。その反応が嬉しかったですね。なぜなら、彼は作品選びに厳しい俳優だから。またラッキーなことに、彼とアナンは似ているんです。例えば、彼も家でマンガを読んだりゲームをしたりするのが好きだったり。アナンの心境を理解するのは彼にとっては難しいことではありませんでした。

そのうえで、彼は自分の想像力でアナンの表現方法を提案してくれました。例えば歩き方や、緊張するときに体を掻いたり、眼鏡を触る癖も。アナンのこういった小さな動きは、互いに話し合って生まれました。私は、彼の想像力・創造力がとても好きなんです。これらが、彼を起用した理由です。


『よい⼦の殺⼈犯』より Ⓒ2019 ANZE PICTURES Co. , Ltd. ALL RIGHTS RESERVED


― 美男子のホアン・ハーさんが、本作では同一人物に見えないほど印象が変わっています。監督はホアン・ハーさんにどのような演出をされたのでしょうか?


キャスティングでふさわしい俳優を選び、かつ、俳優自身も創造力を持って私と役についてコミュニケーションをとってくれるなら、私から何もアドバイスをしなくても、俳優自身が現場で自然と役に入りこむことができます。良い俳優との仕事では、監督は役作りのアドバイスに力を入れる必要はないんです。とても快適な現場になりますね。

また、撮影スケジュールはタイトな場合が多く、じっくり演出する時間はなかなか取れません。しかし、ホアン・ハーさんはちゃんと準備し事前にコミュニケーションもとっておいたので、撮影はかなりスムーズでした。

印象に残っているのは、彼が役に入りこむのがすごく早かったことです。先ほど、アナンがホアン・ハーさんに似ていると言いましたが、もちろんホアン・ハーさんはアナンのように社会に馴染めないわけではありません。しかし、アナンの社会に馴染めない様子を上手く演じてくれました。

私は俳優に対して、リアリティを感じられる環境を用意することでキャラクターの心境を感じてほしいと考えています。だからアナンの部屋のセットを工夫しました。

ホアン・ハーさんがそのセットに入った時、彼は驚いたように見えました。そして部屋の物を触ったり、アナンの心境を想像しながら装飾品の位置を変えたりすることで、アナンとして環境に入りこもうとしました。それはすごく良いことだと思い、印象に残っています。こういった出来事からも、俳優の創造力は大事だと感じました。


― ホアン・ハーさんから、(役作りとして)アナンの部屋で数日過ごしたいと提案があったんですよね?

そうなんです。それだけでなく、彼はいつもスケジュールより早く現場に到着して、セットの中でアナンの置かれた環境を感じようとしていました。

<次のページ:ジャン・ジンシェン監督が大切にしていること>

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