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『返校 言葉が消えた日』が称賛された理由とは―― <前編>『返校』が巻き起こしたこと

『返校』のゲームとドラマ

本作を紹介するにあたり、オリジナルのゲームと、あとから作られたドラマにも触れておきたい。

ゲーム「返校 -Detention-」は2017年に台湾のレッド・キャンドル・ゲームズ (赤燭遊戲) からパソコンゲームとして配信され、日本でもGoogleやApp Storeでダウンロードして遊べる。いや、遊ぶという表現より体験できると言う方がふさわしいかも知れない。対応ハードはNintendo Switchがある。

私も台湾で映画を見た後すぐスマホで始めたのだが、何せ怖がりなのでなかなか進めない。しかたなくプレイヤーの攻略サイトを見てしまうというズルをしたことを告白しておく。多くのプレイヤーが絶讃しているように、本当に素晴らしい構成だ。

これを映画化するには、監督も相当悩んだことは、台湾のプレミアで語っていた。「ゲーム版はプレイヤーが自分で進めていくので曖昧な部分も残しておくことができる。しかし映画はドラマ性を考えてゲームの名シーン以外に色々な物語を書き加えていった」なるほど、である。


『返校 言葉が消えた日』 フー・モンボー(傅孟柏/左)とワン・ジン(右) 
©1 Production Film Co. ALL RIGHTS RESERVED.


そして、ゲームでキー・アイテムとなる白鹿のペンダントや壊れた恋を表す歌「雨夜花」などは残して、ゲーム・プレイヤーにも満足してもらえるような設定にしたそうだ。

一方のドラマ版「返校」(Netflixで配信中)は、現在と過去のふたりのヒロインを中心に、時代が交錯しながら展開していく。8話という長尺のため、新たなエピソードも加わりなかなかうまい作りだ。終盤の現在と過去のふたりのヒロインの対峙は緊張感溢れるが、そこにある救いが心を和ませてくれる。

現代のヒロインを演じたリー・リンウェイ(李玲葦)は、今年の大阪アジアン映画祭で上映された『人として生まれる』の演技で薬師真珠賞を受賞した。過去のヒロイン役のハン・ニン(韓寧)と、現代のヒロインを助ける男子高校生を演じたホアン・グァンチー(黃冠智)は、2021台北電影節のSupernovaに選ばれ、これからが期待される。また、7月16日にドラマ版のノベライズの翻訳本が、角川ホラー文庫から出版された。

◆ドラマ版「返校」予告編 Netflix Asiaチャンネル


後編:年代別!映画から台湾の歴史を知る につづきます

Text:江口洋子(台湾映画コーディネーター)

民放ラジオ局で映画情報番組やアジアのエンタメ番組を制作し、2010年より2013年まで語学留学を兼ねて台北に在住。現在は拠点を東京に戻し、東京と台北を行ったり来たりしながら映画・映像、イベント、取材のコーディネート、記者、ライターなどで活動。2012年から台湾映画『KANO〜1931海の向こうの甲子園〜』の製作スタッフをつとめた。2016年から台湾文化センターとの共催で年8回の台湾映画上映&トークイベントを実施。毎回瞬時に満席となる人気。
アジアンパラダイス http://www.asianparadise.net/
Twitter @jyangzi

Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)


『返校 言葉が消えた日』
7月30日(金)TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

監督:ジョン・スー 
出演:ワン・ジン、ツォン・ジンファ、フー・モンボー、チョイ・シーワン、チュウ・ホンジャン
原題:返校/2019年/台湾/カラー/103分  R-15+
配給:ツイン  宣伝プロデュース:ブレイントラスト
公式Twitter:@henko_movie
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