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【インタビュー】『親愛なる君へ』モー・ズーイー "生涯をかけて、ただ愛する人のために"

台湾アカデミー賞3部門受賞作品! 血の繋がりを越えた“家族”の絆をつむぐ物語『親愛なる君へ(原題:親愛的房客)』が現在、シネマート新宿・心斎橋ほか全国順次公開中! 本作で、亡くなったパートナーの母と子の面倒をみる青年リン・ジエンイーを演じたモー・ズーイー(莫子儀)さんにお話をききました。  

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見返りを求めているのではなく、ただ彼がこう生きようと選択したから

― チェン・ヨウジエ(鄭有傑)監督が以前、インタビューで「モー・ズーイーさんが脚本も見ずに出演をOKしてくれた」とお話されていたのですが、出演を即決した理由はなんだったのでしょうか?

モー・ズーイーさん(以下、モー・ズーイー) それはチェン・ヨウジエ監督だから。これは男のロマンです。僕とヨウジエ監督は長い間一緒に仕事をすることはありませんでしたが、私たちは大学からの知り合いで、一緒に遊んで一緒に成長してきた仲です。今は二人ともおじさんになりましたね。

きっかけは共通の知り合いの結婚式なんです。久しぶりに再会して、僕から監督に「そろそろ作品に出演させてくれない?」と尋ねました。お互いに経験を積み成長した今だからこそ、また一緒に仕事ができる一緒に創作ができる、そう思ったからです。彼も僕のこの言葉の意味を感じとってくれたと思います。

彼とは、心が通じ合っていて、近い感覚を持っていると思います。結婚式で再会した後、監督からこの映画のオファーが来て出演を決めました。これも、僕たちがお互いを認め合っているからだと思います。


モー・ズーイー(莫子儀)さん
©︎Touch of Light Films Ltd.


― 演じられたリン・ジエンイーというキャラクターをどのような人物だと解釈し、演じられましたか? 演じる際に特に意識していたことがあれば教えてください。


モー・ズーイー リン・ジエンイーというキャラクターは、僕やあなたと同じで、苦痛や寂しさを抱えています。彼は生涯をかけて、愛する人のために何かをしてあげたいと思っている。だけど、これは何かを証明したいのではなく、犠牲の精神でもなく、ただ彼の人生の決断なんです。

僕は、彼のこの心境は年齢を重ねたからこそ理解できると考えています。なので、僕も人生のこの段階でこのキャラクターを演じられたことを幸いに思っています。この歳になったからこそ、リン・ジエンイーという人物の心境が理解できるのです。

もう1つ意識していたことは、リン・ジエンイーの行動は見返りを求めているからではなく、ただ彼がこう生きようと選択したからです。彼は救いや許しを求めているわけではありません。

僕が思うのは、この心境は親に近いということです。親が我が子を愛し、幸せを願う無償の愛。親は、子供がどういう態度を取ろうとも、子供の未来に自分の存在がなくても、自分の命が終わる瞬間まで子供を愛し続けます。これは僕がリン・ジエンイーを演じるときに意識した、彼の人生に対する価値観と信念です。


― 『親愛なる君へ』の撮影で、チェン・ヨウジエ監督とのやりとりで印象に残っていることはありますか?

モー・ズーイー たくさんあります。ヨウジエ監督はこの映画に関わる一人一人をすごく尊敬し、大切に思っています。そのことがよく分かるエピソードで、彼は撮影現場で何かを考えてたり悩んでいたりする時、監督の椅子から離れるんです。それは、自分の焦りや悩みや不安という感情で周囲に影響を与えたくないからだと僕にはわかります。彼はとても優しい人です。僕がよく言うのは、彼は“お父さん”みたいな存在だということ。撮影チームという家族を引き連れて、前に進んでいく存在です。

もう一つ、彼に関して特別だと思うのは、彼が“傲慢じゃない人”だということです。監督という権力を重く考えている人でもない。彼はいつも誠意を持ち、謙虚で自分の存在で他人を励ましている。これらが僕のヨウジエ監督に対する一番強い印象です。


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