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殺傷能力高すぎ⁉ 驚異の古代武器・弩|中国時代劇トリビア#145

名家の中で冷遇され、互いに心の支えとなっていく偽兄妹の2人を、「長相思」「愛しているのに」のジャン・ワンイー(張晩意)と、「玉骨遥」のレン・ミン(任敏)が演じて話題を呼んだ時代劇「安寧録~海棠に降る光~」。今回はこのドラマに登場する気になる“アレ”を、探っていきたいと思います!

殺傷能力高すぎ⁉ 驚異の古代武器・

「安寧録」で弩をかまえるジャン・ワンイー
「安寧録~海棠に降る光~」© Croton Entertainment Co. Ltd.
  

「安寧録~海棠に降る光~」では、物語序盤から怪しい男性に捕らわれそうになり、羅慎遠ルオ・シェンユエンに助けられる羅宜寧ルオ・イーニン 。この時、とっさに羅慎遠が矢を放った武器が、弩。戦場のシーンや族を追う場面などでも目にするこの武器は、春秋戦国時代に登場した武器で、弓より扱いやすく、最も殺傷能力が高いとされていました。

弩は、機械仕掛けの横弓で、弩機という発射装置を後部に組み込んだ木臂(本体)の上に矢をそえて射る武器。起源は不明ながら、遅くとも前五世紀、戦国時代の初期には軍隊に配備されていたそうで、黄帝や、戦の神である蚩尤が開発したとか、異民族の技術を取り入れたなど、諸説あるようです。長期にわたる訓練と高度な技術が必要となる弓とは異なり、狙いが定めやすく、簡単な訓練を行うだけで、一定の命中精度が得られることから、兵士だけでなく庶民でも短期間の練習で使えるようになった武器だったようです。

こうした扱いの利点がある反面、矢を装填する際には、いったん地面に置いて、両足で支えるなどして弦を張る必要があり、弓と比べて、準備に手間と時間がかかるという不便さも。確かに、矢を打つシーンはドラマでもよく目にしますが、矢を装填する場面はめったに出てきませんね!

旧式のものは、振動などに影響を受けたため、戦車兵や騎兵が用いるのには向いておらず、主に歩兵が装備する武器となっていたそうです。戦国時代に入って本格的に使用されるようになると素材に銅が用いられるようにもなります。そして漢代以降、改良が重ねられ、諸葛亮孔明は改良して連射式の連弩「元戒」を作ったと言われていますが、この武器の詳細な形状は伝わっていないそうです。

実戦でこの武器が発揮する能力はどんなものかというと、羅慎遠が使っていた片手で弦をひくタイプの最大飛距離は200~300m前後、有効殺傷距離は約150m前後まであったとか。先にも触れたように、特別な修練を必要とせずに使え、100m以上先の敵を射止める力を持つということで、この時代の脅威となったのも納得です。

横から見た弩
「安寧録~海棠に降る光~」に登場した弩
© Croton Entertainment Co. Ltd.
  

弩は、宋代に入ると宋軍の主力兵器となり、騎乗でも使用できるように改良された他、神擘弓という騎兵の鎧を打ち抜く強い力を持った新たな弩が生まれました。宋軍と戦った金の完顔宗弼も、神擘弓は宋軍の最も恐れる武器だと述べたとされるそうです。

宋代ではこのほかにも強力な弩が各種開発され、城壁や地に置いて使用する設置型の巨大な弩も出現し、最盛期をむかえます。しかしこののち、投石器や火砲の出現により、大型弩は急速に衰退、いっぽうの手持ち型は、清代まで運用が続いたそうです。


【参照URL】



Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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