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お屋敷系時代劇の重大イベント!「寿誕」ってなに?|中国時代劇トリビア#144

名家の中で冷遇され、互いに心の支えとなっていく偽兄妹の2人を、「長相思」「愛しているのに」のジャン・ワンイー(張晩意)と、「玉骨遥」のレン・ミン(任敏)が演じて話題を呼んだ時代劇安寧録~海棠に降る光~。今回はこのドラマに登場する気になる“アレ”を、探っていきたいと思います!


お屋敷系時代劇の重大イベント! 「寿誕」ってなに?

「安寧録」寿誕シーン
「安寧録~海棠に降る光~」© Croton Entertainment Co. Ltd.
  

結婚式と同じくらい、お屋敷系時代劇に重大なセレモニーとして登場する「寿誕」は、高齢の方の誕生日を祝う習慣のこと。その歴史は、秦代以前から漢代にまで遡り、『詩経』にも記された用語なのだとか。

伝統的な誕生日の儀式には、会場の設営、神々への拝礼、若い世代による敬意の表明、誕生日のお祝い金の分配など、一連の流れが含まれます。そして長寿の象徴である長寿桃寿幛(長寿を祝うために贈られる絹や、厚地の光沢のある絹織物などの布に吉語や絵柄を刺繍した掛け物)、長寿面(麺)を供えることが、この儀式の特徴です。寿幛は、主に祝寿の場で玄関などに掛けられます。「安寧録~海棠に降る光~」でヒロインの 羅宜寧ルオ・イーニンは、この織物に代わるような手工の切り絵飾りを贈り、披露していましたね。 

「安寧録」に登場した切り絵飾り
「安寧録~海棠に降る光~」© Croton Entertainment Co. Ltd.
 

ドラマでは登場しませんでしたが、この寿誕のお祝いに欠かせない長寿桃、長寿麵とは、いったいどのようなものなのでしょうか。


長寿桃

中国神話で、桃は長寿、寿命を延ばすとされています。長寿桃は、誕生日のお祝いに使われる桃のことで、通常は小麦粉で作られていますが、生の桃を使うことも。古代中国神話に登場する西王母が、誕生日(旧暦3月3日)に仙人たちをもてなすために桃の宴を催したと伝えられているため、桃は誕生日のお祝いの品として使われます。


長寿面

長寿面は長寿を象徴する中国の伝統的な麺料理のこと。その起源は漢の武帝の時代にまで遡ります。いわれには諸説あって、「顔(人中=鼻の下の部分。)が長いと長生きする」という口承の、「臉長」の「臉」と「面」の発音が古代中国語では近かったとか、「長命」と「長面」の発音が近い、細くて長い麺(瘦長)の、「瘦」と「寿」の音が似ている、などといったことから転じて、人々は長い麺を長寿の象徴としました。

この習慣が徐々に発展し、誕生日のお祝いに麺を食べる「長寿面」と呼ばれる習慣になりました。一般的に、長寿麺には長~い麺が、1本しか入っていないのだとか! 食べる際には、麺をなるべくかみ切らないようにして、すすって食べるのが良いとされるそうです。こうした祝いの習慣は唐代と宋代に徐々に広まり、宋代には長寿麺が誕生日の宴会に欠かせないものとなったそうです。


ドラマ「晩媚と影~紅きロマンス~」には長寿面が出てくるシーンも
©Media Caravan Ltd.
 


【参照URL】
寿诞
寿桃
长寿面


寿誕シーンがあるドラマ「安寧録~海棠に降る光~」
配信|2025年12月15日より、順次デジタル配信予定
セル|DVD-BOX1&2:2025年12月10日発売/DVD-BOX3:2026年1月14日発売
レンタル|第1巻~第10巻:2025年12月3日/第11巻~第20巻:2026年1月7日

提供:エスピーオー/BS12 トゥエルビ 発売・販売元:エスピーオー
2023年/中国/原題:錦繍安寧
https://www.spoinc.jp/official/anneiroku/

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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