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「蜀紅錦」から知る蜀錦・蜀錦と英英たちが辿った交易の道/南詔ってどんな国?|中国時代劇トリビア#143

唐代の益州を舞台に、亡き父の染色秘法を継承し、蜀錦の技術と職人たちを守りながら、産業の発展をも目指した勇敢で芯の強いヒロインの成長と、愛する人との出会いを描いていく「蜀紅錦~紡がれる夢~」。今回はこのドラマに登場する気になる“アレ”を探っていきたいと思います!

《「蜀紅錦」から知る蜀錦・蜀錦とは?|中国時代劇トリビア#142》


蜀錦と英英たちが辿った交易の道

 吐蕃の風景を見下ろす4人
「蜀紅錦~紡がれる夢~」©2024 Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd. All Rights Reserved.

蜀錦が四川から他の地へと広がっていった主なルートは3つあり、大まかに北ルート、東ルート、南ルートに分けられます。東ルートは成都から重慶へ、そして長江を下って湖北省荊州、そして長江中下流域へ。北ルートは広漢、綿陽、広元を通り、秦嶺山脈を越えて関中の蜀路へと向かう道。南ルートは成都から雅安などを経由して雲南省に入り、ミャンマーを経てインド(天竺)に入るルート。このルートはかつて「南のシルクロード」と呼ばれており、唐代や宋代の文献にも、中原の僧侶たちがこのルートを通ってインドに到達したことが記されています。

この南ルートを歴史的に支配していたのが、劇中で李英英らの商隊がいくつもの山を越えて向かった吐蕃(チベット王国)。吐蕃は、チベット高原で7世紀初頭から9世紀中頃にかけて栄えた統一王国で、唐王朝と婚姻関係を結ぶ他、対等に渡り合う軍事大国として発展しました。チベット研究の学者の説によると、唐代には吐蕃の人々は桑の栽培、養蚕、製糸技術を習得していなかったとされています。

その理由としては、チベット高原の高冷地に位置する吐蕃には、絹の生産に必要な良質な桑の木の栽培技術と、蚕の飼育能力、そして温暖な気候といった必要条件を満たすことが難しい環境だったことなどが考えられています。このため、古代吐蕃の遺跡などで発見された絹織物は、おそらく、贈与や英英らのような商人らによる交易、あるいは戦争による略奪によってもたらされたのだろうとされており、ドラマで描かれたような、商人らによる命懸けの交易が、実際に行われていたことも推察されます。

吹雪の中、馬車を押す人々
「蜀紅錦~紡がれる夢~」©2024 Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd. All Rights Reserved.

【参照URL】
唐蕃古道上的金银器和丝织品


南詔ってどんな国?

南詔の風景
「蜀紅錦~紡がれる夢~」©2024 Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd. All Rights Reserved.

蜀錦の技術を狙う白晟のホームである南詔は、8世紀半ば、中国西南部、雲南地方のチベット・ビルマ語族の王国。“詔”は、“王”を意味するそう。吐蕃・唐と隣接し、山岳地帯ではあるものの、重要な交易ルートとされており、道や都市を整備して交通網などを改善し、近隣諸国との交流を強化していきました。

人々の生活は主に農業が主体でしたが、織物や金銀加工に代表される手工芸産業も発展し、織物では傣族の伝統的な錦織物の傣錦(現在の傣錦は綿織)といった独自の織物もあり、南詔で織られた錦は、当時の蜀錦に匹敵するほどの優れたものも作られたとか。

こうした産業の中でも、治金業(鉱石などから有用な金属を採取・精製・加工し、金属材料や合金を製造する産業)の発展はとても早く、唐代南詔国で製作された代表的な武器・南詔剣は広く世に知られていきます。

【参照URL】
百度『南诏』 
当非遗遇见云南(德宏)(2)┃最灿烂,傣族的那抹织锦
百度『傣锦』 



蜀錦が登場するドラマ「蜀紅錦~紡がれる夢~」
配信
2025年11月より順次配信予定

DVD
セル|2025年8月13日より順次発売(全2BOX/各19,800円税込)
レンタル|2025年8月2日より順次レンタル開始(全16巻)
提供:エスピーオー/テレビ東京メディアネット 発売・販売元 エスピーオー
https://www.spoinc.jp/official/shokkokin/

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

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