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インタビュー(韓国)

『世宗大王 星を追う者たち』ホ・ジノ監督 "身分を超え、朝鮮の“時”を作りあげた同志"

 

本日94日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開となった『世宗大王 星を追う者たち』(全国順次公開)。本作の監督を務めたホ・ジノ監督に話を訊いた。


― 監督にとって長年の交友があるハン・ソッキュとチェ・ミンシクのお二人が、本作で実に20年ぶりの共演となります。豪華なW主演が決まった時のお気持ちは?

ハン・ソッキュさんとはだいぶ前に一緒に映画を撮ったことがありましたが、チェ・ミンシクさんとは今回の撮影が初めてでした。この二人の俳優をひとつの映画の中で観ることができるということ自体にとても胸が躍りました。それに、この御二人は長年交流してこられていて兄弟のような間柄だったので、とても嬉しく思いました。


― 史実を基に描いた作品ですが、物語を創作する上で重要視した点はどこでしょうか。

歴史的に世宗の記録に比べるとチャン・ヨンシルに関する記録があまり多くは残されていません。残っているものの一つに「世宗実録」というのがあり、これを見るとチャン・ヨンシルのことを内官のように身近において話をしていたという記録が残されています。ですので、二人はとても近い間柄だったのではないかと思っていました。二人は朝鮮の“時”を作っていった間柄でもあります。

この映画の中に出てくる輿の事件はあまり大きな事件ではなかったかも知れませんが、その事件によって世宗は杖刑(じょうけい)を下し、彼を追い出します。輿の事件によってなぜそのような結果に至ってしまったのか、ということに思いを巡らした時、その裏側には何か違う物語があったのではないかと考えたのがこの映画の出発点です。歴史的な事実や、想像力をめぐらせて物語を作っていきました。


― 本作では身分を超えた友情を描きつつ、単なる男性同士の友情とは趣が違うところがあったように思いますが、描いていく上で拘った点はどんなところですか?

ハン・ソッキュさん、チェ・ミンシクさんとご一緒できるということが決まり、撮影前にとても長い時間をかけてシナリオについてお二人と話をしました。その時にハン・ソッキュさんが「この王様は非常に孤独だったと思う。自分の理解者、夢を共に実現できる相手が現れた時に、きっとそこには友情が芽生えたであろう」という話をされたのです。その話を聞いた時に、これは王と家臣の関係を超えた「同志」または「友人」の関係だと思ったのです。

ハン・ソッキュさんが映画の中で「友」(韓国語で「ポッ」)という言葉で表現しています。本作ではハン・ソッキュさんがセリフを作った部分があったのですが、その言葉がまさに二人の関係を表していて、王と家臣の関係を超えた本当に友になりうる関係だったのではないのか、私自身それを映画の中で表現したいと思ったのです。

― 『八月のクリスマス』で父子を演じたハン・ソッキュさんとシン・グさんの共演にも感動しました。起用の理由と現場での様子を教えてください。

なかなか機会がなくシン・グ先生とは本当に久しぶりにご一緒できたのです。20年ぶりとなりました。ハン・ソッキュさんも同じくシン・グさんとは20年ぶりの映画の共演となりました。チェ・ミンシクさんとは「エクース」というお芝居でチェ・ミンシクさんが20代の時にシン・グさんと共演されています。三人ともそれぞれにご縁があったわけですが、この作品の配役で真っ先にチェ・ミンシクさんとハン・ソッキュさんが決まり、それ以外の配役について意見交換をしている中、シン・グさんのお話が出てきました。ハン・ソッキュさんもチェ・ミンシクさんもとても喜んでいました。

シン・グさんも御年83歳ですので、撮影中にセリフを間違えてしまうこともありましたが、そうするとプライドが傷ついたようでとても悔しがっているようでした。お酒も大好きでたくさん飲まれる方ですが、それでも飲んだ翌日に撮影がある時には正確にそのセリフをすべて覚えて撮影に臨まれていました。現場では大きな柱のような存在だったと思います。ハン・ソッキュさんとシン・グさんが二人きりで向き合うシーンがあったのですが、その時は私も『八月のクリスマス』の二人の姿が思い起こされて感慨深く感じました。


― 撮影で実物大の天体観測機器を製作されるほどのこだわりようですが、苦労された点はありますか。また、時代考証にはどのくらいの時間をかけたのでしょうか。

この作品は科学的な話が多く登場します。その時代の専門家や有識者の方々から色々な話を聞き、資料調査をしながら進めていきました。私はそういった専門的な科学知識がなく、聞いても難しすぎてよくわからないので助監督の中にそういったことに詳しい人に聞いてもらい、助監督たちに星座やチャギョンヌ(自撃漏)についての研究をしてもらって進めていきました。

天文観測台は慶福宮の中の北側に位置されていたということなのですが、大きさをどうするかということで随分悩みました。当初はCGで再現しようかという話もあったのですが、この天文観測台はまさに世宗とチャン・ヨンシルの二人が朝鮮の“時”を作ろうとした、夢を具現化させたものでもあるので、ここはやはりきちんと実物に近いもので(実際は実物より少しだけ小さめのものとなっていますが)、きちんと具体的な形で必要だと考えたのです。

そして、どこに作るのかという空間探しにも苦労しました。実際にこの資料を見ますと、王宮の中に作られたものでしたので王宮の中にセットを作って作りました。そのセットをつくるのに製作期間が約二ヶ月かかっています。


『世宗大王 星を追う者たち』

本日より公開!
2020年9月4日(金)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー!

本日94日よりシネマート新宿、シネマート心斎橋にて公開となった『世宗大王 星を追う者たち』(全国順次公開)。本作の監督を務めたホ・ジノ監督に話を訊いた。

朝鮮王朝最高と謳われた王と、その王に人生を捧げた天才科学者
時代を変えた君臣の固い絆を描く感動作!


名作『シュリ』の初共演から20年。再び名優二人が顔を合わせ、強い絆で結ばれた君臣の美学を披露する。『ベルリンファイル』『白夜行 -白い闇の中を歩く-』など深奥の演技派ハン・ソッキュが、のちにハングルを創り出した世宗大王を圧巻のカリスマ性で演じ2020 年大鐘賞映画祭主演男優賞にノミネートされた。『悪いやつら』『新しき世界』の名優チェ・ミンシクが天才科学者に扮し、君主と共に夢を見ながら数奇な運命に翻弄される男を熱演。監督は、『八月のクリスマス』『ラスト・プリンセス 大韓帝国最後の皇女』の名匠ホ・ジノ。実在の人物の生き様に大胆な想像力を加えドラマティックに映画化。史実に基づく豪華絢爛な史劇エンターテインメントがここに誕生した。

朝鮮王朝が明の属国であった時代。第4代王・世宗(ハン・ソッキュ)は、奴婢の身分だったチャン・ヨンシル(チェ・ミンシク)の優れた才能を認め、科学者として武官に任命する。豊富な科学知識と高い技術力を備えたヨンシルは「水時計」や「天体観測儀器」を次々に発明。そして、「明の従属国という立場から脱し、朝鮮の自立を成し遂げたい」という夢をもつ世宗も、朝鮮独自の文字である“ハングル”を創ろうとしていた。天と地ほどの身分の差を超え、特別な絆を結んでいく二人。だが朝鮮の独立を許さない明からの攻撃を恐れた臣下たちは、密かに二人を引き離そうとする。そしてある日、世宗を乗せた輿が大破する大事故が発生。輿の製作責任者であるヨンシルに疑いの目が向けられるが……


監督:ホ・ジノ
キャスト:ハン・ソッキュ、チェ・ミンシク、シン・グ、キム・ホンパ、ホ・ジュノ、キム・テウ

2019年/韓国/韓国語/133分/スコープサイズ/字幕翻訳:福留友子/原題:천문:하늘에 묻는다/配給:ハーク
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