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【私の履歴書・延 智美(ヨン・ジミ)】最終回 これからの韓流に期待すること

私の履歴書~Profile No.2~

「通訳は裏方の仕事だから、私が表に出るなんて!」と、恐縮されていた延さん。しかし、いざインタビューが始まると、通訳をされているのは勿体ないほどの滑らかな語り口!凡人には決して経験できない延さんの半生に、身を乗り出して聴き入ってしまいました。延さんのインタビュー、必見です。

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振り返ってみると、2000年代から世界的な韓流ブームがおこり、その最も燦爛たる瞬間に立ち会えたことは、本当に大きな幸運でした。


韓流、KPOPの現場で、アーティストが通訳を介して日本の方々とコミュニケーションするというのは今や日常的な光景になりました。ですが、それにともなって様々な新しいシーンでの通訳というのが生まれていて、たとえばテレビのバラエティー番組で通訳を介して芸人さんと絡むとか、コンサートでアイドルグループのメンバー間のわちゃわちゃしたトークを、天の声みたいに舞台袖から通訳するとか...現場にとっても通訳者にとっても慣れないことばかりなので、今でも試行錯誤の連続です。今後は、KPOP世代の方たちの中から、優秀な通訳・翻訳者がたくさん現れるだろうと期待しています。そうなると、私などはエンタメ通訳の第一世代になると思うので、後に続く人たちのためにもよりよい通訳環境を作っていければと思っています。


ドラマ、映画、KPOP、そして最近ではミュージカルまで、韓国エンターテイメントが以前より幅広く楽しまれるようになってきましたよね。そんな中、さらに深く、歴史や文学に関心をもたれる方も多くなって、数年前からは、小説家を招いた講演会や、作家同士の対談の場で通訳することも増えてきました。私としては、ジャンルにとらわれず、日韓のいろんな分野の交流がもっと進んでほしいですね。


なにかと政治的な問題に振り回されてはしまいますけれど、韓国のエンターテインメントを楽しむ下地がこれだけ出来たので、今後もいろんな形での交流は続いていくだろうと思っています。願わくば、韓国ももっと積極的に日本の大衆文化を受け入れて、早く双方向の交流がスムーズにできるようになってほしいですね。コミュニケーションさえしっかりとれれば、日本と韓国は最高のパートナーになり得ると常々感じます。ダイナミックでアグレッシブな韓国と、緻密で繊細な日本、それぞれの国の持ち味を組み合わせれば絶妙なバランスでお互いを補い合えるじゃないですか。なんといっても隣国、隣人ですから、世界の中で、お互いにとって心強い関係になれれば、一番理想的ですよね。そんな意味では、文化でつながった心の絆というのは、日韓の双方にとって財産になっていくと思います。これからも通訳者として、日韓の心と言葉をしっかりとつなげていきたいです。

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