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ドラマ「茶金」をもっと楽しむ!後編:台湾のお茶・ロケ地から深める「茶金」の世界

2022年に台湾エミー賞史上最多16ノミネートという記録を打ち立てたドラマ「茶金 ゴールドリーフ」。その台湾珠玉のドラマがついに日本上陸! ということで、今回の記事では、「これを知っていると『茶金』がもっと楽しくなる豆知識」をお送りします。

時代背景やファッション、劇中に登場するお茶の知識まで……「茶金」の世界をもっと深めてみませんか?

\前編「時代背景・ファッションから深める「茶金」の世界」はこちら/


台湾のお茶を知ろう!

「茶金」を見ていると、なんだか台湾茶を飲みたくなってきませんか? 続いてドラマで登場したお茶を中心に台湾のお茶を紹介します。

    
© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

東方美人茶
台湾を代表する「台湾四大銘茶」の一つ。物語の舞台となった新竹県で誕生したお茶で、紅茶に近い味わいの烏龍茶です。ウンカという虫に食われた葉を使うことで、独特な蜜のような甘い香りが醸し出されます。栽培が虫との共同作業なので農薬が使えず、栽培が難しいのだそうです。

   
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ちなみに東方美人茶は「膨風茶(ポンフーちゃ)」 という別名もあります。「膨風(ポンフー)」とは新竹で話される客家語で「嘘、ホラ吹き」という意味。虫食いの葉で作られたお茶が高値で売れたという知らせに、当初地元では「嘘だろう!?」と信じてもらえなかったという逸話から「膨風茶」とも呼ばれるようになったそうですよ。


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虫糞茶
大量注文に応える秘策として茶師・山妹(シャンメイ / シュー・アンジー演)が用いたのが「虫糞茶(ちゅうふんちゃ)」です。字の通り「虫の排泄物から作るお茶」。具体的には虫が食べた茶葉が体内発酵を経て、排泄物として排出された葉から作るお茶を指します。

虫糞茶は食べさせる茶葉と虫の組み合わせによって味わいが変わるそうですが、山妹はオーダーに合う香りの虫糞茶を自らの手で作りました。虫糞茶は劇中では比較的安価なお茶として登場しましたが、現在では高級品です。


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台湾紅茶(フォルモサティー)
台湾茶と聞くと、緑茶、烏龍茶、高山茶などを思い浮かべる人が多いのではないでしょうか? 実は、昔の台湾は、インドに取って変わられるまで紅茶の有名な生産地でした。ちょうどその転換期が「茶金 ゴールドリーフ」の時代。ヒロイン親子が経営する日光も、紅茶の製造販売から緑茶の製造、烏龍茶の質の向上へと舵を切っていきます。


© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

実際に、時代の波の中で一時低迷した台湾紅茶ですが、1999年に復活の契機が訪れます。同年に起きた台湾大地震の復興策として、台湾最大の湖「日月潭」がある南投県で紅茶の製造が再開。ブランド化に成功しました。お茶は産地の土や水によって異なる個性が現れます。台湾紅茶は「ミントの香り」と表現される芳醇な香りが人気で、「茶金 ゴールドリーフ」のヒットによりますます注目されています。


もっともっと「茶金」の世界に!

本作は史実に基づく物語です。そう聞くと、モデルになった人物や場所が気になりますよね。モデルとドラマのロケ地の一部もチェックしてみましょう。

まず薏心の父「張福吉」のモデルとなったのが、新竹県北埔の実業家・姜阿新(1901-1982)。彼は物語の舞台である北埔で製茶会社「永光」を起業。この永光が、ドラマの「日光」のモデルです。永光は紅茶を主とした茶の生産と輸出を行い、その輸出量は台湾茶葉の総輸出量の3分の1を占めていたそう。彼はドラマと同様に「茶虎」と呼ばれ、英国の怡和洋行と取引を行っていました。

また、姜阿新が住居兼迎賓館として北埔に建てた「姜阿新洋樓」が、ドラマで薏心らが住むお屋敷のシーンなどのロケ地になりました。姜阿新洋樓は、中華、日本、西洋の建築様式を取り込んだ豪華な洋館で、現在は一般公開もされています。ロケ地であり、日光のモデルとなった会社と台湾製茶業の歴史の展示も充実していることから、「茶金」のヒット後、北埔の観光地として脚光を浴びています。


© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

また日光の製茶工場のシーンは、いくつかの製茶工場でロケが行われています。そのうちの1つが、桃園国際空港がある桃園市の「大溪老茶廠」。こちらは1926年に日本人が建設した製茶工場を前身とし、まさに近代台湾の製茶史と歩みを共にしてきた工場です。当初の工場の大部分は1950年代に火事で焼失しましたが、後に再建。現在も製茶工場として稼働し、予約すれば工場見学や食事等も可能とのこと。

ドラマに登場する茶工場の2階・製茶区が「大溪老茶廠」で撮影されたシーンです。


© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

また、工場1階の捻転機が並ぶ場所は南投県の「日月老茶廠」で撮影されました。同じ建物の1階と2階を離れた別の場所で撮影していたんですね! 制作陣の並々ならぬこだわりを感じます。

「日月老茶廠」を経営する台湾農林の前身は、日本統治時代の三井物産株式会社でした。「日月老茶廠」は戦後の1959年に建てられた工場ですが、それでも60年以上の歴史がある老舗工場。工場では見学や紅茶の購入が可能です。要予約ですが、食事を楽しむこともできるそうですよ。


© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

「茶金」は他にも台北迎賓館、花蓮文創園区など戦前の建物を中心に台湾各地で撮影されました。その移動距離は台湾を2周半できるほどだと言い、ドラマにかける妥協なき姿勢が見えてきますね。

史実に基づく物語だからこそ、もっと深堀りできる「茶金」。作品を見ながら実際のお茶を飲んだり、ロケ地やその歴史にも思いを馳せてみてはいかがでしょうか?


© 2021 Taiwan Public Television Service Foundation

参考資料
「茶金」台湾公式Facebook
微笑台湾「自己吃的蔬菜自己採 全家一起變身客家主廚」 
中央社「知人知面還要知心 姚君看透演員本色打造專屬造型」 
鏡周刊「《茶金》環台逾20處古蹟取景 最難借的場地還要跟觀光客搶時間
「姜阿新洋樓」公式サイト 
「大溪老茶廠」公式サイト 
「日月老茶廠」公式Facebook 
「台湾農林」公式サイト 
葉立誠「二十世紀台灣服飾 變遷因素之探討」(台灣文獻 第五十三卷第二期)
葉怡蘭『紅茶經:葉怡蘭的20年尋味之旅』(寫樂文化)

「茶金 ゴールドリーフ」
「茶金」キービジュアル

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作品公式HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/t/chakin.html

沢井メグ(ライター/中国語翻訳者)
大学で中国語と出会い上海留学、上海万博での勤務を経てライターとなる。エンタメ系を中心に中華圏のニュースの執筆、取材、翻訳。主な訳書に台湾ドラマ『いつでも君を待っている』の原作『用九商店』(トゥーヴァージンズ)等 Twitter  @Megmi381
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