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台湾映画上映会2026『荒野の夢』上映会【トークイベントレポート】

【台湾映画上映会2026『荒野の夢』上映会&トークイベント詳細】

日 時:2026年10月24日(土)※上映後にトークイベント
開 場: 13時30分
開 演: 14時00分(上映時間103 分)
場 所:台湾駐日本代表処台湾文化センター(港区虎ノ門1-1-12 虎ノ門ビル2 階)
登壇者:シェン・コシャン(本作監督)
聞き手:リム・カーワイ(『台湾映画上映会2026』キュレーター、映画監督)
通 訳:中山大樹

【レポート】
『台湾駐日本代表処台湾文化センター 台湾映画上映会2026』の本年度最終回となる、映画『荒野の夢』上映会が10月24日(土)が台湾駐日本代表処台湾文化センターにて開催された。上映後には、シェン・コシャン(沈可尚)監督によるトークイベントが行われた。
『荒野の夢』の主人公・徐仁修は、50年にわたり荒野や熱帯雨林を歩き続け、カメラと文章を通して自然の壮大さと脆弱さを記録してきた探検家だ。しかし年齢を重ねるなかで、自身に残された”時間”と向き合うことになる。そして彼は自ら「最後の探検」と呼ぶ旅へと向かう。目的地はアマゾン。自然と生命哲学を横断するドキュメンタリーの旅がはじまる。

大自然の秩序の中で、人間はいかに生きるのか──
シェン・コシャン監督が語るドキュメンタリー映画『荒野の夢』

10月4日に大阪で開催された「台湾映画上映会」での『深く静かな場所へ』に続き、今回はシェン・コシャン監督のドキュメンタリー映画『荒野の夢』が日本初上映された。「大阪ではオンラインで皆さんとお会いしましたが、今日は会場に来ることができてうれしいです。」あいにくの雨にも関わらず、多くの観客が集まった会場で、シェン監督が笑顔を見せた。
キュレーターのリム・カーワイが主人公の徐仁修さんについて尋ねると、監督は次のように紹介した。「徐さんは台湾では著名な探検家で、大自然を追った写真集を多く出版していますし、小説も書いています。探検家、写真家、作家として、多岐に渡る活躍をされています。撮影時は77歳でしたが、いまは80歳を超えていますが、とても元気なんです!」

本作の制作のきっかけは、自然環境保全プロジェクトの一環として、徐さんを主人公にしたドキュメンタリー映画を撮影してほしいという依頼だった。もともと徐さんの作品を知っていたシェン監督だったが、初対面の印象は必ずしも良いものではなかったという。
「はじめて徐さんに会ったとき、徐さん自身は自分がドキュメンタリーの対象となることに、まったく興味を示しませんでした。それに「あなたたちは自然を撮るようなひとたちにも見えないね。僕たちの撮影の邪魔にならない?」と言われたんです」ところが、数週間経ったある日、徐さんから「これから山猫を撮影するけど、来てみるかい?」と電話がかかってきた。シェン 監督はすべての予定をキャンセルして駆けつけたという。それをきっかけに、その後3〜4カ月にわたり、突然の電話を受けては撮影に向かう日々が始まった。
「私たちは人間を撮ることには慣れていましたが、動物を撮ることには慣れていませんでした。しかし、数カ月にわたって徐さんの撮影に同行することで、私たちも慣れていくことができました」そして、ついに徐さんとの関係が進展する機会が訪れる。

「ある夜、動物がでてくるのをずっと待っていました。映画で徐さんが「今日は人が多過ぎる。動物は何キロも先から人間の臭いや音を感じるからね」と話しているシーンです。その時、歩く度に誰かの靴音がするんです。「こういう足音もよくないね。みんなが新しい靴を買う時は、僕が選んであげよう」と徐さんが言ったんです。それを聞いて、あ、徐さんはこれからも一緒に探検にいこう、これからもこの関係を続けていこうと。ようやく認めてもらえたんだと思いました。それまでの数カ月は、動物のオス同士がお互いを観察し合うような時間だったんです。」そう振り返ったシェン監督は、さらに意外な事実を明かした。

「でも実はその足音が鳴る靴を履いていた犯人は僕だったんですけどね」監督の告白に、会場はあたたかな笑いに包まれた。「徐さんは自然について、動物について熟知していて、私たちはまるで小学生のように、徐さんにすべてを教えてもらいながらついていく、そんな関係が続いていました。このままではいけないと思ったんです」そう考えたシェン監督は、徐さんと距離を置きたいと手紙を書いた。そして、徐さんの本に記されていた渓谷を一人で訪れ、夢中になって撮影を続けた。道に迷うこともあったが、撮影に没頭するうちに、頭に載せていたメガネをなくしてしまったという。
「私は老眼なので、メガネがないことにとても焦りました。そのとき、目の前にあった大きくて美しい木の前にひざまずいて、どうかメガネを見つけてくださいと祈ったんです。」困り果てた監督は、祈りをささげたあと、川に手を入れた。すると、どれだけ探しても見つからなかったメガネが出てきたという。

「あ、この話はまだまだ続きますよ」シェン監督はそう言って一息ついた。
大きな木と神に感謝を伝え、「季節ごとにお礼に参ります」と誓った監督は、その夜、車の中で眠りについた。翌朝、動物の声が聞こえてくると、カメラを手にして「神様、どうか1分間、時間をください」と願い、機材をセッティングした。そうして撮影できたのが、映画にも使われている、キョンにテンが飛びかかる瞬間だったという。
「こうした自然の中の営みが撮影できたのは、神様が、自分なりのやり方で自然に向き合っていけばいいと教えてくれたのだと思いました。」
この経験を境に、監督は一人でも自然の中で積極的に撮影できるようになった。そうした姿勢は徐さんにも伝わり、ついに、映画のクライマックスにもなっているアマゾンでの撮影に同行できることになった。
アマゾンでの撮影は過酷なものだったという。しかし、そこで監督は、人間の存在の小ささと、自然の中で生きることの意味を実感した。

「早朝、アマゾン川のほとりに立ったとき、至るところからさまざまな動物や鳥の声が聞こえてきました。あらゆる生き物の声に囲まれたとき、人間というのは本当にちっぽけな存在なんだと気づくことができました。もちろん、宇宙の中で人間はちっぽけな存在です。でも、そうしたことを自分の経験として感じることができたのは、アマゾンに立ったからこそでした」そして、徐さんの生き方についても、あらためて理解を深めたという。
「大自然には大自然の秩序があり、徐さんはそういう秩序の中で、彼自身の秩序をもって生きているんだと感じました」 最後に、台湾映画の魅力について尋ねられたシェン監督は、現在の台湾映画を取り巻く環境と、作り手としての課題を語った。
「台湾映画は、最も制限を受けずに制作することができ、非常に活気に満ちあふれています。ただ、私たちの世代は恵まれている一方で、観客にどのようなテーマが受けるのか、たとえば白色テロやジェンダーといったテーマの流行に敏感になりすぎている 側面も感じられます。芸術はテーマそのものが重要なのではなく、その本質をどう表現していくべきなのか。もっと努力していかなければいけないとも感じています」
芸術の本質を問い続けるシェン監督の言葉とともに、2026年度の「台湾映画上映会」は幕を閉じた。

 

≪上映会概要≫
2026年5月~10月、台湾文化センター他、北海道、東京、神奈川、京都、大阪にて全10回開催!

名称:台湾文化センター 台湾映画上映会2026
期間:2026年5月~10月(全10回)
会場:台湾駐日本代表処 台湾文化センター/北海道大学 学術交流会館小講堂/大阪大学 大阪大学会館講堂/ユーロライブ/京都大学 HORIBA シンポジウムホール/中央大学<多摩キャンパス>3号館3551教室/慶應義塾大学 三田・北館ホール/日本映画大学 大教室/シネ・ヌーヴォ

主催:台湾駐日本代表処 台湾文化センター/Cinema Drifters/大福
共催:北海道大学中国文化論研究室・中国現代文学研究者懇話会/大阪大学大学院人文学研究科/ユーロスペース/京都大学大学院人間・環境学研究科東アジア文明講座/中央大学文学部中国言語文化研究室/ 慶應義塾大学東アジア研究所/日本映画大学国際交流センター/シネ・ヌーヴォ
宣伝デザイン:100KG
≪台湾駐日本代表処 台湾文化センター≫公式サイト:https://jp.taiwan.culture.tw

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