サクッと知りたい！武侠ドラマ入門〜ネオ武侠から名作武侠まで〜

2023.07.0617:00

最近、中国ドラマのジャンルの一つとしてよく話題に上る「武侠」。その世界観と見どころを初心者向けに分かりやすく解説！　近年話題となった「有翡（ゆうひ）-Legend of Love-」「山河令」といった“ネオ武侠”から、“名作武侠”をドラマ化した最新作「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」まで、その魅力を紐解きます。

① 武侠ドラマの舞台「江湖」

武侠ドラマの舞台となるのは「江湖」。これは武術の力と仁義を重んじる侠客たちが複数のグループに分かれて勢力を争う、現実社会とは一線を画す任侠の世界です。ここでは正義の味方となって世の平和を目指すことが正しい道ですが、力の強い者が覇者となる弱肉強食の世界だけに、権力欲に駆られて仁義を捨てて悪を行う者も出てきます。

例えば、「有翡（ゆうひ）-Legend of Love-」では山中に砦を築いた門派たちが正義を守るべく悪の勢力と戦い、「山河令」では正義を掲げる門派と悪に堕ちた者たちが集う集団が対立します。なお、「有翡（ゆうひ）-Legend of Love-」「山河令」といった “ネオ武侠”に共通しているこうした世界観は、武侠小説の大家・金庸に代表される“名作武侠”がベースとなっています。

「山河令」©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

特に金庸の名作小説は中華圏で繰り返し映像化されていて、今年はツイ・ハーク（徐克）監督がシャオ・ジャン（肖戦）主演で「射鵰英雄伝」を映画化するのも大きなニュースに。近年も金庸作品といえば「倚天屠龍記[いてんとりゅうき]〜乱世に煌めく愛〜」「天龍八部レジェンド・オブ・デスティニー」「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」といったヒットドラマが続々と日本に上陸しています。

「飛狐外伝」場面写真１
「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

武侠豆知識　その１
「江湖」は現代では複雑かつ困難の多い人間社会を比喩する言葉として使われるほか、マフィアの世界を指すことも。香港マフィアを描く映画『ベルベット・レイン︎』の原題はズバリ「江湖」です。

② 法にとらわれない侠客たち

江湖に生きる侠客たちは自分が属する門派の掟には従いますが、現実社会の法律やシステムにはとらわれません。世直しのために天下を駆け巡ったりお宝を探す旅をしたり、その武術の力で通行証など持たずに国中を動き回る自由な存在です。

一方で、武侠ドラマには「黒豊と白夕～天下を守る恋人たち～」のように王子様やお姫様が侠客として活躍したり、「高潔なあなた」のように腕を見込まれた侠客たちが国の役人になったり、現実社会と江湖の世界がクロスオーバーしていく物語も珍しくありません。

「黒豊と白夕」場面写真
「黒豊と白夕～天下を守る恋人たち～」©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

特に「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」は清朝の乾隆帝時代を舞台にした作品。侠客たちの中には本来の侠客らしい生き方を貫く者と、権力を持つ朝廷の手先となって甘い汁を吸う者がいて、主人公・胡斐（こひ）は悪徳官僚や堕落した侠客たちと対決することになります。

こうした史実をもとにした冒険ストーリーは、実際の歴史の裏にこんなヒーローたちの活躍があったら……と楽しく想像できるイマジネーション豊かなストーリーが見どころです。

「飛狐外伝」場面写真２
「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

武侠豆知識　その２
歴史に残る元祖侠客といえば戦国時代の思想家・墨子（ぼくし）。作家たちによって構築されてきた武侠の精神は、彼が唱えた博愛や平和、義を重んじる思想の影響を受けていると言われています。

➂生死を共にする義兄弟の契り

社会のルールにとらわれないからこそ、侠客が最も大切にするのは互いの信頼関係です。義兄弟の契りを交わすということは、互いを信頼しあって生死を共にすると誓うこと。

例えば、「江湖英雄伝～HEROES～」は運命的な出会いを果たした侠客3人が義兄弟の契りを結びますが、信頼と裏切り、愛と憎しみが交錯するドラマティックなブロマンスドラマが繰り広げられることになります。

「江湖英雄伝」場面写真
「江湖英雄伝～HEROES～」© Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」もそんな義兄弟たちの愛憎劇が盛り上がるストーリー。胡斐は赤ん坊の自分を遺して死んだ父親・胡一刀（こいっとう）の命を奪ったのは義兄弟の苗人鳳（びょうじんほう）だと聞かされて敵討ちを決意します。ところが、この事件には裏があり、思いがけないブロマンスドラマが明らかになっていくことに。また、苗人鳳とその妻に横恋慕した田帰農（でんきのう）との対決など、喜怒哀楽に満ちた男同士の熱いドラマも見逃せません。

「飛狐外伝」場面写真３
「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

武侠豆知識　その３
「同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、同年、同月、同日に死せん事を願わん」と義兄弟の契りを結ぶ儀式はすでに「三国志演義」に登場。劉備・関羽・張飛による “桃園の誓い”が有名です。

➃老若男女問わず最強になれる世界

侠客たちは持って生まれた身体能力だけではなく、修行によって身につけた内なる力で勝負していて、それこそが彼らの強さの源。つまり、「剣王朝～乱世に舞う雪～」の登場人物たちのように、女性であっても男性に勝る武術の使い手となることができますし、年寄りでも若者を凌ぐ力を発揮することができます。そのため、武侠ドラマでは老若男女、バラエティ豊かなキャラクターが活躍するのも大きな魅力です。

例えば、「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」も旅に出た胡斐が出会うのは、男性に負けない武術を誇る袁紫衣（えんしい）、毒を操って敵から身を守る程霊素（ていれいそ）といった賢くて強い女性たちや、門派に伝わる独自の武術や秘術を教えてくれる先輩ヒーローたち。こうした出会いを通して胡斐が強くなっていくストーリーにもワクワクさせられます。

武侠豆知識　その４
侠客たちは内なる力を使って空高く飛んだり水の上を歩いたり、超人的な活躍をします。中華圏の映画やドラマではそのアクションを視覚的に実現するため、ワイヤースタントの技術が発達しました。

＼武侠が気になり始めたあなたに！ “名作武侠”をドラマ化した最新作「飛狐外伝（ひこがいでん）レガシー・オブ・ヒーロー」／

TEXT：小酒真由子（フリーライター）
映画界・出版界での会社勤めを経てフリーライターに。アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる！」を連載、Cinem@rtにて「『山河令』の台詞を読み解く」「アジアドラマの処方箋」などを執筆。

「飛狐外伝　レガシー・オブ・ヒーロー」

DVD-SET1 & レンタル DVD Vol.1〜6 2023年7月5日（水）リリース
DVD-SET2 & レンタル DVD Vol.7〜13 2023年8月2日（水）リリース
DVD-SET3& レンタル DVD Vol.14〜20 2023年9月6日（水）リリース
セル各17,600円（税抜 16,000円）
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©Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited