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【インタビュー】『映画 真・三國無双』音楽制作担当 波多野裕介氏 “登場人物たちの戦いと一緒に演奏しているという迫力を出したかった”



― ところで、波多野さんは香港で作曲家として活躍されていらっしゃいますが、そもそもなぜ中華圏の映画音楽の仕事をするようになったのでしょうか。

波多野 子どもの頃は独学で楽器を練習したり、本を読みながら音楽理論を勉強したり、見よう見まねで作曲をしたりしていたのですが、オーストラリアの大学に進学したときに数学専攻から音楽専攻に移行して音楽を学びました。そこで妻と出会い、香港に移り住むことになったんです。

ラッキーなことに、香港に来てすぐホテルのラウンジでピアノを演奏する仕事が見つかり、いろいろな国籍や年齢の経験値が高いミュージシャンたちに囲まれて、1日7時間、週に7日間、年中無休で演奏するという生活を1年以上続けていました。そのときに、映画業界や音楽業界の方たちと出会って、編曲の仕事やショートコマーシャルの音楽制作などもやるようになったんです。

そのあと、アンドリュー・ラムさんが僕のことを知ってくださったことがきっかけで、『全力スマッシュ』の音楽を手掛けることになりました。実は『全力スマッシュ』には妻の母も出演しているんです。義母が出ている作品でポカしてしまったら大変だ、というプレッシャーで大変でした。プレッシャーが重すぎて、香港から日本のラジオ番組にペンネームを使って悩み相談を送ってしまったくらいです(笑)。そうしたら番組内で読まれてしまって、MCの山里亮太さんから直々に「がんばれよ」って言ってもらいました。


― すごいエピソードですね。香港で仕事をするなかで、ほかにはどのような苦労がありますか?また、中華圏の映画業界において、波多野さんは「一緒に仕事をしたい才能の1人」と言われていると聞きます。その理由をご自分ではどう思いますか?

波多野 香港以外で音楽の仕事をしたことがないので比べるのは難しいですが、音楽的なことでは歌入りの曲を書くときに日本語に合わせてメロディーを作ると、中国では早すぎて歌えないと言われることがよくあります。ですから必然的に中国語にはまるような、ゆっくりしたバラード曲になることが多いです。早い歌もありますが、僕の経験的には日本語の感覚のまま作って渡すと、中国語では歌いにくいというのが壁になっているのかもしれません。

そういう意味で、僕の日本人としての感性は香港のなかでは異質だし、それが長所でもあり短所でもあると思います。幼少期から聞いてきた音楽や経験したことが、自分の作品に反映しているのは間違いありません。香港の音楽にはない、いい意味での異質さを求める人は、僕のような作曲家に仕事を任せたいと思うのかもしれません。

僕はたまたま英語を話せて香港に来る機会もあったために、今のような仕事ができていると思っています。日本にはとても才能あふれる方がたくさんいますし、僕はまだ卵が割れたくらいの発展途上です。これからもっと精進して、僕が尊敬している菅野よう子さんのような素晴らしい作曲家になりたいと思っています。


― 日本では『花椒の味』の公開もスタートしましたが、現在手掛けている作品はありますか? 日本での音楽活動などについても教えてください。

波多野 今は、来年の春までに完成予定の映画の仕事が4つほど進行中です。ホラー作品もあります。僕自身はあまりホラー映画を観ないんですが。日本での活動はというと、ライブ配信アプリで毎朝香港からライブを配信しています。ライブは、目の前のお客さんの反応をすぐにキャッチしなければいけないエンターテイメントです。映画の仕事とは違うその「肌感」のようなものを忘れないためにも、映画音楽の仕事と並行してライブは続けています。

僕は、日本ではまだ何のバックグランドもないミュージシャンです。そんな自分のライブをいろいろな方が観てくれて、僕のクリエイティビティだけでなく人間性まで見てサポートしてくださっていることに感謝の気持ちでいっぱいです。やはり僕は日本人なので日本の文化が大好きですし、日本人としての誇りも忘れていません。今は配信ライブだけですが、いつか日本の音楽業界の方たちとも一緒にお仕事をしたいと思っています。


― 最後に、波多野さんが好きな「映画 真・三國無双」の登場人物と、これから映画を観る日本のファンの皆さんへのメッセージをお願いします。

波多野 三国志のなかでは、劉備の軍師として名高い諸葛孔明が好きです。『映画 真・三國無双』のなかでいえば、呂布と曹操ですね。

『映画 真・三國無双』の一番の見どころは戦いのシーンです。CGもすごい迫力ですし、三国志を扱った映画のなかで、ここまでアクションに力を入れているものはないのではないかと思います。ゲームが好きな僕から見ても、世界観そのままにすごくカッコいい作品です。ゲームをしたことがないという人でももちろん楽しめますが、もし機会があればゲームもやってみて、映画ではどういう工夫がされているのか、という視点で見るのもよいと思います。音楽の部分も、ここは暗く、ここは明るくというように映像とつなげて作っているので、音楽好きな方にはそういう変化も聞いていただけると嬉しいです。

波多野裕介プロフィール

1986年2月12日 アメリカ合衆国ニュージャージー生まれ香港在住。
中国、香港など中華圏の映画音楽を数多く担当している。「ソウルメイト/七月と安生」で、香港電影金像奨受賞。ほかにも「全力スマッシュ」「死因無可疑/LEGALLY DECLARED DEAD」(貴志裕介によるホラー小説「黒い家」の香港作品)「花椒の味」などのサントラや、香港のシンガーソングライターAGAの楽曲に編曲として参加するなど、多方面で活躍中。

Interviewer/ Text:白根 理恵(ライター)


『映画 真・三國無双』リリース情報

 

Blu-ray&DVDが2021年12月17日(金)発売決定!
価格:Blu-ray 5,170円(税込)、DVD 4,180円(税込)
※2021年11月24日(水)よりBlu-ray&DVDレンタル開始!

Blu-ray、DVDには日本語吹き替え版も収録!
主要な人気武将のキャラクターには、ゲームの声優がそのまま日本語吹替を担当!!

発売元:アット エンタテインメント 協力:株式会社コーエーテクモゲームス
販売元:TCエンタテインメント


『映画 真・三國無双』作品情報
人気アクションゲームが待望の実写映画化!
後漢末期、権力争いにより朝廷は腐敗し、地方では張角率いる黄巾党による乱が起こる。曹操や義勇軍として志願した劉備、関羽、張飛の三義兄弟、孫堅、袁紹らの活躍により黄巾の乱は治まる。しかしその後、朝廷内の権力争いで台頭した董卓が専横を極め、これに反発した群雄が反董卓連合を結成する。激動の三国時代に英雄・猛将たちが広大な中国大陸を駆ける!

監督:ロイ・チョウ
出演:ルイス・クー、カリーナ・ラウ、ワン・カイ、トニー・ヤン、ハンギョン、グーリーナーザー

香港・中国・日本/2021年/118分
原題:真·三国无双
英題:Dynasty Warriors
配給:アット エンタテインメント 協力:株式会社コーエーテクモゲームス
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