主演:リリー・フランキー、共演:ファン・ビンビン 斎藤工『Diary of a Mad Old Man』 第39回東京国際映画祭 ジャパンプレミアレポート到着
日本文学を代表する作家・谷崎潤一郎の最後の長編小説「瘋癲老人日記」を、現在の東京を舞台に映画化した『Diary of a Mad Old Man』(原題)。この度、第39回東京国際映画祭【ガラ・セレクション】部門に出品された本作ですが、11月3日(火・祝)の同映画祭上映後の舞台挨拶にて、2027年夏 テアトル新宿ほか全国公開が発表されました。
脳卒中で半身不随となった老人と、そのリハビリのために訪ねてくる長男の妻との関係を描く。監督は中国人キャストを主要キャストに起用したハリウッド映画『ジョイ・ラック・クラブ』(93)で興行的な成功をおさめ、ハーヴェイ・カイテルを主演に迎えた『スモーク』(95)でベルリン映画祭銀熊賞を受賞したウェイン・ワン。『万引き家族』(18)『ルノワール』(25)などに出演したリリー・フランキーが主人公ウツギを演じ、『ブッダ・マウンテン』(10)で2010年東京国際映画祭最優秀女優賞を受賞したファン・ビンビンが長男の妻スースーを、長男・ジョウキチ役を斎藤工が演じている。
脳卒中からの回復過程にある、身体の不自由な69歳のウツギ。やがて介護をしてくれる義理の娘スースーに次第に執着するようになり、衰えていく身体とは裏腹に、性への欲望は激しさを増していく。二人の緊張をはらんだ関係は、やがて誘惑と妄想の境界を曖昧にしていく―――。
この度、劇場公開決定の一報に合わせて、スチール5点も解禁です。
また、11月3日(火・祝)、第39回東京国際映画祭【ガラ・セレクション部門】上映後に行われたリリー、斎藤、監督による舞台挨拶レポートもお届けします。
【イベント概要】
イベント名:第39回東京国際映画祭【ガラ・セレクション部門】
日程:11月3日(火・祝)
会場:TOHOシネマズ 日比谷 スクリーン12
登壇者:リリー・フランキー(主演)、斎藤工(出演)、ウェイン・ワン(監督)
MC:市山尚三(東京国際映画祭プログラミングディレクター)
谷崎潤一郎の「瘋癲老人日記」を『スモーク』、『ブルー・イン・ザ・フェイス』の名匠ウェイン・ワンが映画化した『Diary of a Mad Old Man』(原題)が11月3日(火・祝)、第39回東京国際映画祭の【ガラ・セレクション部門】にて上映された。上映後にはワン監督、主演のリリー・フランキー、共演の斎藤工が出席してのトークセッション、Q&Aが行われた。
主人公の老人ウツギの、息子の嫁スースーに対する倒錯した性欲を描く本作だが、上映が終わると会場は、温かい拍手に包まれた。ワン監督は劇場に足を運んだ観客に感謝の思いを口にし、さらに「明日(11月4日)は、リリーさんの誕生日なんです」と呼びかけ、客席からは祝福の拍手がわき起こる。

63歳となるリリーさんは「イヤですね、どんどんジジイになっていくと、こう(=映画の中の主人公のように)なっていく…(苦笑)。(劇中で演じた主人公ウツギと違って)まだ俺はビンビンですから!」と強調し、会場は爆笑に包まれる。リリーさんは、本作について「いろんな国際映画祭で上映して、大好評と大不評を味わっています(笑)。『全く受け付けない』という(映画祭の)ディレクターもたくさんいたし、『大好き!』という人もいるという、まさに俺と工くんが一番好きなタイプの映画です。みんなに好かれる映画を観に行ったことがないから」と明かし、祝日の夜の上映に劇場に足を運んだ観客に向けて「『澱は底に溜まる』と言いますから、みなさん、似たような人だと思っています!」と親愛の言葉を口にする。
ウツギの長男・ジョウキチを演じた斎藤さんは「リリーさん経由で、ウェイン・ワン監督が谷崎を映画化しようとしていると、遥か彼方の情報として聞いていたので、いち映画ファンとしてこの映画が完成してみなさんに観ていただけたことを幸せに思っています」と挨拶。
ワン監督は、そんな2人について「今度はこの2人を主演にコメディをつくったらいいかもしれませんね。私は既に『スモーク』と『ブルー・イン・ザ・フェイス』を撮りましたから、今度は『Diary of a Mad Old Man』の続編を…」と笑顔で語る。

リリーさんとワン監督の出会いは、2016年に公開された映画『女が眠る時』に遡るが、今回の企画に関して、リリーさんは「そもそも、ウェインから『“老人の性”をテーマにした映画を撮りたい』と10年ぐらい前から聞いていて、プロットを書くのを相談されていたんですけど、『いろんなアメリカの俳優に断られているから、もう、お前でいい』って言われて、『え? 俺、出るんだ?』と思いました(笑)」と振り返る。リリーさんの言葉に、ワン監督は「断ったのは彼ら(=ハリウッドの俳優)じゃなくて、私のほうです。みなさん、マーロン・ブランドが(日本を舞台にした映画)『八月十五夜の茶屋』に出ていたのを覚えていますか? やはり、この映画に白人の男性が出演するのは、非常に違和感があると思うんです」とリリーさんがファーストチョイスであったと強調。リリーさんは、ワン監督の言葉を引き取り「紆余曲折あって、日本人と中国人(ファン・ビンビン)のキャストで、中国系アメリカ人のウェインが撮るアメリカ映画という、一番平和な成り立ちになりました。やはり『エロは世界をつなぐ』!」と共に映画をつくることになった経緯を明かした。
さらに、リリーさんは本作で描かれる、老人の“性”への執着についても言及。「例えば障害を持っている方とか、おじいさんとか、おばあさんというのは、性に対する意識というのがなくなっている人として、社会の中で振る舞わなければいけない側面があります。でもそれは、若い人たちや健常で生きている人たちのエゴであって。実際はそんなわけないじゃないですか。公園でボーっとしているおじいさんは、ママのケツを見ているわけですから」とリリーさんらしいユーモアと皮肉を交えた口調で、“性”に対する社会の欺瞞に鋭いツッコミを入れる。
そして、リリーさんは本作の“意義”として「これまでの日本映画でも“息子の嫁に手を出すジジイ”ってたくさん描かれてきたと思うんですが、そういう人ってすごくマッチョで、女性を弱いものとして扱っていて、気持ちの良くないシチュエーションばかりだった。それに対し、ウェインは(心が)少年だし、清潔な人だから、仕上がりがポップなんですよね。主人公ウツギの性欲も笑えてしまうし、俺はカナダでこの映画を観ましたが、みんな『腹がちぎれる!』みたいな感じで笑っていて、『俺はこんな笑われる映画をつくっていたんだ?』ということが意外だったんです。でも、最終的に“いとおかし”というような、悲しさもあり、純愛が描かれている。最高の“推し活映画”ですよね」としみじみと語り、斎藤さんも「純愛だと思います」と深く同意していた。
リリーさんによると、ワン監督の撮影現場は、当初の台本にないことばかりだったという。この日の話題に上がったのが、うなぎが使われる、とある変態的なシーンについて。「撮影の中盤、監督から『リリー、相談がある』と言われて。聞くと『この映画はこのまま撮影すると、ただの“良い映画”になってしまう』と悩んでいて、『それじゃダメなの?』と(笑)。その結果、優秀なスタッフのおかげで、3日後にはうなぎが(現場に)来ていました」と振り返る。
斎藤さんは、改めてワン監督の現場について「リリーさんがおっしゃるように、額面どおりに台本に書かれていることに沿って、用意して現場に行くという作品ではないんだな、というのは、現場の雰囲気からしてありました。どう転んでも、そこに寄り添うという好奇心みたいなものにあふれている現場だったなと思います」と述懐。
その言葉にワン監督は「もちろん脚本というのは大切な映画の土台だと思います。ですけど、台本通りになってしまいますと、やっぱりつまらなくなってしまいます。特にお2人のような素晴らしい俳優さん、そしてビンビンさんのような素晴らしい女優さんと仕事をしている時はそうです。ですから、台本通りに撮ることもありますし、そうでない時には、やはりうなぎのシーンを撮るわけです」とユーモアたっぷりに語る。
さらにリリーさんは「カットされているシーンが多くて、(撮影に)手がかかるシーンほどカットされている。(説明的な部分を)バサバサと切れちゃう監督はすごい!」とウェイン監督の編集の手腕と勇気を絶賛するが、ワン監督は「それは私が本当に良いシーンに恵まれたからだと思います。かつて、私はフランス・フォード・コッポラ監督のビルの中に、オフィスを構えていて、そこにポール・シュレーダー監督のオフィスもあり、その時に彼から教わったことなんですけど『編集に関して一番大切なことは、物語、そして主人公に関係のないものはカットすることだ』と言われました。『それで15分しか残っていなかったとしても、それでもいい。それが物語の真髄になるんだから、そこからまた広げていけばいい』と教わりました」と自身の編集の哲学を明かす。この言葉にリリーさんは「それでもうなぎは残ったんだね…」としみじみと語り、会場は笑いに包まれていた。
リリーさんは、ビンビンさんとの共演についても「彼女がいると、華やかで撮影時から“映画”にしてくれるんです。朗らかで明るくて、お芝居に対して真摯な方」と絶賛し「僕が足を舐めるシーンがありますが、彼女、すごく丁寧な方で、直前までフランス人のペディキュアの技術者を呼んで、足のメンテナンスをしてくれていました」と舞台挨拶の終了時間が迫る中でも、次々と撮影現場でのエピソードを明かし、会場を盛り上げていた。
『Diary of a Mad Old Man』(原題)は2027年夏、テアトル新宿ほか全国公開。




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