イベントレポ|「坂東玉三郎舞踊集 4Kリマスター Blu-ray BOX」発売記念 トーク付き上映会レポート
Cinem@rtで「台湾レポート」「ドラマから知る台湾のこと」など台湾ドラマに関するコラムをお届けしているローズです。
日本で暮らして11年、私が来日したきっかけは歌舞伎俳優の坂東玉三郎さんでした。
私が玉様に出会ったのは15年前、台湾の台北芸術大学演劇学系の修士課程に在籍していた頃でした。授業で玉様の「鷺娘」の映像を拝見した時の驚きと感動を、今でもはっきりと覚えています。初めて目にした歌舞伎の世界、そして玉様の美しい踊りに深く魅了され、玉様を研究しようと心に決めました。それから、周囲の日本語が堪能な友人たちに助けてもらいながら必死に勉強し、3年ほどの時間をかけて論文を書き上げ、卒業後も歌舞伎をはじめとする日本文化に触れたいと来日し、今に至ります。
今回は、玉様のおかげで来日した台湾人の目線から、イベントレポートをお届けしたいと思います。
10月22日、東劇で「坂東玉三郎舞踊集 4Kリマスター Blu-ray BOX」発売記念 トーク付き上映会が行われた。坂東玉三郎(以下、玉三郎)が登壇し、聞き手を務める歌舞伎研究家の石橋健一郎氏と30分ほどのトークを繰り広げた。
トーク付き上映会は2回行われ、第一回で上映されたのは「京鹿子娘道成寺」、第二回は「鏡獅子」、どちらも12月2日に発売される「坂東玉三郎舞踊集4KリマスターBlu-ray BOX」に収録される作品だ。
写真提供元:松竹
玉三郎、修復作業の大変さを語る「映像って根気ですね」
トークは「4KリマスターBlu-rayとは何か?」という質問から始まった。玉三郎は、「フィルムをBlu-rayにするためにテクニック」と説明。今回の舞踊集に収録される作品は1992年、玉三郎が42歳頃の舞台をフィルムで撮影したものだが、4Kリマスター作業によって色の補正、雑音消去、音程ズレの修正ができ、フィルムらしい深みや温かみなど美しいものは残すことができるそう。
だが、これが大変な作業だったようで、監修を務めた玉三郎は約10時間の内容を1コマ1コマ観て確認。次第に両目の間が熱くなり耳も痛くなり、「5時間以上やると聞こえなくなり、見えるべく色が見えなくなる」と苦労を振り返る。さらに、最初の確認は試写室で行ったが、その後Blu-rayに焼き直して自宅でもう一度確認。Blu-rayを購入した視聴者が実際に観る環境で確認するためだという。玉三郎は、「映像って根気ですね」と感嘆した。
玉三郎が明かす、『娘道成寺』における「女形の三つの課題」
玉三郎が最初に『娘道成寺』を踊ったのは24歳の時。聞き手の石橋氏曰く、本作は「歌舞伎の長唄舞踊として代表的、最高峰のものと言われている」作品。女形として本作を踊るのは大きなことだが、玉三郎は「悲しいことに、養父の十四代目守田 勘彌はちょうど観ることができなかった」と語る。実の母親や養母の舞踊家・藤間勘紫恵には観てもらえたそうで、養母からは稽古もつけてもらったという。また、1時間10分もする本作を踊るには、「女形の三つの課題」として「金冠烏帽子のところは、どのくらい動かないでいられるか、言わず語らずって手鞠になったらどのくらい華やかに動けるか、恋の手習いになったら、踊りが物語になれるか」と述べ、「観客を飽きさせないこと」に注意を払いながら、踊りの構成も分析し、「新しく生まれ変わった雰囲気」などを出して踊っていたと明かした。
その後、「坂東玉三郎舞踊集」に収録された作品の音楽と振付についての話題へ。玉三郎は、「舞踊というのは、音楽が良くなかったら、踊っても意味ないというのは僕の思いです」と踊りにとって音楽の大切さを語った。(第二回のトークでは、「逆説的に言えば、音楽が素晴らしければ、なんとなくぐるぐる回れば成立しちゃうんです」とまで語り、客席の笑いを誘っていた)。
また、今回収録されたものは上演中に撮影されたものもあれば、スタジオで撮影したものもあったそうで、玉三郎は「スタジオで撮ったら、細々とNGにしたらいいと思うでしょう? ダメなんですね。やっぱりうまくいかなかったら初めからやり直し。やり直すときに、気持ちが落っこっちゃって、日にちを変えないと踊れなかった。だからほとんど一回で撮りました」と振り返る。
また、42歳前後で自身の踊りが舞踊集に収録されたことに対して、玉三郎は「これだけのものを、大先輩がいる時代で、42でフィルムに残すなんで、本当に恥ずかしかったし、おこがましい僭越なことと思ったんです。でも、若い時から踊ってきて、今じゃなきゃダメだなってなんか、芯から思ったんです」と当時の思いを明かした。
写真提供元:松竹
玉三郎が挙げる「Blu-ray化してほしい作品」とは?
12月2日に発売される「坂東玉三郎舞踊集 4Kリマスター Blu-ray BOX」は第一弾、第二弾は来年リリース予定。「船弁慶」や「紅葉狩り」などの歌舞伎舞踊を収録し、10巻出して舞踊集にする予定だそう。今年8月に歌舞伎座で上演した「雪」と「残月」も第二弾に収録されるとのこと。また今回のイベントでは来場者に「Blu-ray化してほしい作品」についてのアンケートも行われた。玉三郎本人は、「泉鏡花集」を希望しているそうだ。
そしてもう一つのお知らせは、元々9月中旬で締め切りとなった第一弾の先行予約特典「坂東玉三郎直筆サイン入り大判絵葉書」(※松竹の公式サイトで購入した場合の特典)は、玉三郎のお言葉で12月1日まで延長に。観客席から拍手が沸き起こった。
今後の公演の予定について、12月は歌舞伎座に市川團十郎と「与話情浮名横櫛」と共演、お正月は御園座で片岡仁左衛門と「お話とシネマのひととき」を三日間行うとのこと。最後に、玉三郎は「「お話しと素踊り」を回っていても、各地満席で、たぶん直接お目にかかりたいじゃないかと思う。それを大事にしていきたいと思います」と話した。
実際今回のトーク付き上映会も、第一回、第二回共に満席の大盛況で、玉三郎は第二回の最後に、「こんなに大勢いらっしゃると思わなかった。嬉しい」と観客に感謝の気持ちを伝えた。第一回では、マイクをスタッフに渡した後にも、地声で「こんなに大勢いらして嬉しいです」と述べ、出口の前でもう一度会場を振り返った。いつも観客を見て、観客のことを思っていることが伝わる瞬間だった。
写真提供元:松竹
2005年に発売された「坂東玉三郎舞踊集DVD-BOX」に加えて、12月2日に発売される坂東玉三郎舞踊集 4Kリマスター Blu-ray BOX」には「二人藤娘」と「京鹿子娘二人道成寺」が収録される。詳細は商品ページをご確認ください。
https://store.shochiku.co.jp/shop/g/gSHBR0812P/



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