『来し方 行く末』公開記念試写会アフタートークレポート
<『来し方 行く末』公開記念試写会>概要
■日時:2025年4月18日(金)
■会場:映画美学校試写室
■登壇者:周防正行(映画監督) ※敬称略
4月18日(金)、映画美学校試写室にて『来し方 行く末』公開記念試写会が開催され、トークイベントが行われた。登壇したのは、『Shall we ダンス?』『それでもボクはやってない』『舞妓はレディ』など、エンタメから社会派まで幅広い作品を手がけ、国内外で高い評価を受ける映画監督の周防正行氏。周防氏は、日中文化交流協会の常任委員としても活動しており、本作にも「人が生きていくためには物語が必要だ。弔辞は亡き人の物語だが、亡き人のためのものではない。亡き人を送る人たちのための物語だ。もしかしたら「映画」もまた、この世に生きる誰かのための「弔辞」なのかもしれない。」と推薦コメントを寄せている。また、本作は脚本家志望の男性を主人公としており、監督が北京電影学院で脚本家の准教授として教えていることから、試写会には都内のシナリオスクールに通う約50名が参加しました。
「構図が変だな」と思ったところから始まった
まず、最初に触れられたのは、本作における映像の“構図”について。「最初に見て気になったのが、構図。特に、登場人物の頭がスクリーンの真ん中に来るようなカットが多くて、頭上に大きな余白がある。これはあまり映画や写真では使われない構図で、素人写真であれば初心者が無意識のうちにやりがちなよくある構図に近いのだけれど、それがほぼ全編にわたり貫かれているので、その意図を考えないわけにはいかない」と語った。また、脚本家でもある周防氏は、本作がシナリオを書く者にとっていかに深く突き刺さる作品であるかを強調する。「“人生に第三幕はない”というセリフがあって、僕ら映画を作る人間はきちんと第三幕までを書こうとする。でも、実際の人生には用意された結末なんてない。予定調和の美しいラストを書いてしまっていいのか?と、自問するような気分になる映画です」と語った。しかし、その上で、「家に帰ってシナリオを書きたくなる人もいるはず」と語り、本作の誠実な力に太鼓判を押した。
映画の題材は探さないようにしている
題材の選び方について聞かれると、周防監督は「映画の題材は探さないようにしている」と回答。「街や人を映画になるかなという目で見ると、自分の都合のいいように解釈してしまう。でも、そうしないようにしていても、好奇心が勝ってしまう。」と語る。自身の監督作『Shall we ダンス?』について、「電車の窓から見えた 駅近くの雑居ビルのダンス教室がきっかけでした」と創作の出発点を振り返った。また、脚本家・倉本聰氏のエピソードを引き合いに出しながら、「登場人物の背景をどこまで描くか」についても言及。「倉本さんが登場人物の ‘年譜’ を細かく作ると言っていたけど、自分はあまりやらなかった。でもこの映画を観ると、監督はそれをきっとやっているなと感じた。電話のシーンひとつにも、両親の存在がちゃんと背後にある。丁寧な人物設計を感じました」と話した。
中国の映画事情について
日中文化交流協会の常任委員としても2年に1度ほどのペースで中国を訪れる周防監督は、本作の監督であるリウ・ジアイン氏が教鞭をとる北京電影学院にも訪れた経験があると語る。「北京電影学院は超エリート校。少し前の世代では、中国で映画監督と言ったら、ここを出ていないとなれないくらいの場所で、倍率は200倍とか300倍で、中国各地からエリートが集まっている」とその実態に触れた。さらに、青島のある東洋一といわれる撮影所を視察した際のことにも言及。「設備も素晴らしい」とその施設の充実ぶりを称賛。その他、来場者から寄せられた質問にも丁寧に答えるなど、終始穏やかな雰囲気のなかでトークが繰り広げられた。
監督・脚本:リウ・ジアイン[劉伽茵]
出演:フー・ゴー[胡歌]、ウー・レイ[呉磊] 、チー・シー[斎溪]、ナー・レンホア[娜仁花]、ガン・ユンチェン[甘昀宸]
2023年/中国/中国語/119分/カラー/1:1.85/5.1ch 原題:不虚此行 字幕:神部明世 配給:ミモザフィルムズ
©Beijing Benchmark Pictures Co.,Ltd 【公式サイト】https://mimosafilms.com/koshikata/
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