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最新中国ドラマ|「斛珠<コクジュ>夫人」はなぜヒットした?《#2 内容観察》

引用元:wechat Vlinkage 公式アカウント:「Vlinkage」
記事タイトル:「《斛珠夫人》以“虐恋”打开市场,嘉行传媒坚守“内容为先”创作观」


大型作品が多く登場した今年の10~12月期のドラマ市場で、最も注目を集めているヤン・ミー(楊冪)主演作の「斛珠<コクジュ>夫人~真珠の涙~」。放送開始以来、様々なランキングデータで首位を獲得し続け、近年、市場的に弱くなっていた時代劇ジャンルの主流復帰を勢いづけたと話題になっている。

また、このドラマは同ジャンル活性化の起爆剤となっただけでなく、寵愛劇ブームによって顕著になった人工的な“激甘さ”を排除したスタイルに徹したことも、視聴者には新鮮さとして高く評価され人気にもつながったとも。今回はこの話題作「斛珠<コクジュ>夫人」の人気について考察していく。



その2 内容観察

近年は視聴者の審美感やセンスの入れ替わりが速く、どのようなテーマのドラマであっても厳しいプレッシャーに直面している。コンテンツが十分に堅実かつ革新的であるか、そして作品が高品質であるかはドラマが観客を引き付けられるかの重要な指標になっている。そうした中で、「斛珠<コクジュ>夫人」は2つの主要なコンテンツの側面から視聴者を引き付け、強力な市場競争力を維持し続けることができている。

まず一つ目は感情描写の点。女性を主な視聴者とする大型時代劇にとって、感情の部分は作品の最大の魅力となる。時代を超えたテーマ、かつ感情的なエネルギーも大きくなる“泣ける恋”を描くことに終始した「斛珠<コクジュ>夫人」は、寵愛劇ブームの過度な甘さに飽きてしまった視聴者の心を上手くキャッチすることに成功。劇中に登場するカップルたちは、恋心が芽生える高揚感から、切なさ、悲哀、といった様々な明暗を繰り返し、視聴者をおおいに惹きつけた。

こうした感情的な緊張がまず視聴者を惹きつける場合、そこに家族と国の運命を織り交ぜて物語を発展させると、より深い感情的を観る側に与えるポイントになる。例えば劇中では、ヤン・ミー演じるヒロインの海市は、国を守り、人々を守るために、自己犠牲を選択する…という、より野心的なパターンが展開されている。 

二つ目は、キャラクターを際立たせる絶妙なシーン、設定の数々。朝堂、家、戦場、後宮など、さまざまなシーンを用いることで、劇中の登場人物はより立体的となり、物語をより重厚的に感じさせている。また、格調漂う衣装、厳密でありながらも素朴さを感じさせるセット、こまやかな刺繍工芸、点茶工芸などなど、どれを観ても味わい深い演出となっている。 そして多くの古代詩を用いることで、作品をより洗練させ、時代劇特有の文化的背景や美的本質を描きだしている。こうした多様で豊かな感傷性、質感高く東方美を極める作品の基調が、「斛珠<コクジュ>夫人」の最大の魅力となっている。

その3 制作のこだわり につづきます



翻訳・編集:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

 

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