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【きゅんとあじあ】台北之音 番外編≪永瀬正敏攝影展≫

皆さん、こんにちは。
シネマート六本木 元支配人の村野です。
ここでは、7月の訪台で集めてきた、「台北らしい街の音」をご紹介していきますが、今回は番外編として、台中で開催中の【永瀬正敏攝影展 Mind's Mirror~心象~】をレポートします。
が、その前に回想を。


人は、何かに触れた時に、ガラリと価値観を覆されることがあります。
音楽だったり、映画だったり、誰かとの出会いだったり...
鳥肌が立つような感動の瞬間もあれば、じわりと利いてくることもあるでしょう。


私にとって、永瀬正敏さんの写真は、そんな体験を与えてくれるものでした。


私は、人物写真にはあまり興味がありませんでした。
廃墟や路地が好きで、どちらかというと風景写真の方を好んでいました。
永瀬さんが台湾映画『KANO 1931海の向こうの甲子園』の撮影中にFacebookに載せていた写真が、好きでした。その風景の切り取り方が、とても素敵だなと思っていました。


そんなわけで、"写真家・永瀬正敏"に興味を持った私は、中目黒で開催されていた永瀬さんの写真展、〈永瀬正敏写真展 変化する時空の狭間〉を訪れました。
(記帳したら、私の前が林海象監督でした!)
この写真展が、永瀬さんにとって初めての本格的な写真展だったそうです。

(写真:中目黒 入口)

ゆっくりゆっくり写真を眺め、最後に会場で売っていた永瀬さんの写真集「Memories of A ~Aの記憶」をパラパラとめくっていた時のこと。
「A=青森の記憶」と題された写真集の後半に、青森に住む人々のポートレイトが並んでいました。


目を見張りました。
その数々の被写体を通して、写真家・永瀬正敏の人柄が立ち上ってきたのです。
人を写すということは、そういうことなのか-
「この人、絶対良い人だ。正真正銘の良い人だ」
私は、大変平たい表現ながらそう思い、畏怖すら覚えました。
本当に良い人なんて、いないと思っていたからかもしれません。


私はふらふらとギャラリーを出ました。
雨上がりの、桜の花びらが浮かぶ目黒川をぼーっと眺め、車窓からの夕陽に見惚れました。
心が、洗われたような午後でした。


それからというもの、永瀬正敏という人に、より強く興味を持つようになりました。
そして畏れ多くも〈COURSE OF LIFE~永瀬正敏特集〉という特集を企画し、永瀬さんご自身にも
『~COURSE OF LIFE ~"MN"special selection』という特別映像を編集していただきました。
トークショーにもご登壇いただき、こちらが仕掛けたサプライズにも無理やり乗っていただきました。
(今考えると青ざめるばかり。勢いとは恐ろしいものです)
http://www.cinemart.co.jp/theater/special/nagase2014/


さらに、〈台湾シネマ・コレクション2015〉の中で『KANO』を上映した際にも、再びご登壇いただくことが出来ました。永瀬さんが、シネマート六本木最後の大物ゲストとなりました。

そんなわけで(半ば強引に手繰り寄せた感のあるご縁ですが)、お礼の気持ちも込めて、写真展の初日に台中まで向かいました。

まずは、台北から新幹線で台中駅へ。
そこから連絡通路を通って新烏日駅から台湾鉄道の各駅停車に乗って台中駅へ。その時の音がこちらです。




写真展の会場となる「台中市長公館」は、日本人の眼科医が建てたもので、戦後は台中市政府が接収し、台中市長の官邸として使用されていたという、和洋折衷の歴史的建築物です。

(写真:台中市長公館)


台中で眼科医といえば...そう、宮原眼科! 台中駅の駅前にある「宮原眼科」では、レンガ造りの重厚でゴージャスな内装の中で、パイナップルケーキやアイスクリームなどが販売れていて、今や台中旅行者が必ず訪れるお土産スポットとなっています。

(写真:宮原眼科)

で、この「宮原眼科」を開業した宮原武熊医師が別邸として建てたのが、「台中市長公館」なのだそうです。なかなかに感慨深いですよね。
素敵な外観に期待も高まり、いざ中へ!

KANO』でショート上松耕一を演じた鐘硯誠(ジョン・イェンチェン)らが原住民の民族衣装に身を包んだ大判の写真が出迎えてくれる展示は、なんと、"撮影可"となっています。"撮影不可"に慣れていると、"可"と言われてもドキドキしちゃいます。
写真集も売っているのだから、「撮影不可」にして買ってもらうというのが常でしょうが、こればかりか、A4用紙にプリントされた写真の束がオシャレに平置きされていて、なんと、「お持ち帰りOK!」という太っ腹な仕掛けもありました。
こういう、"お客様に楽しんでもらいたい"というところが、実に永瀬さんらしいな~と思います。

(写真:1階~階段踊り場)

木枠の窓が特徴的な二階にも素敵な展示が施され、アクリル板にプリントされた写真が、この歴史的建築物と調和しています。台湾と日本の、良いところが溶け合った展示だと思いました。

(写真:2階)


永瀬さんが台湾を愛し、台湾も永瀬さんを愛している。
一方通行ではない暖かい想いが、すべての部屋に満ちていました。
会場に通された赤い糸は、日本と台湾、人と人、想いと想い、時間や距離など、様々なものを繋ぐ象徴なのかもしれません。



8月中に台湾に行かれる方は、是非台中まで足を延ばし、この素敵な空間を訪れてみてください。

それではまた。再見!
(文:村野奈穂美)

【永瀨正敏攝影展 Mind's Mirror~心象~ 】
◆"台中 Taichung"
期間:2015.7.17 - 2015.8.30 (月曜休館)
時間:11:00 - 19:00
場所:台中市長公館
台中市北區雙十路一段125號 (台中一中脇, 台灣體育大學向い)

※入場無料 ※場内撮影可



『KANO』本編はこちら!



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