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香港映画 『私たちの話し方』アダム・ウォン監督来日交流イベントレポート

 『私たちの話し方』は、香港の俊英アダム・ウォン監督が、ろう者のアイデンティティの確立という社会的テーマを青春ドラマとして描き出した青春群像劇。第43回香港電影金像奨では7部門にノミネートされ、香港ではロングランヒットを記録。香港映画として2025年上半期No.1ヒット作となった。日本では、3月27日(金)に劇場公開を迎え、Filmarks の「初日満足度ランキング」では、Filmarksユーザーから高い評価を集め、第1位にランクインするなど話題を集めている。

この度、日本劇場公開にあわせてアダム・ウォン監督が香港より来日。3月28日(土)にシネスイッチ銀座にて行われた舞台挨拶とQ&Aに登壇した。MCを映画パーソナリティの伊藤さとり氏が務め、英語通訳を付ける形の舞台挨拶とは異なり、MCと監督双方に手話通訳をつけ、YYSystemを使用し、トーク内容の字幕表示も行われた。より多くの方が理解できるデフフレンドリーなイベントとなった。


© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation. All Rights Reserved.

<『私たちの話し方』公開記念 舞台挨拶>

■日時:2026年3月28日(土)
■会場:シネスイッチ銀座
■登壇者:アダム・ウォン(監督・共同脚本・共同編集)、伊藤さとり(映画パーソナリティ)
     冨田香里(英語通訳)、森本行雄、樋口真弓(手話通訳) ※敬称略
YYSystemを利用し、スクリーンにトーク内容を文字起こし字幕として投射した。https://yysystem.com/

 

ろう文化との出会いと映画化の背景


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 宮崎駿監督の『風立ちぬ』の香港版で主役の堀越二郎の広東語声優を務めたことが紹介されたのち、大きな拍手に迎えられて登壇したアダム監督は、「みなさん、こんにちは。アダムです。」と日本語で挨拶。「この映画は私の6本目の作品ですが、日本で商業公開されるのは初めてです。みなさんのフィードバックをとても楽しみにしています。」と語り、和やかな雰囲気でイベントがスタートした。

 まず伊藤氏から「ろう者のアイデンティティの確立」というテーマの着想について聞かれると、アダム監督は「6年前にとある短編映画の脚本で、ろうの方が水中で手話を使って話をしているシーンを読み、とても驚いたんです。私たちの陸上世界では、手話を使ってコミュニケーションするのは大変と思われていますが、水中では手話で話をするのがベストだということに気がつきました。そのことにインスピレーションを受けて、ろう文化に興味を持ち学び始めました。」と振り返る。さらに「ろうであることは不利なことではなくて、強いアイデンティティを持った文化であり、そしてろうの方々はその文化やろうであることに誇りを持っていることを知りました。そのスピリットに感動し、映画で描きたいと思いました。」と語った。

異なるコミュニティを描くうえでのアプローチ


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 続いて観客とのQ&Aに移り、「自分と異なるコミュニティに属する人々の感覚を表現する際に、最も注力した点は?」という質問が寄せられた。アダム監督は「私は自分が聴者であることを心に留めながら、ろう文化に対する尊敬を大事にしてきました。脚本を書くときも撮影するときも、ろう者のキャラクターの視点に立つように努力しました。しかし私が聴者であることは否定できませんし、そこが難しさにもなりました。」。「手話を学び、リサーチを通して、ろうの方々について学んでいきました。ろうの方々にもいろいろな方がいて、補聴器を使う人もいれば、手話や人工内耳を使用している人もいる。それぞれの違いを理解していきました。映画では、どの登場人物も平等に扱うことを心掛け、バランスの取れた、客観的な視点を大切にしました。また、ろうの方々が映画に出演し、スタッフとして参加することも重視しました。」とコメントした。

影響を受けた作品は『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』、さらに今井ミカ監督に学んだ音の使い方

 「制作にあたって参照した作品はあったか」という質問には、「リサーチの段階でたくさんの作品を観ましたが、ろう文化やろう者に対してあまりにも同情的な映画や周辺的な存在として扱っている作品もあり、私はそういう映画は作りたくないと思いました。」。「『コーダ あいのうた』は感動的だと思いましたが、主人公はコーダであってろう者ではないんですね。私が作りたかったのは、ろう者についての映画でした。」と返答。さらに「『サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~』は、音響設計が非常に参考になりました。また今井ミカさんという、日本のろう者の映画監督にも非常に影響を受けました。特に音楽と音の使い方に興味がありました。彼女が香港のろう映画祭に来られた際にお会いして、質問をしました。「なぜ、どうやって音楽を使うのか。」と。彼女の答えはシンプルで、「聴者の観客も楽しめる映画をつくりたいから。」というものでした。音楽に対してバリアを張りそうになっていた私に、彼女のその答えはインスピレーションを与えてくれました。」と語った。

「運命が引き寄せた」主演キャストの起用経緯

 最後に主演3人の起用について聞かれると、「香港ではろう者の俳優で、長編映画の出演経験がある方は殆どいませんでしたが、ろう者のマルコ・ン(アラン役)に出会いました。彼は口語と手話を使うという、役柄と似た背景を持っており、自身の経験を生かして演じたいと語ってくれました。ネオ・ヤウ(ジーソン役)とは、10年以上一緒に仕事をしていて、また彼を起用したいと思いましたが、彼は聴者なので、「手話とろう文化をしっかり学ぶこと」という条件を与えました。彼はその期待に応え、手話を学んで役に臨んでくれました。そしてソフィー役のジョン・シュッインはとても才能がある俳優です。実は元々手話が少しできるということもあり起用しましたが、運命が我々を引き寄せてくれた、と思っています。」と明かした。

 さらにアダム・ウォン監督は、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺と都内を回り、トークイベントに登壇。サイン会も開催され、観客と直接交流を深めた。


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『私たちの話し方』
3月27日(金)より、新宿武蔵野館、 シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国公開

監督:アダム・ウォン(黄修平)
出演:ネオ・ヤウ(游學修)、ジョン・シュッイン(鍾雪瑩)、マルコ・ン(吳祉昊)

【STORY】
手話のみを使用しスクーバダイビングのインストラクターを目指すジーソン、ジーソンの幼馴染で親友、口語と手話の両方を使う広告クリエイターのアラン。そんな2人が、大学を卒業後、大企業に就職し人工内耳(※)のアンバサダーに就任したソフィーと出会う。新たな出会いが、3人それぞれの生き方を変えていくーー
※人工内耳とは、聴覚障がいがあり、補聴器では十分な効果が得られない人がつける医療器具。受信コイルを皮下に挿入するため、手術が必要。外部に送信コイルなどの器具を付けることで使用できる。

2024年/香港/広東語・香港手話/132分/カラー/1.90:1/5.1ch
原題:看我今天怎麼說 英題:The Way We Talk
字幕:最上麻衣子 バリアフリー版製作協力:Palabra株式会社 字幕協力:大阪アジアン映画祭 配給:ミモザフィルムズ
© 2024 One Cool Film Production Limited, Lee Hysan Foundation. All Rights Reserved.
【公式サイト】https://mimosafilms.com/thewaywetalk/

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