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2020年中国ドラマ市場に変化の兆し、短編ドラマが激戦市場に【後編】

引用元:wechat Vlinkage / 公式アカウント:「Vlinkage」
記事タイトル:「短剧2020:酣战模式已开启,星火燎原待春风」


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世間が長らく「水増しドラマ(無駄に長いドラマ)」や「爛尾ドラマ(後半が雑な作りのドラマ)」に辟易していた中、2020年はドラマ史上最高の人気と口コミ評価を誇る短編ドラマが次々に放送された。今、中国のドラマ市場で何が起きているのだろうか。

2020年の短編ドラマブームは、外的要因と内的要因が複合的に絡み合っており、政策や市場の動向にも起因する。昨年の初め、国家ラジオ映画テレビ総局は「テレビやネットドラマの制作管理をさらに強化する」と発表した。話数や長さを規制し、40話以上のテレビ・ネットドラマの制作は推奨しないこと、逆に30話以内の短編ドラマの制作を奨励するとした。また大手動画サイト3社も、映画・テレビ制作会社6社と共同で、改めてコストをコントロールし、水増し禁止、短編ドラマの推進、質の高いドラマを支援する決意報告書を発表した。

短編ドラマは、まず第一に低コスト、短い制作期間、フィードバックの速さ、コントロールのしやすさにおいて、長編ドラマに大きく勝る。現在のドラマが「大きくて総合的なもの」から「小さくて精緻なもの」へと多様化していく中、視聴者のあらゆる層にさまざま選択肢を提供し、的確なポジショニングと明快なスタイルを提供できる短編ドラマは、若者にうけるツボを捉えやすいといえる。

キャストの面では、著名な映画俳優が次々と短編ドラマに「天下り」している。これは2020年の短編ドラマの大きな見どころであり、宣伝文句でもあった。「隠秘的角落(原題)」にはチン・ハオ(秦昊)とワン・ジンチュン(王景春)、「沈黙的真相(原題)」にはリャオ・ファン(廖凡)、「不完美的她(原題)」にはジョウ・シュン(周迅)とカラ・ワイ(恵英紅)という二人の大物女優が出演した。同時に人気俳優たちも次々に参画し、演技力でキャリアの頂点を切り開いている。アンジェラベイビー(楊穎)は「摩天大楼(原題)」でこれまでの演技力の低評価を見事に払拭し、「在劫難逃(原題)」のルハン(鹿晗)は悪役への挑戦に成功した。

また長編ドラマを得意とする監督が短編ドラマに転向するなど、優秀な制作チームの恩恵もある。一方、長編ドラマが有名作家に依存しており、新人作家にチャンスを与えづらい環境であるのに対し、短編ドラマは新人作家が脚本制作会社と共同で脚本を完成させるなど、新規参入の入り口となっている。

そんな中、今年も破竹の勢いで10本以上の短編ドラマが本格的な制作段階に入っている。ドン・ズージェン(董子健)とリー・イートン(李一桐)主演の「她们的镯子(原題)」、ドアン・イーホン(段奕宏)、ダーポン(大鵬)主演の「双探(原題)」、ジャオ・リーイン(趙麗英)、シアオ・ヤン(肖央)、ドン・ズージェン主演の「誰是凶手(原題)」、ウィリアム・フォン(馮紹峰)、ヴィッキー・チェン(文淇)の「致命的誘惑(原題)」など、映画やテレビの第一線で活躍する俳優の作品が目白押しだ。

とはいえ、限られた時間の中で、如何に視聴者の注目を集め、国民的な話題を生み出すか? プロモーションやビジネスモデルはどう備えるべきか? サスペンス以外に、どんなジャンルに挑戦できるのか? 短編ドラマの見通しは明るい一方で、制作側にとってはより多くの課題と要求が求められることになりそうだ。

翻訳・編集:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。2017年4月より、ラジオ番組「Asian Breeze」では台湾の現地情報を発信するコーナーを担当中。

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