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【注目作『整形水』が日本上陸! 韓国ホラーが怖すぎるワケ】前編:恐怖の底なし沼へ、ようこそ。韓国ホラーの世界

韓国は近年、良質なホラー映画が目白押し! 息の長い人気コンテンツとして続々と新作が公開されている。その中でも異彩を放っているのが『整形水』だ。恐ろしいモンスターも、幽霊も出てこない。でもとびっきり恐い! 背筋がゾクゾクするような恐怖体験と深い余韻を生み出す、韓国ホラーの世界をのぞいてみよう。

前編:恐怖の底なし沼へ、ようこそ。韓国ホラーの世界

じわりと迫りくる恐怖と、味わい深さが真骨頂

近年のホラー作品の定番ジャンルといえばゾンビ。海外ドラマの「ウォーキング・デッド」、日本でも「君と世界が終わる日に」をはじめ、韓国では2017年の『新感染 ファイナル・エクスプレス』の大ヒット以来、時代劇ドラマ「キングダム」からコメディ「ゾンビ探偵」までゾンビ一色。とりわけ、韓国のゾンビホラーはKソンビと呼ばれ、独特な動きやスピード感、感染力の高さが世界で注目された。

しかし、韓国ホラーはゾンビだけじゃない! むしろ、心理的に追い詰められるような、時に不条理な、味わい深い作品こそが韓国ホラーの真骨頂なのだ。

◆『新感染 ファイナル・エクスプレス』予告編


アカデミー賞を受賞した『パラサイト 半地下の家族』のような不条理サスペンス、実在の心霊スポットを舞台にした『コンジアム』、悪魔とエクソシストとの死闘を描く『メタモルフォーゼ/変身』など、ジャンルも多彩。低予算でありながら緻密なストーリー、恐怖感を増幅する音響と演出、そして驚愕のどんでん返しは、アメリカのブラムハウスやA24作品に通じるものがある。

最新作『整形水』も、ジョーダン・ピール監督の『ゲット・アウト』、アレックス・ガーランド監督の『エクス・マキナ』を初めて見たときの衝撃のように、驚愕の展開が待ち受ける。

◆『整形水』予告編



負の感情が生み出す怨霊。韓国人にとっての恐怖の根源とは?

韓国ホラーは、人の負の感情から生み出される怨霊や呪いが、恐怖を生み出すというものが多い。つまりは最も恐ろしいのは人間ということ。『新感染/ファイナル・エクスプレス』でも、ゾンビの恐怖に加え、人間の醜さや尊さが描かれていた。

その恐怖心の根底にあるのが「恨(ハン)」という概念だ。これは文字通り「恨み」を意味するだけでなく、怒りや悲しみ、悔しさや無常観が混ざり合った複雑な感情のこと。

言葉にしてもわかりにくいが、韓国ホラーの多くが、この「恨(ハン)」の精神をベースにしており、ただ恐いだけではなく深い余韻を残す。村社会における悪い噂をベースにした『哭声/コクソン』『笛を吹く男』などは、恐怖だけではなく、観終わった後に考えさせるものがある。

◆『笛を吹く男』予告編


また、韓国はキリスト教、仏教、土着宗教が混在した宗教観を持つ。キリスト教の観点からは『プリースト 悪魔を葬る者』、仏教的見地から『第8日の夜』などのホラー作品が生まれている。また、巫俗(ムソク)というシャーマニズムが残り、巫堂(ムダン)という巫女が、神や怨霊を憑依させると信じられてきた。『退魔:巫女の洞窟』など、シャーマニズムに基づくホラー作品も多い。東洋と西洋の文化や宗教観が混在した社会ということでは、日本ともよく似ており共感を覚える部分も多い。

◆『プリースト 悪魔を葬る者』予告編



リメイク&リブートも続々。さらなる進化を遂げてブーム再燃!

『リング』『呪怨』など、Jホラーが活性化した90年代末から、韓国でもホラーブームが起こっていた。そして20年が過ぎ、今また韓国ホラーブームが再燃。

この夏にも、豪華ホテルを舞台とした『ホテルレイク』や、廃遊園地を舞台とした『モクソリ』などの最新ホラーが日本でも公開された。80年代の名作ホラーのリメイク『ヨコクソン/女哭声』に加えて、新進女優の登龍門でもあった『女高怪談』シリーズの最新作『女高怪談リブート:母校』の公開も控えている。そんな韓国ホラーの最新形態といえるのが『整形水』だ。

アリ・アスター監督のホラー映画『ミッドサマー』がヒットとなったように、近年はゾンビものにも食傷気味。ただ、まるで異次元に誘い込まれたような『ミッドサマー』は、美しすぎてホラーと思えない人も多いのでは? 

『整形水』は、もっと身近でアジア的な恐怖を求めるホラーファン必見! ドロドロとした欲望が渦巻き、ゾクゾクする恐怖表現と予測不能な展開。そして観終わったあとに深く考えさせる力がある。


『整形水』 本日9/23より全国ロードショー!
©2020 SS Animent Inc. & Studio Animal &SBA. All rights reserved.


後編:現代社会の闇を炙り出すサイコホラー『整形水』 につづきます

TEXT:菊池昌彦(アジア雑学ライター)
韓流・華流・K-POPなどのアジアエンタメ媒体で執筆。近年の韓国ホラー映画のオススメは、ウェブトゥーンの内容の通りに人が次々と死んでいく『殺人漫画』。サイコスリラーからゾンビものまで、韓国ホラーは魅力がいっぱいです。近著は「中国時代劇がさらに楽しくなる! 皇帝と皇后から見る中国の歴史」(辰巳出版)。長野県在住で農家も営む。

Edited:野田智代(編集者、「韓流自分史」代表)


映画『整形水(原題:奇々怪々 整形水)』
2021年9月 23 日(木・祝)全国ロードショー中!

誰もが美しくなれる奇跡の水。つけたら最後、破滅のはじまり―。

【STORY】
小さい頃から外見に強いコンプレックスを持ち、人気タレントのメイクを担当しているイェジ。タレントからは罵倒され、ふとした偶然で出演した TV 番組では、自分への悪意ある書き込みで自暴自棄に。そしてある日、巷で噂になっている“整形水”がイェジの元へ届けられた。顔を浸せば、自らの手で自由自在に思い通りの容姿へと変えることができてしまう奇跡の水。後遺症も副作用もない。美しくなりたいという欲望に駆られ、イェジは“整形水”を試すことを決意する。全く新しい人生を歩むために。それからしばらくして、周囲で不審な出来事が起こり始める…。

原作:オ・ソンデ(LINE マンガ『奇々怪々』内「整形水」)
監督:チョ・ギョンフン
声の出演:沢城みゆき、諏訪部順一、上坂すみれ、日野聡

2020 年/韓国/ 85 分/カラー/ビスタ/5.1ch/英題:BEAUTY WATER/翻訳:小西朋子/PG12
提供:トムス・エンタテインメント
配給:トムス・エンタテインメント/エスピーオー
©2020 SS Animent Inc. & Studio Animal &SBA. All rights reserved.

公式Twitter:@seikeisui(#映画整形水)

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