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史実の宇文護はどんな人?/宇文護を演じた名優たち|中国時代劇トリビア#71

乱世の中、欲望と策略に巻き込まれながらも誇り高く生きた女性、独孤伽羅を描いたドラマ「独孤伽羅~皇后の願い~」。物語の中で、憎まれながらも圧倒的な存在感で心を掴む宇文護について、今回はご紹介していきます!

宇文護(うぶん・ご/513~572)は北周の皇族で、字名は薩保。宇文一族は、匈奴を祖先に持つ鮮卑の遊牧騎馬民族。北周の創始者である宇文泰(505~556)の兄・宇文顥の子で、兄は宇文什肥・宇文導。     


「独孤伽羅~皇后の願い~」宇文護(シュー・ジェンシー扮)


宇文泰の死後、北周の権力者として国力増強に努める一方で、権力欲も強く、その専横に反発した重臣の趙貴と独孤信を殺害し、宇文泰の後継となった天子の二人(宇文覚・後の孝閔帝と、宇文毓・後の明帝)の命も奪ってしまいます。政治家として北周への貢献は多大なるものがあった一方、暴虐で独裁的な手腕があだとなり、従弟の宇文邕(武帝)によって謀殺され人生の幕を閉じます。


「独孤伽羅~皇后の願い~」宇文護


このように善と悪の両面を持って評価される宇文護には、隠れた逸話がありました。

戦乱の時代に生きる者の常か、宇文護もまた幼い頃から運命に翻弄され、早くに父を亡くし、18歳で母・閻姫と生き別れになってしまいます。以後、母の生死も分からぬまま時が流れ、35年の後、敵対する北斉から、身柄を預かる閻姫の書簡が宇文護の元に突然に送られてきます。

この時期、保定3年は、北周が突厥と連合して出兵し、北斉を南北から挟み撃ちにしようと策を巡らせていた頃。攻撃を避けたい北斉の武成帝は、これより前に捕えていた武帝の親族らと閻姫らの帰国を条件に、北周に和平を提案してきたのでした。


「独孤伽羅~皇后の願い~」宇文護


やがて武帝の第四姑らは先に帰されますが、閻姫は武成帝側が有利に事を進めるために利用され、宇文護に宛てた救命の書をしたためることになります。この時、閻姫は80歳、息子の宇文護は52歳。

母からの書簡には「長きにわたって生死も知れず胸が張り裂けそうな思いでいました。ましてや、離れて暮らす息子の悲しみを思えば、いてもたってもいられない」という切なる親心が綴られていました。この書簡をみた宇文護は、「周書」に“顔をあげて正視できる臣下がいなかった”と記されるほどに、嘆き悲しんだそうです。

そしてすぐさま返信をしますが、北斉は閻姫の帰国を認めませんでした。その間に再三の母子書簡のやりとりが行われ、北周がしびれを切らす寸前で、閻姫は無事帰還叶うことに。念願の再会を果たした宇文護は母を手厚く迎え入れ、閻姫は帰国後の3年間を息子と共に幸せに暮らし、逝去しました。

宇文護の母へ送った書簡には、一心に「母への不孝をわびたい」という思いがつづられており、そこには暴虐で冷酷な政治家としての顔はありません。こうした二面性が宇文護というキャラクターをより面白く、想像を掻き立てる存在にしているようにも思えます。

激動の人生を送ることとなった母の閻姫は19歳で宇文顥に嫁ぎ、29歳で宇文護を出産。40歳で宇文顥を亡くして寡婦となり、46歳で宇文護と生き別れ、80歳で再会を果たす。戦乱の中、三男三女を必死に守って生きた、強く優しい母のような女性を、宇文護はどこかで求める人だったのかも……しれませんね!?


「独孤伽羅~皇后の願い~」宇文護



宇文護を演じた名優たち

さて、歴史上の人物として様々なかたちで描かれる宇文護ですが、ここでどんな俳優がドラマの中で演じてきたかを振り返ってみましょう!

「蘭陵王」(13年)
キャスト:チェン・シャオニン(鄭暁寧)
宇文邕(ダニエル・チャン扮)の叔父で北周の宰相。北周国内の実権を握る実力者。この作品ではベテラン俳優のチェン・シャオニンが演じています。

「独孤伽羅~皇后の願い~」(18年)
キャスト:シュー・ジェンシー(徐正曦)
イケメン俳優のシュー・ジェンシーが演じています。この作品の中では、対立する独孤家の般若と愛し合いながら傷つけ合う関係に…。

「蘭陵王妃~王と皇帝に愛された女~」(16年)
キャスト:ギルバート・ラム(林韋辰)
野心的な陰謀を持つキャラクターで登場。香港の俳優で歌手、MCなども務めるギルバート・ラムが演じています。


「独孤皇后~乱世に咲く花~」(19年)
キャスト:ジァン・カイ(蔣愷)
「永遠の桃花~三生三世~」「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」の天君役のジァン・カイがベテラン俳優の貫録で演じています。

皆さんはどのタイプの宇文護に馴染みがありますか? 比較してみると、やはりベテラン俳優が演じることが多く、「独孤伽羅~皇后の願い~」のシュー・ジェンシーが一番の若手宇文護となるようです。今後はどんなタイプの宇文護が描かれ、どんな俳優が演じるかも楽しみなキャラクターとなりそうですね!

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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