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【BLiH配信記念特集】コラム:台湾BLドラマが好き!~前編 BL文化の流行から「HIStory」まで~

広辞苑によればBL(ボーイズラブ)とは「男性同士の恋愛を描く小説・漫画などのジャンル」。日本発祥のジャンルといってよく、日本文化に親しんできた台湾では、今や日本同様に一大人気ジャンルとなっています。そこに至るまでの歴史を簡単に振り返ってみましょう。


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70〜80年代の台湾では政府の規制により、日本の漫画やアニメの輸入は難しく、その多くが海賊版で親しまれていました。その状況が変わったのは1987年に戒厳令が解除されてから。1992年に著作権法が改正され、1993年に日本製品の輸入が解禁されると、日本の漫画、アニメ、ドラマなどが正規に数多く台湾に輸入されるようになりました。

こうして日本のコンテンツが正式に流通するようになると、メジャーな作品だけでなく幅広いジャンルのものが台湾に紹介されはじめました。吉祥寺企画のBL漫画、角川ルビー文庫のBL小説なども翻訳出版されて人気を博すようになったのです。こうして00年代に入ると日本文化を愛好する若者たち、哈日族(ハーリーズー)が増えると同時に、BL作品を楽しむ女性層も急速に増えていきました。

そして現在、台湾ではBLが日本と同じようにメジャーなジャンルへと成長し、現地の小説家によるBL小説も大人気。「Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀」の二次創作など台湾ならではの同人誌も増え、コミケではBLコーナーが活況を呈しています。

一方で、台湾はLGBTQをテーマにした文芸作品の名作が多いという定評もあります。

映画ではベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞したアン・リー(李安)監督の『ウェディング・バンケット』(93)、ヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞したツァイ・ミンリャン(蔡明亮)監督の『愛情萬歳』(94)のほか、『藍色夏恋』(02)、『僕の恋、彼の秘密』(04)、『花蓮の夏』(06)、『Tattoo 刺青』(08)などが高い評価を受けています。

また、ドラマでは台湾を代表する作家・白先勇の小説「孽子」が原作の「ニエズ~Crystal Boys」(03)が台湾金鐘奨で長編ドラマ番組賞ほか全6部門を獲得。さらに、近年も『GF*BF』(12)『先に愛した人』(18)『君の心に刻んだ名前』(20)といった映画がヒットしています。

◆『君の心に刻んだ名前』予告編(大阪アジアン映画祭)


実際、台湾はアジアの中でもLGBTQに対して比較的オープンな社会であることで知られています。

毎年、「台湾同志遊行(Taiwan LGBT Pride)」というパレードが開催され、これはアジアで最大のLGBTQイベントとなっています。そして、現在アジアで唯一、同性結婚が合法的に認められているのが台湾です。

このような文化的背景のある台湾で、”BLドラマ”というアプローチで2017年に登場したのがWebドラマ・シリーズ「HIStory」です。その前年に制作された中国の「ハイロイン~上瘾~」、タイの「SOTUS/ソータス」などに続いて世に出たこのシリーズこそ、現在の台湾BLドラマブームの先駆けとなったと言っていいでしょう。

「HIStory」の第1弾はファンタジーもの「マイ・ヒーロー」、青春もの「離れて、離さないで」、タイムリープもの「ボクの悪魔」といった3編からなるオムニバスでした。もともと台湾ドラマは胸キュン満載のラブコメに定評がありましたが、このシリーズもポップで楽しい演出とピュアなストーリーが話題となり、日本でも多くのファンの心を掴みました。

◆HIStory予告編 『マイ・ヒーロー』『離れて、離さないで』『ボクの悪魔』


その後、「HIStory」第2弾からは複数話のシリーズとなり、バツイチ教授と大学生のロマンスを描く「HIStory2 是非~ボクと教授」、高校バレー部が舞台の青春の恋を描く「HIStory2 越界~君にアタック!」が人気となり、第3弾では高校生のピュアな恋から始まる「HIStory3 那一天~あの日」、刑事とヤクザが主人公のクライムドラマ「HIStory3 圏套~ラブ・トラップ」と、新鮮な作風の作品も登場しました。

また、今年リリースの第4弾「HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You」は、BLが好きな女性のハートを射止めようとBLが好きなフリをした男性が同僚の男性を本気で好きになってしまうという、笑いと胸キュンいっぱいのラブコメとなっています。

◆「HIStory4 隣のきみに恋して~Close to You」予告編①


なお、台湾BLドラマの特色といえば、有名俳優・監督が参加している作品が少なくないことも挙げられます。

例えば「2020 Because Of You~君を愛してるから」は『Tattoo 刺青』の監督ゼロ・チョウ(周美玲)の作品。「We Best Love 永遠の1位/2位の反撃」はSpeXial出身のリン・ズーホン(林子閎)、『花蓮の夏』のレイ・チャン(張睿家)らが出演し、「反逆の季節」でピーター・ホー(何潤東)とともに台湾金鐘奨の最優秀監督賞を受賞したジャン・ルイジー(姜瑞智)がメガホンをとっています。

そして、新作ドラマ「Be Loved in House 約・定~I Do」も「飛魚高校生」のアーロン・ライ(賴東賢)、元noovyのハンク・ワン(王碩瀚)と、人気俳優たちが主演することで話題。この新作ドラマについては後編で詳しくご紹介します!


後編:新作ドラマ「Be Loved in House 約・定~I Do」 はこちら

\「Be Loved in House 約・定~I Do」特集一覧はこちら/

TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック「最新!中国時代劇ドラマガイド 2021」が絶賛発売中です。


≪「Be Loved in House 約・定~I Do」配信概要≫

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23分×12話
「Be Loved in House 約・定~I Do」製作委員会(日本):エスピーオー、ビデオマーケット、Rakuten TV
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