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「夢幻の桃花」から考える、「夢」の意味と力|中国時代劇トリビア#65

日本でもロングヒット中の桃花シリーズ第3弾「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」。人気キャラクター白鳳九と東華帝君の物語を描いたこのドラマでは、おなじみの天界や人間界に加え、夢の世界で二人の新たな運命のステージが展開されていきます。

今回は、このドラマのタイトルにもある“夢”にスポットをあてて、探っていきたいと思います!

 「夢幻の桃花」場面写真
「夢幻の桃花~三生三世枕上書~」より。白鳳九は、比翼鳥族の亡き公主・阿蘭若が主人公となっている夢の世界にとらわれてしまう…。


時代劇の中で、占いや占い師(ペテン師率髙し!)が登場する場面を目にすることがあると思います。中国の占いは「亀甲占い」や「易学」などその種類は多様で、夢占いもその一つに挙げられます。孔子も夢から多くのインスピレーションを得ていたと言われており、周王朝には王の夢を占う「占夢官」がいて、夢の内容に加えて、夢を見た日付の干支を重視して占いを行ないました。

夢と干支というつながりでは、恐ろしい予知夢を見てしまうヒロインを描いた人気ドラマ「太陽と月の秘密~離人心上~」でも、夢と干支が深~く関係していましたね!

「太陽と月の秘密」場面写真
「太陽と月の秘密~離人心上~」より。予知夢を見てしまうヒロインは、予知した出来事を変えようとすると、代償として干支の動物に変身してしまう。


古代中国の夢占いは、村の長老や、集団の中の経験値のあるリーダーたち(あるいは祈祷師)らが判断を下す迷信的なものとして信じられていましたが、占夢官らは夢の精神的、心理的原因に注目し、そのメカニズムを分析していきました。

漢代に編集された「周礼」に記されている占夢官は、暦の干支、日・月・星の動きなどと照らし合わせて6つにカテゴリー分けした夢の吉凶を占いました。この6つの夢とは、

●正夢…平静・平常。夢見たあとには覚えていないような夢。
●噩夢(がくむ)…驚き、おののくような悪夢。
●思夢…目が覚めているときに思ったことが出てきた夢。
●喜夢…嬉しいことが出てきた夢。
●懼夢(くむ)…恐ろしかったことが出てくる夢。
●寤夢(ごむ)…自分では目覚めていると思っていながら実は夢を見ている。白昼夢。


こうした分析からも分かるように、占夢官たちは“夢”は感動してもしなくても見るものであって、必ずある心理状態を表し、特定の心理状態と関連していることを捉えていきました。なぜならば、占夢官の占いは占星術などと同様に、予言した通りの結果を得る必要があり、色々な夢の心理的特徴や心理的原因にも注意を払わねばならなかったからなのです。

こうして占夢官たちによって集められた夢のデータは、のちに「占夢書」(解夢書)という書にまとめられ、夢占いの手引書となっていきます。

では、その内容はいったいどんなものだったのでしょうか?

中国文化御専門の先生が、古代中国の王朝、周の周公旦がまとめたとされる『周公解夢全書』から抜粋されたという、鏡にまつわる面白い項目を紹介された内容によると……

・頭を櫛で梳かす夢を見たら、全てバラバラになる兆し。
・白髪になる夢を見たら、長生きの兆し。
・結い上げた髪の夢は万事吉。
・鏡の夢は、中が明るければ吉、暗ければ凶。
・鏡が割れる夢をみたら、物事がバラバラになる兆し。
・体から虫が出てくる夢は大吉。


などの事例があるそう。見覚えのある“夢”はありましたか?心のどこかに何かがひっかかる…そんな面白さがある夢解説ですね!


後編につづきます

【参考文献】
著者:劉文英  訳者:湯浅邦弘
書名:『中国の夢判断』 
出版社:東方書店

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。『台湾エンタメパラダイス』『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)にて執筆記事掲載中。

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