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金馬奨ってどんな賞?《後編》2023年の注目ポイント|台湾エンタメ通信

今週末、いよいよ台湾が誇る金馬奨(ゴールデン・ホース・アワード/GHA)の授賞式が行われますね。そこで今回は、金馬奨とはどんな賞かについて、ざっくりとご紹介しましょう。

なお金馬奨の授賞式は、コンペティション作品のほか世界の話題作を上映する台北金馬影展(台北金馬映画祭/TGHFF)のクライマックスを飾るイベントです。ここでは、主に金馬奨を取り上げることとし、台北金馬影展とは区別することとします。

金馬奨ってどんな賞?《前編》
歴史・応募規定・賞の種類・審査員など

前編では、金馬奨の歴史・応募規定・賞の種類・審査員など、ざっくりご紹介。




2023年の注目ポイント

今年最も大きな話題となっているのは、やはり主演男優賞の面々ではないでしょうか。『僕と幽霊が家族になった件』から揃って選ばれたグレッグ・ハン(許光漢)リン・ボーホン(林柏宏)のほか、『疫起/エピデミック』のワン・ポーチエ(王柏傑)、『富都青年』のウー・カンレン(呉慷仁)、『周処除三害』のイーサン・ルアン(阮経天)は皆、日本人にとってもなじみがある台湾ドラマで活躍する顔ぶれです。

長らく中国を拠点に活躍していたイーサン・ルアンにとっては『モンガに散る』以来13年ぶりの金馬奨ですし、実力派として知られ多数受賞歴がありながらも、なぜか金馬奨にだけ縁のなかったウー・カンレンなど、誰を取っても話題性があり、この中で誰が23年の影帝になるのかネット上でも熱く議論されています


金馬奨の最高峰ともいえる長編劇映画賞作品も外せません。中でも大きな注目を浴びているのは、オープニング作品の一つでもある『五月雪』です。1963年にマレーシアで起きた5月13日事件を背景に、多民族社会の歴史の爪痕や二世代にわたる女性たちの物語を描いた『五月雪』は、長編劇映画賞、監督賞ほか9部門に最多ノミネートされています。


そのほか、上半期の台湾映画興行収入トップを記録した『僕と幽霊が家族になった件』、2003年に起きたSARS感染による病院封鎖をモチーフとした『疫起/エピデミック』は、『五月雪』に続いて8部門ノミネート。予期せぬ妊娠を期に人生を見つめ直す学生を描いた『石門』は、中国で活躍する日本人の大塚竜治が妻のホアン・ジー(黄驥)と共同で手掛けた作品で、大塚は日本人として初めて監督賞にもノミネートされています。また、ミュージシャン片山涼太による「一路以來」が、マレーシア映画『富都青年』のオリジナル主題歌としてノミネートされるなど、日本人勢も大健闘しています。


ちなみに、中国によるボイコットの影響は依然ありますが、それでも昨年から変化が見られ、今年は長編劇映画の『年少日記』『白日之下』、短編劇映画の『裊裊』『直到我看見彼岸』、アン・ホイ(許鞍華)のドキュメンタリー映画『詩』など、特に香港人の監督や俳優による作品が顕著に増えました。また、『青春(春)』のワン・ビン(王兵)や『另一面鏡子裡的夢中之夢』のジュー・ユンイー(朱云逸)らドキュメンタリー監督や、『菠蘿,鳳梨』で主演女優賞ノミネートのフー・リン(胡伶)など、中国人も徐々に金馬奨に戻り始めているようです

ドキュメンタリー映画賞には、ワン・ビンの『青春(春)』やアン・ホイの『詩』をはじめ、マレーシア出身のツァイ・ミンリャン(蔡明亮)の『何處』、ミャンマー出身ミディ・ジー(趙德胤)の『診所』がノミネートされており、台湾からはリン・ジェンシェン(林正盛)の『撼山河 撼向世界』のみという多国籍ぶり。『五月雪』のチャン・ジーアン(張吉安)もマレーシア出身ですし、近年は特に東南アジア人の活躍も目立ちますね。金馬奨は今後、中華圏の枠にとどまらず、華語作品の映画賞としてさらに大きく発展していくのかもしれません

また、特別賞の一つである生涯功労賞には、往年のトップスター、ブリジット・リン(林青霞)が選ばれており、久しぶりのメディア露出に期待が高まっています。


金馬奨は、以下のURLからオンライン視聴可能です。

2023年11月25日(土)
18:20〜レッドカーペッド
https://www.youtube.com/watch?v=dgFLI2dzXho


20:00〜授賞式
https://www.youtube.com/watch?v=NGiG6gTyzco


\金馬奨の最新情報を日本語で知りたい方は、サイト「アジアンパラダイス」がおすすめ/

\いままでの「台湾エンタメ通信」はこちら/

Text:二瓶里美
編集者、ライター。2014年より台湾在住。中華圏のエンターテインメント誌、旅行情報誌、中国語教材などの執筆・編集に携わる。2020年5月、張克柔(字幕翻訳家・通訳者)との共著『日本人が知りたい台湾人の当たり前 台湾華語リーディング』(三修社)を上梓。

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