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世界的に鑑賞不可能と思われていた幻の陰鬱映画『ダーティハンター』本予告が解禁。女性の断末魔のような絶叫と、人形のようにぶら下げられた人間への射撃という強烈なシーンから始まり、突如流れる似つかわしくないのどかな音楽。



この度、本予告が解禁。女性の断末魔のような絶叫と、人形のようにぶら下げられた人間への射撃という強烈なシーンから始まり、
突如流れる似つかわしくないのどかな音楽。ベトナム帰還兵のケン、グレッグ、アートの3人は社会的成功者としての生活を満喫、
絵に描いたような幸せを手に入れていたが、とある週末、彼らはあるところに出発する。途中でカップルを誘拐し、
彼らに「君たちはお客さまだ」と伝えながら、酒池肉林の異様な状態で盛り上がる3人。
恋人(コーネリア・シャープ)をケン(ピーター・フォンダ)に誘惑される男(アルベルト・デ・メンドーサ)の眼差しがなんとも物悲しい。
だが、宴は終わり、彼らの<レジャー>が始まる。
3人が誰にも明かせない趣味、その趣味とは<人間狩り>だったのだ。

人間ハンターのひとり、ケンを演じるのは、その後「本物の悪人を演じるのは初めてだった」と振り返る名優、ピーター・フォンダ。
ケンの友人、グレッグを演じるのは『バーバレラ』(67)のジョン・フィリップ・ロー、
アートを演じるのは『スケアクロウ』(73)のリチャード・リンチ。
文字どおり人を人とも思わない、完全に倫理観が欠落した男たちにふんする3人は、揃ってキャリア最恐といっても過言ではない怪演だ。
そんな彼らに追われ、行き場のない無人島を逃げ回るカップルを演じるのは『セルピコ』(73)のコーネリア・シャープと アルゼンチン映画批評家協会賞を受賞している『ホラー・エクスプレス/ゾンビ特急地獄行』(72)のアルベルト・デ・メンドーサ。
予告は「この国の狂気は、人間狩りに行き着いた。」というキャッチコピーで締めくくられるが、そのあと、ケンのもとに新たな人影が…。

公開から50年、めまぐるしい速度でアメリカ、世界全体が動き続け、人間性やモラルも問われ続ける現代に復活する『ダーティハンター』
劇場にてぜひ目撃ください。



デヴィッド・オズボーンによる小説「OPEN SEASON」を、『ミニミニ大作戦』(69)などで知られるイギリスの鬼才・ピーター・コリンソン監督、
『イージー★ライダー』(69)のピーター・フォンダ主演で映画化した恐怖のサスペンス・アクションが『ダーティハンター』だ。
日本では1975年の劇場公開と以後の数回のテレビ放送以降、ソフト化されることもなく、世界的にも鑑賞困難だった幻の映画が、
ついに半世紀の時を経て劇場に復活する。<人間狩り>という、数々のホラー・サバイバルアクション映画で扱われてきた設定ながら、
バトルロワイヤル的な娯楽性は排し、人間性や道徳性を完全に失った男たちの異常な姿をとおして、人間そのものとアメリカの闇を浮き彫りにする
本作の鮮烈さは現在も失われていない。
サム・ペキンパー『わらの犬』(71)とジョン・ブアマン『脱出』(72)を合体させたような陰惨さ、『ソルジャー・ボーイ』(72)、
『タクシードライバー』(76)、『ローリング・サンダー』(77)などのベトナム帰還兵の苦悩を描く作品群との類似性を持ちながらも、
スペイン映画である本作はそのどの作品とも異なる質感を放っている。
また、冒頭から最後まで、希望を裏切る出来事が次々と続くいっさいの爽快感のなさ、
ハンターたちが<獲物>を精神的に追い詰めていく長い描写など、神経がすり減るトラウマ映画の傑作ともいえる。

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