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7月11日(金)・7月13日(日)・7月14日(月)・7月16日(水)  ≪容赦なき大巨匠ウィリアム・フリードキン 3 作上映≫

恐怖の報酬【オリジナル完全版】

202387日、『フレンチ・コネクション』(71)でアカデミー5部門受賞、『エクソシスト』(73)で全世界にオカルト・ブームを巻き起こした巨匠ウィリアム・フリードキン監督が亡くなった。そのフリードキンが1コマも修正したいと思う箇所がないと発言、そのキャリア史上最も心血を注ぎ、コッポラの『地獄の黙示録』(79)と双璧を成すほどの映画作家の狂気と執念を刻んだ渾身の一作、自身の最高傑作と認めた作品が、2018年に40年ぶりに日本再上陸を果たし大ヒットとなった、手に汗握る緊張と興奮のサスペンス巨篇『恐怖の報酬』(77)だ。仏映画の名作、H=G・クルーゾー監督の『恐怖の報酬』(53)のリメイクにユニバーサルとパラマウントの2大メジャー・スタジオが破格の2000万ドル(現在の100億円相当)の巨費を共同出資、ロケは3大陸5ヶ国に及び、2年を超える製作期間を費やした、人生の底から這い上がるために300キロにわたる一触即発のニトログリセリン運搬に命を賭けた男たちの運命を冷酷非情なリアリズムで描き切った超大作。だが『恐怖の報酬』は不遇を極めた作品でもあった。19776月に全米初公開となるも、空前の『スター・ウォーズ』ブームの直撃を受け興行惨敗。日本をはじめ北米以外では、監督に無断で約30分カット、再編集され、もはや物語も異なってしまっていた92分の【短縮版】が配給され、さらには2大メジャー共同出資が原因で権利者不明状態に陥り、以後長きにわたって全世界的に上映不可に。しかし、そんな状況に業を煮やしたフリードキンは2011年、自らスタジオ2社を提訴し権利者を特定、2013年に121分【オリジナル完全版】のデジタルリマスターをヴェネツィア映画祭でプレミア上映後、2014LA2015年パリ、2016年カンヌ映画祭、2017年ロンドンで上映、欧米各地で再評価の嵐を巻き起こした。そして2018年、再上陸が望まれていた日本において、「単なる小規模なリバイバル上映であれば再公開を望まない」「再公開するならば<とてつもなく意義深いもの>でなければ興味はない」と語っていたフリードキンは自ら複雑な権利処理の陣頭指揮を執り、ポスターや予告編、パンフレットも自ら監修、日本での約40年ぶりの再公開を実現した。結果、『恐怖の報酬』は、【オリジナル完全版】として初めて真の姿で日本のスクリーンに登場、メイン館のシネマート新宿では9週間という大ロングラン興行を記録。シネマート新宿美術部による常軌を逸した吊り橋のディスプレイや、往年のファンから初見の観客までが本作に衝撃を受けてSNSを中心に溢れた反応の数々。フリードキンはこのことに対し深く感動していた。だが、それよりもアカデミー賞受賞監督であり、映画史上の歴代ベスト級の大ヒット作を放った巨匠が日本での公開に本気で向き合っていた事実に驚きと感謝入り混じる衝撃を受けていたのは配給スタッフであり劇場スタッフだった。また映画の公式SNSで流れたフリードキン監督の日本へのビデオメッセージも多くの人々を驚かせた。

*フリードキンに無断で短縮・再編集された92分の【短縮版】についてフリードキンは存在を認めておらず、観たこともなかった。

その【短縮版】を作った配給担当者はその事実発覚と他の悪事もあり、その後投獄された。

あらすじ:

南米奥地の油井で大火災が発生。祖国を追われ、その地に流れてきた4人の犯罪者は、ひとり1万ドルという「報酬」と引き換えに、わずかな衝撃でも大爆発を起こす消火用ニトログリセリン運搬を引き受ける。2台のトラックに分乗した男たちは、火災現場まで道なき道を300キロ、ジャングルの奥へと進んでいくが、その先に待ち受ける彼らの運命とは―。

予告編

監督

ウィリアム・フリードキン

キャスト

スキャンロン“ドミンゲス”・・・・・・・・・ロイ・シャイダー
ヴィクトル・マンゾン“セラーノ”・・・・・・ブルーノ・クレメル
ニーロ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フランシスコ・ラバル
カッセム “マルティネス”・・・・・・・・・アミドゥ
コーレット・・・・・・・・・・・・・・・・・ラモン・ビエリ

スタッフ

●脚本:ウォロン・グリーン
●原作「恐怖の報酬」ジョルジュ・アルノー
●撮影:ジョン・M・スティーブンス、ディック・ブッシュ
●美術デザイン:ジョン・ボックス
●編集・製作補:バド・スミス
●音楽作曲・演奏:タンジェリン・ドリーム

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