いよいよ12月8日(木)で終了。
未来惑星ザルドス
不老不死の世界はユートピアなのか? 巨匠ブアマン×初代「007」ショーン・コネリーの先鋭的SF
『未来惑星ザルドス』(1974)は、前作『脱出』(1972)が大ヒットし、アカデミー作品賞、監督賞候補となった英国の巨匠ジョン・ブアマンが、自ら製作・脚本も兼任、スタジオからの制約を一切受けず、その驚異的なイマジネーションを余すことなく解き放った結果、人類の恐るべき未来を予見してしまったとてつもないSF巨篇。その壮大かつ想像を絶するヴィジョンは、後のサブカルチャーとクリエイターたちにトラウマ級の影響と深い爪痕を遺した。
主演は、初代「007」のショーン・コネリー。弁髪、胸毛に赤ふんどしー半裸で大地を駆けるその雄姿によって、それまでのボンドのイメージを一新した。共演は『愛の嵐』(74)で一世を風靡し、最近でも『DUNE/デューン 砂の惑星』などで活躍中のシャーロット・ランプリング。性を超越したクールな美貌は、まさにキャリア絶頂の美しさだ。
映画化に際し、【生と死】【神と人間】【愛と性】【自然と文明】など、自作『2001年宇宙の旅』にも通じる本作のテーマに興味を抱いたブアマンの友人、スタンリー・キューブリック監督は、ノンクレジットでテクニカル・アドバイザーとして協力。撮影に『2001年~』の名カメラマン、ジェフリー・アンスワースを抜擢するなど、さまざまな便宜を図ったという。憤怒の形相で地上に君臨する巨大神像ザルドスの強烈造形、合わせ鏡の無限反射、サイケデリックな投射イメージ、『テネット』でも多用された逆転撮影など、ブアマンとアンスワースが映像表現の原初に立ち返ったトリック撮影も本作の大きな見どころだ。
だが、宗教批判と神殺し、そして、永遠の生よりも死を讃える先鋭的メッセージを突きつけるこの作品は、初公開時、一部批評家とわずかな観客を除き、まったく理解されなかった。それから約半世紀、今も評価は揺れ続け、『ザルドス』は世界中で論議が絶えないSF映画史上屈指の問題作として孤高の地位を保っている。
地球温暖化と異常気象、感染症の蔓延、終わらない戦争、ヘイトと差別、激しい格差による社会の分断、そして政治と宗教が癒着した全体主義―すでにディストピアと化した21世紀に生きる我々の眼に、23世紀のユートピアはどのように映るだろうか。
◆作品評
今後何年にもわたり、映画ファンたちの間で議論されるだろう―LAタイムズ紙(1974)
独創的かつ挑発的。ブアマンの最も過小評価されている作品―シカゴ・リーダー紙(1985)
ビジュアルも鮮烈なブアマンの最高傑作。再評価に値する―チャンネル4(2019)
不老不死のユートピアに放たれた撲滅戦士—男は反逆者か、解放者か
【あらすじ】
2293年、人類は不老不死の社会を実現。特権階級の永遠人〈エターナルズ〉たちは、外界から隔絶された透明ドーム、〈ボルテックス〉の中で平和で優雅な毎日を過ごしていた。彼らは空飛ぶ巨大神像ザルドスを建立、それを神と崇める撲滅戦士〈エクスターミネーターズ〉たちを操り、荒廃した外界に棲む獣人〈ブルータルズ〉たちの搾取と殺戮を続けている。だがある日、撲滅戦士のリーダー、ゼッド(ショーン・コネリー)は、着陸したザルドスの口内に身を隠し、ドーム内に潜入した。ザルドス=神の忠実な下僕だったはずのゼッドの目的とは一体?

監督
ジョン・ブアマン
キャスト
ショーン・コネリー、シャーロット・ランプリング、セーラ・、ケステルマン、ジョン・アルダートン、サリー・アン・ニュートン、ナイオール・バギー
スタッフ
●脚本・製作・監督:ジョン・ブアマン | 撮影:ジェフリー・アンスワース | 美術デザイン:アンソニー・プラット | 使用曲:ベートーヴェン交響曲第7番、第2楽章
物販情報
南海別冊 未来惑星ザルドスとジョン・ブアマンの世界 1000円
