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韓国に関するイベントのレポートをお届けします。

【イベントレポ】韓国ドラマセレクション2018 in 東京「クリミナル・マインド:KOREA」上映&トーク#2

駐日韓国文化院が韓国コンテンツ振興院との共同で行っている人気シリーズ企画「韓国ドラマセレクション in 東京」。今年も韓国文化院ハンマダンホールで開催され、7月30日(月)第2部ではイ・ジュンギ主演作「クリミナル・マインド:KOREA」第1話が上映された。上映後には「韓!米!日!リメイクドラマのいい関係」をテーマに、お馴染み韓国大衆文化ジャーナリストの古家正亨さんが、日本を代表する脚本家の尾崎将也さん(日本版「シグナル」脚本)と西田征史さん(日本版「魔王」脚本)をお迎えし、リメイクドラマについてのトークが行われた。

#1:2018.8.6 公開
#2:2018.8.7 公開

駐日韓国文化院「韓国ドラマセレクション in 東京」 https://www.koreanculture.jp/info_news_view.php?number=5793


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―会場からの質問コーナー

質問者1  韓国ドラマだと最初の頃には伏線があったのに、それを回収しないで終わってしまうことがあります。そういうのを見ると、視聴者の意見を取り入れて変えちゃったんだろうな、と思うのですが、お二人は「絶対この線で行こうと思っていたのに、途中で無理やり我慢して変えた」というご経験はありますか?

尾崎将也さん(以下、尾崎)  路線まで変わってしまった、という事は無いですね。

古家正亨さん(以下、古家)  設定的に変えざるを得なかったことはありますか?

尾崎  出演者の方が倒れてしまったりだとかで、旅に出てもらったり...。(会場笑)それはもう不可抗力ですので。

古家  笑!それはもう旅に出ざるを得なかった状況になるわけですからね。西田さんは?

西田征史さん(以下、西田)  オリジナル作品を書いていた時に、自分としては前フリのつもりで書いていたシーンが編集で無くなってしまった事はありますね。ただ、それが前フリだということが自分の頭の中にしかなかったので。そういう理由で変えた、という事はありますけど、視聴者の反応で大きく変わった、という経験は僕自身は無いです。

古家  もともと日本の場合、事前制作の割合が大きいですからね。韓国の場合、明日放送で今日搬入という事があまりにも多すぎるという事もあるんでしょう。




質問者2  西田さんの作品をよく拝見させていただいているんですが、もし「とと姉ちゃん」が韓国にリメイクされたら、どんなアレンジをされると思いますか?

西田  やっぱり、恋人が兄貴だった...とか、そういう運命的な何かが足されるんじゃないですかね。「兄さん...」みたいな。(会場爆笑)156話の長い作品なので、そういううねりは必要になってくるかもしれません。

古家  笑!たしかに韓国特有の設定ってありますよね。

西田  2個3個そういう設定を持ってきますよね。ココとココも?!みたいな。

古家  こっちでも繋がって、あっちでも繋がって...。(笑)

西田  え!?あそこも!?みたいな。
(会場笑)




質問者3  「魔王」の韓国版も日本版も拝見し、とても面白かったです。先ほど、日本版にされるときに尺が違うということでカットするというお話がありましたが、カットされるのはラブシーンが多いですか?俳優さんのファンやラブストーリーがお好きな方も多いので、ラブシーンは残して、ストーリー部分をカットされたりするのでしょうか?私自身はストーリー重視でやってほしいのですが、俳優さんのファンの方も多いので、そういうファンの方への気遣いとかもされますか?

西田  「魔王」は大野智君と生田斗真君のW主演の作品だったんですが、彼らが一人の女性を取り合う話だったので恋愛部分の分量に関して言うと、原作のままだったと思います。今憶えているのは、第1話で「大野君のシャワーシーンを入れましょう」とプロデューサーに言われました。(笑)
(会場笑)

古家  笑!それもある種の不可抗力なんですかね?

西田  そうなんでしょうね。それもある種ツカミとしてね。

質問者3  イ・ジュンギさんの最新作「無法弁護士」も間もなくMnetさんで放送されますが、ひょっとしたら1話にシャワーシーンがあるかもしれない、っていうことですね?(笑)

西田  もし出てきたら「あ、プロデューサーが言ったな」と思って頂けると。

質問者3  そういったシャワーシーンは個人的には入れてほしくないんですが、期待されてる方もいらっしゃると思うので...。
(会場笑)

古家  尾崎さんはプロデューサーから「こういうシーンを入れてほしい」と言われることはありますか?

尾崎  それはもう日常茶飯事。
(会場笑)

古家  例えば、キャラを生かすシーンとかではなく、ストーリーには影響しないけど、主人公を良く見せることが目的のシーン。シャワーシーンもいわゆるそういったサービスカットじゃないですか。サービスカット的なものは普通にあるんですか?

尾崎  あまりエッチなものはテレビドラマでは出来ないので、男性が上半身裸になる方がやりやすいです。

古家  でも「只野仁」は結構セクシーなシーンもありますよね?

西田  あれも、今では難しいですよね?

尾崎  だんだん制限がかかってきましたね。去年今年と、「只野仁」はAbemaTVに移して放送されたんですが、そうすると制限が外れたんです。プロデューサーがすごい喜んじゃって。
(古家&会場爆笑)




古家  今AbemaTVの話が出ましたが、ネットフリックス然り、ネットの放送媒体でもオリジナル作品の制作がどんどん進んでいますよね。地上波では出来ないけどネットだったら出来るというのは、脚本家のお二人にとっては新しい可能性になるんですかね?

西田  その気はします。

尾崎  それはありますね。

古家  これまで描けなかったことが描けたりだとか?

西田  そうですね。言葉も、テーマも。

古家  今まではドラマは地上波で放送ということが当たり前だった事が、これからは変わっていくと思いますか?

西田  それはあると思います。



質問者4  日本のドラマ界で知らない人はいない程有名な脚本家お二人のお話をお伺いして、脚本家はストレスがたまるお仕事だなと思ったのですが、お二人独自のストレス解消法やリフレッシュ方法があればぜひ教えていただきたいです。

古家  西田さんと尾崎さんのファンミーティングみたいになってきましたね。
(会場笑)

西田  僕は運転するのが好きなので、運転しながら大声で歌うことですね。特に打ち合わせに行った帰りは。
(会場笑)

古家  ポイントは"打ち合わせに行った帰り"ですね。(笑)

西田  そうですね、その日の歌声は大きいかもしれません。(笑)

尾崎  僕は、仕事でのストレスは無いです。先ほど出た話でいうと、プロデューサーから一方的に言われて脚本家が仕方なく受け入れる、というニュアンスがあったかもしれませんが、言われたことを「わかりました」と受け止めて自分で咀嚼して書くわけですから。それはもう自分の作品なわけです。もし、どうしても嫌だったら「嫌だ」って言えば良いので。

「やれ」って言ってるプロデューサーと、「やだ」って言ってる脚本家が意見を闘わせて、「じゃあどうしましょうか?」っていう。A案とB案、どっちにするかと話しているうちにC案という新しいアイデアが出てくる場合もあります。必ず納得できる状態にしてから話し合いを終わるようにしているので、ストレスは無いです。




古家  ある種、神様みたいな...。尾崎さんは「やだ」って言うときはあるんですか?

尾崎  ありますよ。プロデューサーが「こうしたい」って言ったときに、「うーーーん」って言って。話し合いを終わらせない。
(会場笑)

古家  なるほど、ある種の尾崎さんからの圧力もあるわけですね。(笑)

西田  そういう場合は、無言でいくんですか?

尾崎  こちらに案があれば伝えますが、納得できない場合は「うーーーん」って言いますね。
(会場笑)

西田  その方法が一番いいかもしれないですね!そのうちに向こうが勝手に忖度して「じゃあ、やめます」となりそうな感じが。(笑)


質問者5  「クリミナル・マインド:KOREA」をご覧になった感想をぜひお伺いしたいです。古家さんの感想もぜひお願いします。

西田  僕はテンポが良くて面白いと思いました。2つほど気になった...というか知りたいのが、死体がゴミ箱から出てくるシーンでモザイクがかかっていましたよね?あれはどこからの規制なんですか?

古家  韓国って、刃物とか血とか手錠とかにモザイクをかけたりするんです。

西田  撮ってからモザイクかけるんですか?

古家  はい。撮ってから、オンエアのときにモザイクをかけるんですよ。

西田  という事は、モザイクをかけなくちゃいけないことが分かっているけど、撮っちゃうってことなんですね。

古家  そうなんです。(客席に向かって)韓国って意外とボカシ多いですよね?
(うなづく観客)

西田  あと、車のナンバープレートを見て携帯に電話をかけてくるじゃないですか。あれはどういう理屈なんですか?しかも警察という体でなく、ただ「ぶつけちゃって~」とかけていて。
(会場笑)




古家  韓国ドラマの面白さは、そういう不具合を見つけることです。
(会場爆笑)

西田  それ言い切ります!?(笑)

古家  はい、いろんな不具合が発生します。よーく見ていると、たまに上からマイクがヒューッと...。(笑)

西田  臨場感ですね。

古家  はい、臨場感です。
(会場笑)

尾崎  「シグナル」もそうなんですけど、なんで皆こんなに連続殺人の話が好きなんだろうって...。
(会場笑)

古家  僕はオリジナルも見て韓国版と比較したんですが、オリジナルに忠実なところと韓流的なところがあって。これから回を追っていくとわかると思うんですが、人間ドラマがねちっこいんです。日本のドラマって、繊細な心の動きは表現しなくてもわかるでしょ、というところがあるじゃないですか。「言いたい事わかるよね」と言う感じで。心と心の会話が、日本のドラマは多いと思うんです。韓国の場合は全部ストレートに表現するんですよね。

西田  それはセリフとかで表現するってことですか?

古家  セリフもですし、動きとか感情とか。よく泣くし笑うし怒る。その表現の仕方が韓流的だなって。

西田  それはアメリカ版とも違いましたか?

古家  違いますね。よりパッショナブルと言うんでしょうか。個人的には凄くそのことを感じました。(質問者にむかって)ご自身はご覧になっていかがでしたか?

質問者5  私はイ・ジュンギさんのファンなので、大画面で観られて幸せでした。
(会場笑&拍手)

古家  すばらしい!(笑)




質問者6  韓国と日本のドラマとの大きな違いは、CMの有無だと思うんです。CMが入らないから、トイレにも行けず、ずっと見ちゃうんです。今日の「クリミナル・マインド:KOREA」みたいに次が気になっちゃうドラマだと、DVDを借りてであろうが買ってであろうが、一晩中見てしまうこともあるんです。「今日は最後まで見ちゃえ!」みたいな。(会場大きくうなずく)
日本でもWOWOWとかだとCMが入っていなくて、韓国ドラマと同じように次がどんどん見たくなります。私は日本のドラマもCM無しだったら、より惹き込まれる作品が増えるんじゃないかと思うんです。
お二人はリメイクの際に、オリジナルの韓国と同じようにCM無しにしたくなることはありませんか?

古家  CMのことで僕も1つ知りたいんですが、脚本の段階からCMを入れるタイミングって決まっているんですか?

尾崎  決まっていないです。

西田  脚本打ち合わせの時に「ここでCMですかね」という事をおっしゃる方はいらっしゃいますけどね。

古家  では執筆される段階で、ここでCMが入る、という事を想定して執筆されているわけではないんですね。

西田  そういう場合は少ないと思います。たださっき質問者の方がおっしゃったように、CMが無いことで魅力が増すということはあると思いますが、僕は前提としてCMがあるものとして育ってきたので。CMなしというチャレンジが出来たら面白いなと思います。

尾崎  CMは視聴率に影響がでるんですよね。世間に発表される視聴率は平均値なんですけど、実際は1分ごとの数字が出ています。その1分ごとのグラフを見ると、必ずCMのところでちょっと下がって、また上がってきて、またCMで下がって。そういうのを散々見ているので、自分のドラマをオンエアで見ると、CMになった途端に「あーー視聴率が下がるーー」みたいな。
(会場笑)
ただ、スポンサーからいただくお金でドラマが作れているのは事実なので、これは悩ましいところですけど。確かにNHKやWOWOWのドラマの場合はCMの事を全く気にすることが無いので、その分気持ちが自由ではあります。




古家  今後、ネットの放送媒体を活用したドラマが増えてくると、より韓国に近いというか、より自由な作品作りが出来るのかもしれないですね。
韓国ドラマって最初と最後にCMが入って、間には一切入らないじゃないですか。韓国の人に聞くと、前後のCMは見ないんですって。そうするとスポンサーにとって何の意味も無いんです。だから最近、韓国のケーブルテレビも山場CMといって間にばんばんCMをいれてるんです。韓国のテレビ局も変わってきているんですよね。日本っぽく「この続きはどうなるのか!CMの後!」みたいにやってるんです。

西田  企業側としてはね、その方が良いと思いますけどね。

古家  地上波はまだ取り入れていませんけど、ケーブルテレビは完全にそうなりつつあります。



―今後のお二人のお仕事は?

古家  最後にお二人の最新作も含めて、今日お越しいただいた皆様にご挨拶を含めて一言いただければと思います。言える範囲でいいのですが、今後の作品については?

西田  まだ発表になっていないので、言えないのがあるんですけど...いま6つぐらい...。

古家  6つ!?そんなに同時進行するんですか?

西田  いま書いているのは1本なんですが、数年後の企画もあるので。あと、教育番組を仲間と手掛けていて。僕はもともとNHKで「シャキーン」という教育番組を立ち上げたんですが、そのNHKの友達と一緒に、自閉症や悩みを抱えた子ども達のクラスメイトに向けた番組を10月からやります。「u&i(ユーアンドアイ)」という番組なのですが、その脚本を書いています。

尾崎  僕も今やってるもので発表出来るものは無い状態なんですが、唯一あるとしたら、去年撮った映画『世界は今日から君のもの』が9月頃にWOWOWで放送される予定なのでぜひご覧ください。

古家  もし答えられなければ大丈夫なのですが、お二人の言えない仕事の中にリメイクはありますか?

尾崎  ないです。

西田  原作モノならありますが、リメイクは無いです。

古家  ...という事です。
(会場笑)




古家  今日は貴重なお話をありがとうございます。お話をお聞きして、ドラマの見方がちょっと変わったり、ますます日本のドラマが見たくなったという気持ちが僕はあります。どんな形でこれからお二人の作品に出会うことができるのか、これからのご活躍を期待しつつ、両国のドラマを応援して頂ければと思います。
今日は本当に貴重なお話を聞かせていただきました、西田征史さん、尾崎将也さん、どうもありがとうございました!

(会場拍手)


<おわり>

写真提供:ぴあ株式会社

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「クリミナル・マインド:KOREA」 DVD情報



〇セルDVD:全2BOX  各18,000円+税
DVD-BOX1)8月17日(金)発売 【映像特典】トークショー、台本読み合わせ、前半メイキングなど 【封入特典】ブックレット
DVD-BOX2)9月4日(火)発売  【映像特典】タイトル撮影風景、雑誌撮影風景、クランクアップ、後半メイキングなど 【封入特典】ブックレット   

〇レンタルDVD<スペシャルエディション版>:全16巻
vol.1~vol.8)好評レンタル中  / vol.9~vol.16)9月4日(火)レンタル開始

2017年|韓国|音声:オリジナル韓国語・字幕:日本語|発売・販売元:エスピーオー
公式サイト:http://www.cinemart.co.jp/dc/k/criminal/

c 2017 Buena Vista International, Inc. ? Produced by STUDIO DRAGON in association with ABC Studios ? Original U.S. series "CRIMINAL MINDS" created by JEFF DAVIS ? ? Original U.S. series "CRIMINAL MINDS" produced by ABC STUDIOS and CBS TELEVISION STUDIOS


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