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中国ドラマあるある問題 第一弾 ~なぜ本人の声ではないのか~

皆さま、最近日本で放送される中国ドラマが増えてきた気がしませんか?
最高の元カレ」は2月29日からDATV、「班淑伝奇」は3月30日からDATV、「風中の縁」は3月1日からLaLa TV、日本初放送「雲中歌~愛を奏でる~」は4月4日からLaLaTV、「女医明妃伝」は4月から衛星劇場、「琅?榜(ろうやぼう)-麒麟の才子、風雲起こす-」は4月からチャンネル銀河で放送されるほか、まだ情報解禁されていない作品もたくさんありますよ。

中国人として、日本の視聴者にも中国ドラマにハマっていただきまして、すごくうれしいです。でも、いつも多くのファンから、特に中国ドラマを初めて見た方から「何で人が飛んでいるの?」「何で本人の声じゃないの?」などの声がよく聞こえます。それでは、これから「中国ドラマのあるある問題」について説明させていただきたいと思います。

今回は「なぜ本人の声ではないのか」をテーマにして、少し説明しましょう。

「最高の元カレ」場面写真

①何で吹き替えをするのか?
ファンの皆さまは自分が好きな俳優の生の声を聴きたいですよね? アイドルお宅の私はとっても理解しています。好きなアイドルの為にドラマを見ているのに、なぜ吹き替えされるの?と不満を持ったりしますよね。

なぜ、中国ではいつも吹き替えされるかというと、それは中国の広電総局(総務省的な存在)によって、テレビで放送される番組は標準語(中国語では「普通語」と呼びます)でなければならないという規定があるからです。

国は領土が広く様々な方言があるので、「川を渡れば言葉が変わる」という諺があります。それは、日本語だとすると、関西弁と標準語の差というレベルではなく、沖縄弁と標準語の感覚です。

いつも周りの日本人に説明すると皆さん驚きますが、中国人同士でも、それぞれの方言でしゃべると外国人同士がしゃべるように全く通じないです。従って、中国政府はテレビで放送されたものは全国の国民に伝えるものとして、言語は標準語にすべきだと規定しました。

もちろん、中国人は学校で標準語を習いますが、方言があまりに強すぎて、なまりがあります。中国人はお互いの標準語を聞いてどこの出身だと当てることができます。

日本でいうと、ドラマの中ではさまざまな設定がありますが、それぞれ違うなまりがあるとその設定が崩れてしまいます。例えば、東京で育てられた幼い馴染みのカップルなのに、一人が東北なまりで、一人が関西なまりだとすると、「何、これ?」と思いますよね。

中国語の「沖縄なまり」「関西なまり」というと、やはり本土から離れる香港や台湾です。アクセントが異なったり、感嘆詞が違ったり、なまりが強かったりするので、最もわかりやすくなまりのある「標準語」で、中国では「港台弁」と呼ばれています。それが中国ドラマはいつも吹き替えされる理由です。

例①「マイ・サンシャイン~何以笙簫默~
香港出身のウォレス・チョン
「マイ・サンシャイン」場面写真

例②「星に誓う恋
台湾出身のジェリー・イェン
「星に誓う恋」場面写真


②画面と音声が不一致?
皆さまは、画面と音声がずれたので「不良品だ」と問い合わせたりしたことがありますか?

先ほど紹介した吹き替えが、画面と音声がずれてしまう理由の一つです。それなら、吹き替えをきちんとすればいいじゃないかということだけですよね。しかし、それができない時もあります。

中国においてドラマはすべて広電総局の厳しい審査を通らなければ放送できないです。放送されるまでには、ストーリーやセリフについていろいろな指導が入ります。最終回の審査に完成篇を提出し、その時セリフを変えるよう指導されると、撮りなおすことができない為、そのままの映像で吹き替えします。

例えば、弊社の「風中の縁」ですが、中国の歴史に実在した人物をもとに書かれた小説ですが、正史とあまりにも違ったので、審査に通らず、やむを得ず全部架空の話に吹き替え直しました。それ故、口と合わない時が多くあります。

「風中の縁」DVDジャケット

また、業界の制作会社の知り合いから聞いた話ですが、役者にも問題あるそうです。中国の役者は正規の演劇大学卒が多いですが、成績が悪い生徒、オーデションや別のルートでデビューする役者、ちゃんと演劇できない役者もいます。
芝居とは表情とセリフで表現するものですが、セリフがうまく言えない人もいます。セリフが得意ではない役を、吹き替えにしたことで、よりいいドラマを作れます。

業界内では「セリフが下手な役者リスト」が存在していますが、ここでは名前を挙げられませんので、ご理解ください。(ヒントは、なまりが強くない出身地ですが、いつも吹き替えを使っている俳優です。)

そして、どうせ編成の時吹き替えにするので、セリフを覚えずに適当にしゃべるひどい若手俳優もいるとたまに聞いたことがあります。

通常、作品が日本でリリースされる前に、厳しい映像チェックがあります。
私はいつも制作の同僚に「こことここの音声がずれたので制作会社に修正してもらって」と言われますが、「もともとこういうものです」とちょっと困った時もあります。

上述した事情以外、確かに「足音が合わない」とか、「楽器(琴など)の音が合わない」とか「言い訳」できないことがあります。
「てへへへ、中国人は大雑把だからなぁ」と照れながら説明しかできないですね。

確かに「弾いている楽器と音が絶対合わない」とは、中国人でもいつも揶揄している国産ドラマの「あるある」です。
正直、初めてアニメ版の「のだめカンタービレ」を見た時、「何でアニメなのに、まるで現場で演奏しているように、オーケストラの動きが音と合致しているんだ! さすが日本だなぁ!」と感心しました。


「なぜ時代劇の中の人が飛べるのか?」なども説明したいですが、ついしゃべりすぎてしまいましたので、また今後ご紹介しましょう。
また、もし気になる点や聞きたいところがあれば、ぜひ私に聞いてください。

中国ドラマあるある問題 第二弾~「なぜみんな飛んでいるの?」~はコチラ!

文:Jenny
エスピーオーの中国人社員Jennyが、中国・台湾のエンタメニュースや流行を紹介します。

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