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アジアをもっと好きになる

1月2日(土)&6日(水)

怪しい彼女

 「古希前のひよっこが!」「頭の毛をはいでやる!」口の悪さと頑固さでトラブルばかり起こしているマルスン(ナ・ムニ)は70歳のおばあちゃん。女手一つで育て上げ、国立大学の教授になった一人息子ヒョンチョル(ソン・ドンイル)が自慢だが、家では炊事や孫のジハ(ジニョン)たちの教育にまで口を出し、ヒョンチョルの嫁をすっかり困らせている。昔の奉公人パク氏(パク・イナン)だけは「お嬢さんは心の美しい人だ」とかばうが、やがて嫁はストレスのあまり入院。家族の間ではマルスンを介護施設に入れる話すら持ち上がる。一人さびしく街にたたずむマルスンが、ふと目にしたのは「青春写真館」という名の不思議な写真館だった。店先のオードリー・ヘプバーンの写真に吸い寄せられるようにして店へ入ったマルスンは、歌が上手く容姿も美しかった少女時代を振り返りながら、遺影のつもりで写真を撮影してもらうことになる。「私が50歳若くしてあげますよ」という店主の言葉によろこぶマルスン。そして、シャッターは切られた――。

 バスに飛び乗った彼女は、そこで車窓に写る自分の姿を見て驚愕する。そこには20歳の頃の麗しい容姿に戻った自分(シム・ウンギョン)がいた。「このまま死ぬのは可哀想だからと神様が機会をくれたんだ」と腹を決めたマルスンは、安否を心配する息子たちをよそに、髪型を変え、オシャレな服に着替えて、「オ・ドゥリ」としてパク氏の家で新しい下宿生活をスタートさせる。ある日、老人たちが集うシルバーカフェでカラオケを熱唱していたドゥリは、その歌声で音楽番組を制作するテレビ局のプロデューサー、スンウ(イ・ジヌク)や孫のジハたちの心をたちまちつかんでしまう。ボーカルが抜けたジハのアマチュアバンド「半地下バンド」に誘われ、かわいい孫が不憫でつい引き受けてしまうドゥリ。「歌は耳だけじゃなくて心を揺さぶるもんだ、ろくでなし!」と発破をかける彼女のもと、バンドは聴く人の心をとらえていく。そして、スンウがプロデュースする音楽番組の新人紹介コーナーに、デビュー前にもかかわらず出演することになった。

 一方、ドゥリの部屋で入れ歯を見つけたパク氏に詰め寄られ、ドゥリは仕方なく彼だけに自分がマルスンだと告白する。パク氏に手紙を託し、「心配するな。自分の思いどおりに生きてみたい」と息子たち家族にメッセージを伝えるドゥリ。遂に音楽番組への出演を果たした彼女は、これまで人生で経験してきたすべての思いを歌に乗せ、検索ランキング1位になるほどの大きな反響を巻き起こす。気が付けば、スンウに対するひそかな恋心も芽生えていた。初めて自分が望んだ人生を生きている。そんな実感にあふれたドゥリは、周囲の人たちにも夢や希望を与えていくが、その満ち足りた日々は長く続かなかった――。

 

監督

ファン・ドンヒョク

キャスト

シム・ウンギョン/ナ・ムニ/パク・イナン/ソン・ドンイル
2014年/125分/韓国

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