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【私の履歴書・延 智美(ヨン・ジミ)】第7回 20年ぶりの日本、そしてK-POP


私の履歴書~Profile No.2~

「通訳は裏方の仕事だから、私が表に出るなんて!」と、恐縮されていた延さん。しかし、いざインタビューが始まると、通訳をされているのは勿体ないほどの滑らかな語り口!凡人には決して経験できない延さんの半生に、身を乗り出して聴き入ってしまいました。延さんのインタビュー、必見です。

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韓流ブーム以降、仕事で日本に来る機会が増えるようなりました。金浦-羽田便も出来て、地方感覚で頻繁に行き来しているうちに、ふつふつと日本で仕事をしてみたいという気持ちが芽生えてきたんです。心の声に従って、トータル20年以上にわたる韓国生活に一区切りつけて、2010年1月に日本に戻ってきました。そうしたら、まるで待っていてくれたかのように、日本での怒涛のKPOPブームがおきたんです。なにかエンタメの神様に引き寄せられたような、不思議な気持ちがしましたね。そしてKARA、2PMなどが日本デビューした時から、通訳としてかかわることになります。

ブームの初期は、音楽番組やバラエティーなどにKPOPアイドルたちはひっぱりだこだったので、プロモーションで来日すると、ひたすらテレビ局をはしごするスケジュールが組まれていました。通訳という裏方の職業で、あれほど連日テレビに顔を出すことになるとは思ってもみませんでしたね(笑)。文化的な交流が全くなかった私の子供時代を考えると、日本のテレビにごく自然に韓国のアイドルが出ている状況に立ち会いながら、まさに隔世の感がありました。

韓流とKPOPの大きな違いは、ファンの年齢層が圧倒的に若いということですよね。特にコンサート会場で通訳をしていると、アーティストがノリと勢いで話をすることもあるのですが、それをあまり堅苦しくならないように、雰囲気を壊さないように訳すのにいつも苦心しています。例えば、アーティストがタメ語で話している場合は、そのニュアンスを生かすようにするとか。通訳が入るとどうしても固くなってしまうので、なるべく漢字語を減らしたり、柔らかく伝えるように心がけています。

もともとはヒットチャートをにぎわす音楽よりも、インディーズ系の音楽や洋楽が好きで、KPOPには全く疎かったんです。親しい韓流ライターさんなどが、早くからKPOPのアイドルに大騒ぎしているのを冷やかに見ていたのですが、実際にアーティストの皆さんとお仕事でご一緒するようになってから、偏見が打ち砕かれました。どのアーティストも国内で人気アイドルであるということに安住せず、日本に来ると日本語や文化を一生懸命に学んで、日本語でバラエティー番組もこなすわけですから、その努力、向上心には感心させられるばかりです。歌やパフォーマンスのレベルもものすごく高いですよね。ステージの袖から間近で見るたびに、彼らの熱情にこちらまで胸が熱くなります。今となっては、私自身KPOPの大ファンになり、その魅力を最大限伝えられるようにがんばっています。

最終回へ続く

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