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【連載:中国の歴史・文化からひも解く「山河令」 】第9回 表裏一体の「毒」と「薬」

この連載では、知っていると「山河令」をより深く理解できる、中国の歴史・文化をご紹介します。

連載 中国の歴史・文化からひも解く「山河令」
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第9回 表裏一体の「毒」と「薬」

日本人の生活にも浸透している漢方薬は、自然界に存在する植物、動物、鉱物など、生薬と呼ばれる原料をいくつか組み合わせて調合した中国古代からの「薬」。ただし、同じ生薬でも使う部分や調合によって違う効果が出るので、漢方薬は「毒」にも「薬」にもなるという特徴があります。

例えば、トリカブトという植物は強烈な「毒」を持っていますが、部分によっては鎮痛作用のある「薬」としても使えます。麻酔作用があるチョウセンアサガオは「薬」の原料として使えますが、間違って食べるとめまいや幻覚を引き起こす「毒」となります。

中国時代劇の中で「毒」が使われる場合、それを解毒する「薬」も用意されているのがお約束。つまり、「毒」と「薬」は常に表裏一体の関係にあるのです。

「山河令」では、毒蝎など「毒」を武器にする刺客が登場したり、生身の人間に毒を与えて作られた「薬人」という化け物が登場したり、「毒」が欠かせない武器となっています。また、江湖でも高い医術を継承することで知られる神医谷の弟子たちは、時と場合によって「毒」と「薬」を使い分けます。そして、周子舒もまた「毒」と「薬」を使い分ける人物です。

周子舒が香として処方した「酔生夢死」は「忘憂草」を原料にした「薬」で、幸せな思い出を呼び起こし、心地よい夢を見させることができます。ただし、第5話の趙氏義荘で使われたように、「酔生夢死」は効果が強すぎると「毒」となり、幻覚を見ることになります。


「山河令」第5話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

一方、同じ「忘憂草」を原料にしていて、記憶を消す作用のある「孟婆湯」も、「毒」でもあり「薬」でもあるといえるでしょう。その「孟婆湯」を解毒できるのが「酔生夢死」です。「酔生夢死」はその人が執着していることを思い出させるため、周子舒が焚いた「酔生夢死」の香で眠っていた温客行は、「孟婆湯」によって消されていた過去の記憶を思い出すことになるのです。

なお、大巫(烏渓)は「毒」にも「薬」にも精通していて、周子舒の治療に尽力します。第32話で彼が周子舒に渡す霊薬は、錬丹術によって作られた丹薬です。丹薬とは、不老不死を求めた皇帝たちが実際に服用していた硫化水銀の鉱物から作られた「薬」で、現代では人体に有害だったことがわかっています。

ただし、時代劇の世界で丹薬といえば、さまざまな神秘的な力を宿しているもの。「山河令」でもこの丹薬が、当初考えられていた薬効とは違う思わぬ意図で使われることになります。


「山河令」第32話より ©Youku Information Technology (Beijing) Co., Ltd.

\「山河令」特集はこちら/

TEXT: 小酒真由子(フリーライター)
アジアから欧米までドラマについて執筆しています。双葉社『韓国TVドラマガイド』にて「熱烈推薦!! 中華ドラマはこうハマる!」を、Cinem@rtにて「アジドラ処方箋」を連載中。また、執筆させていただいたキネマ旬報ムック『最新!中国時代劇ドラマガイド 2021』が絶賛発売中です。

Edited:小俣悦子(フリーランス編集・ライター)

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