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「将軍の花嫁」「孤高の花」…戦場で戦う女性たち|中国時代劇トリビア#75

鬼将軍とおてんばお嬢様の悲劇の政略結婚……のはずが、いつの間にやら敵も羨むおしどり夫婦に!? クールな将軍・楚修明と、ちょっぴりやんちゃでしっかり者のヒロイン・沈錦が繰り広げる胸キュンラブを描いたドラマ「将軍の花嫁」。

劇中では大好きな夫と共に戦う(?)べく、軍への入隊を企てたりする沈錦ですが、彼女のように戦場に赴き活躍した女性たちは実在するのでしょうか? 今回のトリビアでは、そんな戦う女性たちに再びスポットを当ててご紹介してきます!
  


「将軍の花嫁」より


女性軍師として活躍するヒロイン白娉婷が登場するドラマ「孤高の花~General&I」のトリビアで、戦う女性として、「楊家将演義」の穆桂英(ぼく・けいえい)や、“娘子軍(じょうしぐん)”で知られる平陽昭公主、そして正史に残る唯一の女性武将と言われる秦良玉(しん・りょうぎょく)などを紹介しました。


そこで今回は、少し時間をさかのぼり、中国最古の女将軍として知られる婦好(ふこう)からご紹介していきましょう!

婦好は商王武丁(ぶてい)の妃の一人で、紀元前13世紀の半ばから後半の人物。武丁の時代には、漢字の原型となる甲骨文字が使われるようになり、婦好は「史記」などの文献には残されていませんが、この甲骨文による古い記録にその名が記されており、1976年に墓が発見されたことからその存在が広く知られるようになりました。婦好の墓は、考古学発見の中でも極めて重要な発見の一つとされ、殷墟の科学的発掘が始まって以来、盗掘などにあっておらず、唯一完全なまま残されていました。婦好墓からは青銅器、玉器、骨器、武器、道具、楽器など、精巧な細工の副葬品1928点が出土しています。


「将軍の花嫁」より


積極的に軍事力を行使した武丁の時代には戦争が繰り返されており、武丁以外のものが軍を率いて戦うことも多く、その中の一人が婦好だといわれています。時には1万3000人もの軍を率いて戦ったとも伝えられ、彼女が軍司令官として大きな力を持っていたことがわかります。軍事以外でも、婦好は祭祀を取り扱ったという記録もあり、王朝の中では非常に重要な存在だったとも考えられています。

彼女の他にも、同じく武丁の妃の一人である婦妍の出征を問う甲骨文も存在するそうです。また、殷代から西周の前期にかけては、下層の貴族や平民の女性の墓にも武器(魔除けとしての可能性もあり)が副葬されており、婦好のように位や身分の高い女性だけに限らず、平民の女性兵士も存在し出征したのではないか、という見方もあるそうで、女性戦士に関しては色々とイメージを膨らませることができますね!

続いては、ドラマや映画などにも登場する女傑・梁紅玉(りょう・こうぎょく)をご紹介します。

梁紅玉は、岳飛と共に抗金の名将の一人として名を残す韓世忠の妻で、北宋末期から南宋の時代の人物です。文武兼備の優れた女性で、夫と共に南下する金軍と戦い、戦場で大活躍しました。

梁紅玉は、もとは人気の妓女でしたが、たまたま客として訪れた韓世忠を気に入り、彼の妻となります。この2人の出会いは、まだ韓世忠が下級の位であった頃となりますから、梁紅玉はいち早く彼の才能を見抜いていたということですね! プライベートでは、夫婦仲も大変良かったそう!

そんな梁紅玉の代表的な戦いは、「黄天蕩の戦い」。水上での熾烈な戦いで、金軍が率いる10万という数の兵を、韓世忠は妻の梁紅玉とともに、自軍の8千の兵で覆していきます。梁紅玉が太鼓をたたいて全軍を動かすという場面は、京劇や映画などにも登場する有名な場面となっています。


「孤高の花~General&I~」最終話にも、梁紅玉のイメージを彷彿とさせる場面が登場する
© Croton Entertainment


また、小説「説岳全伝(せつがくぜんでん)」では、韓世忠の留守中に反乱軍に城を囲まれた彼女が、生まれたばかりの我が子を抱え、敵兵を打ち倒しながら城を脱出する活躍が描かれるなど、ドラマチックなストーリーが似合う存在としてもよく知られています。

さて、ドラマ「将軍の花嫁」のタイトルにある“将軍”という役職。日本の歴史を学ぶ上でも、「〇〇将軍」といったかたちでよく目にすることが多い名称でもあるかと思います。この“将軍”、実は中国において発祥した語なのだそう! 軍勢を指揮する司令官の官名として使用されたのがはじまりで、その用例は古くは2000年前、春秋時代にまで確認することができるとか。ちなみに日本では、日本書紀で記述する時代から使用されているそう。

古代中国では、将軍は高級武官の職位であり、「将軍は皇帝に任命された官職」「将は王侯や地方領主に任命された官職」と区別されていたとか。後に「司馬」に代わって軍隊の指揮官の名称として用いられるようになり、漢では将軍職は常設ではなく、討伐時などに臨時の官として任ぜられることもあったそうです。



【参考文献】
佐藤信弥『戦争の中国古代史』 講談社現代新書

Text:島田亜希子
ライター。中華圏を中心としたドラマ・映画に関して執筆する他、中文翻訳も時々担当。Cinem@rtにて「中国時代劇トリビア」「中国エンタメニュース」を連載中。『中国時代劇で学ぶ中国の歴史』(キネマ旬報社)『見るべき中国時代劇ドラマ』(ぴあ株式会社)『中国ドラマ・時代劇・スターがよくわかる』(コスミック出版)などにも執筆しています。

【中国時代劇トリビアのバックナンバー】

このコラムに登場した作品

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「孤高の花」HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/c/general.html

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