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【インタビュー】「シグナル」演出家キム・ウォンソク#2「それでもあなたは大人なのか?」

先週より、Mnetにて放送がスタートした、2016年 tvNの最高傑作ヒューマンドラマ「シグナル」。今回は放送に併せ、本作のキャスト&インタビューを掲載!イ・ジェフンさんのインタビューに続き、第2弾は、演出家のキム・ウォンソクさんのインタビューです。

#1「実は、無線の声はほぼ私」:2017.6.19掲載
#2「それでもあなたは大人なのか?」:2017.6.20掲載
 <一部ネタバレあり>物語後半の内容に触れている箇所があります。

【プロフィール】 キム・ウォンソク(演出家)
2007年SF短編ドラマで単独演出家デビュー。2010年、ユチョン主演「トキメキ☆成均館スキャンダル」でミニシリーズの単独演出を担当し大ヒット。その後も「ミセン-未生-」(14)「シグナル」(16)と大ヒット作を手掛け続けるヒットメーカー。


― パク・ヘヨン警部補(イ・ジェフン扮)とイ・ジェハン刑事(チョ・ジヌン扮)が無線で交信するシーンは、直接会話をしているわけではないのに、とても息が合っているように感じました。それぞれバラバラに撮影されたと思いますが、どのような演出で二人の息を合わせられましたか?

無線のシーンを撮るとき、無線相手の声はほぼ私がやりました。キム・ヘスさんの役もです。無線機に向かってチャ・スヒョン刑事が"どれだけ待ったと..."と泣くセリフも私がやりました。イ・ジェハン刑事とパク・ヘヨン刑事がお互いの幸せを祈り、目を潤ませるセリフも私がやってりました。

こんな感情的なシーンで私が相手の声を演じるとき、スタッフ皆が必死に笑いを堪えたり、大根過ぎて辛かったと言っていたのですが、俳優たちは全く気にせずに没入して演じていました。私が上手かったとかではなく、俳優たちの集中力が凄かったんだと思います。


― キム・ウォンソクさんの思い入れのあるシーンとセリフを教えてください。

物語後半で、イ・ジェハン刑事がキム・ボムジュにこう言います。

"あいつは信じていた。また家族が一緒に暮らせるようにと!
そうなるよう協力してくれる大人がいると!
なのになんだ!そんな子にどうしてあんな酷いことができた...

それでもあんたは大人なのか?
それでもあんたは人間なのか?
それでもあんたは警察か!"

韓国人にとって、セウォル号事件は大きなトラウマです。船室で動かずにいなさいと大人たちに言われた通りにしていてそのまま死んでしまった多くの学生たちの最後の姿が鮮明なイメージとして残って消えません。このセリフには、元々"それでもあなたは大人なのか?"というセリフは有りませんでした。私がチョ・ジヌンさんに入れてはどうかと聞いたのですが、彼もそう思っていたと話し、すぐに追加することに決めました。
チョ・ジヌンさんがこのシーンをどれだけ声をあげて演じたのか、何度か取り直した時にはひどく声がかすれてしまっていたので、心配になってそこまでするしかないと止めました。

― 撮影で苦労されたシーンや、キム・ウォンソクさんだからこそ知っている作品の魅力を教えてください。

ハンヨン大橋崩壊シーンは製作費が足りなくて、橋脚の上板さえもセットを制作できずに撮影しました。制作チームの内部でも製作費もないのに橋が崩壊するシーンが本当に必要なのか?との声がありました。本当に罰せられるべき人が財力と権力を利用して罰せられなかったせいで起きた問題を語るためには、この不正腐敗にて発生した人災は必ず必要な事件だと思い、足りない予算だと知っていても無理やり強行し撮りました。制作費が足りない中で取らないといけないという事で、色々問題も多くあったし、後半作業も大変でした。

9~10話ホンウォン洞事件で、キム・ヘスさんが黒いビニール袋を被って逃げるシーンも撮影が大変でした。まずは台本とイメージが合う場所を探すのから大変で。俳優が実際ビニール袋を被って演技しながら走って。ケガしたりもして、撮影する時ずっと緊張していた場面です。

それでも、幸いなことに上の2つのシーンからは本当満足できるような結果が得られました。俳優とスタッフには本当感謝しています。上司にも話したのですが「シグナル」の主人公の刑事たちは皆、犯罪の直接的な被害者か被害者の周辺人物という特徴があります。主人公たちの物語に感情移入してドラマを見ていると、色んな事件に遭い、各事件が解決される過程からもっと大きなカタルシスを感じられると思います。

― 過去と現在の物語が密接に絡みあい、伏線も多く張り巡らされたドラマでした。結末は最初に決まっていたのでしょうか?決まらない段階で撮影を始められていたようでしたら、物語の展開についてどのようにお考えになって進めていたかお聞きしたいです。

全体的な構成はありましたが、結末は具体的には決まっていませんでした。脚本家とは下記のことを話し、撮影をしながら、こんな思いを持って演出しました。

 ・主人公3人の物語が、全て1つに繋がった事件で終わる事
 ・イ・ジェハン刑事を生かせるかどうかが、視聴者が最も気にする部分になるよう物語を作る事
 ・無線に関して3人の選択が大事になる場面で、それぞれの選択がジレンマになる事。
 ・例えば誰かを助けるためにした選択の結果、誰かが死んだりなど...。

― 「モンスター」、「ミセン-未生-」そして本作と、tvN※の作品が続いていますね。地上波・ケーブルテレビどちらもご経験されているウォンソク演出家が考える、ケーブルテレビ作品ならではの利点は何ですか?

tvN も本当に大きな放送局なので、ドラマ制作に関しては地上波放送局の長所と短所を、どちらも持っています。例えば大きな規模のドラマも今は制作できるようになりましたし、大きな組織にある官僚制の問題も見せています。
ただ、地上波と違うのは、創作する人により多くの裁量権があるところですかね。もっと大きな責任も勿論背負うことになりますが、企画と制作をするあたり、私がより尊重されながら仕事できていると感じました。

※tvNとは―
「ロマンスが必要」シリーズ、「応答せよ」シリーズ、「ミセン-未生-」「2度目の二十歳」「恋はチーズ・イン・ザ・トラップ」「ああ、私の幽霊様」「また?!オ・ヘヨン ?僕が愛した未来(ジカン)?」など、放送するドラマが軒並み大ヒットを起こす韓国のケーブルテレビ局。本作「シグナル」はそんなtvNの開局10周年記念作品として局をあげて制作された力作でもある。

― 「トキメキ☆成均館スキャンダル」「モンスター」「ミセン-未生-」そして本作「シグナル」とそれぞれテイストやジャンルの違うドラマを手掛けられていますが、次回はどのような作品を手掛けたいですか?

面白いドラマだったら何でもOKです。今までも本当に素晴らしい作家さんと一緒に作業してきましたが、今一緒に話をしている作家さんも本当面白い作品を書く作家さんなので、是非期待して欲しいです。


― 多くの視聴者がシーズン2を望んでいると思います。キム・ウォンソクさんご自身もシーズン2を望まれますか?

シーズン2はやるべきなのでは、とは思いますが、やるとしたらもっとうまくやるべきなので、少し時間が必要だと思います。

― 「シグナル」をこれから見る日本のファンに、メッセージをお願い致します。

素晴らしい捜査物が多い日本の視聴者たちが韓国の捜査物をどう思ってらっしゃるかが本当気になります。どうか被害者と弱者の味方になり犯罪を語ろうとしたドラマの本来の意図に共感して好きになってください。


「シグナル」作品概要

●予告編


●ダイジェスト映像


●DVD情報

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レンタル<スペシャル・エディション版>vol.1~13 好評レンタル中!
提供:電通  発売・販売元:エスピーオー

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