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韓流映画祭2023オススメ作品コラム《第1弾》 見逃し厳禁!コリアン・ニュー・ウェーブの名匠が描く 『ファン・ジニ』

 一度は見ておきたい貴重な作品揃いの「韓流映画祭2023」の中には、往年の名作の一つに数えられる作品も。80〜90年代、“コリアン・ニュー・ウェーブ”と呼ばれる韓国映画の新たな時代を築いた名匠ペ・チャンホ監督が1986年に手がけた『ファン・ジニ』はそんな必見作です。

 ファン・ジニは16世紀前半の朝鮮時代に実在した妓生であり、詩人としても名を残した文化人。様々な逸話が伝えらえられ、昔から多くの映像作品の主人公となってきました。ハ・ジウォンやソン・ヘギョ主演によるドラマ、映画でご存知の方も多いのではないでしょうか。ただ本作のファン・ジニは、芸の道を極めようと毅然と歩む姿が印象的な、これまでの彼女とは全く異なっていることに驚きを禁じ得ません。

 婚礼を目前にして迷いを抱いている、名家の娘ファン・ジニ。そんな彼女に想いを寄せる靴職人の男 は、彼女の靴を盗んで集めるだけでは飽き足らず、ある晩入浴姿を覗いて捕まります。男の行動は変質者同然ですが、その想いは純粋で哀れです。役所に突き出すという母を止めて、木の枝を折って自ら男を鞭打つジニ。男は歴然とした身分の差を突きつけられ絶望したのか、自ら命を絶ってしまいました。

 それがきっかけで、彼女は評判の芸妓ミョンウォルになるのですが、渓谷で歌うシーン以外には、華麗な舞を見せたり、琴の腕前を披露したりといった、名妓としての本領を発揮する場面は出てきません。しかも、恋に落ちた相手と心ならずも別れた後は、場末の宿屋で酌婦を務め、そこで出会った訳ありの学者と放浪の旅に出て、さらに苦境へと身を落としていくのです。

 劇中のファン・ジニの生きざまは壮絶としか言いようがなく、見ているうちに、なぜそんな苛酷な生き方を選んだのかという疑問が湧いてきます。もしかすると、自分への愛に命を捧げた靴職人への贖罪なのでしょうか。それとも、男たちに芸を見せながら生きる人生に無常を感じたのか。本当のところはわからないものの、どんなに零落しても損なわれることのない彼女の気高さには胸打たれずはいられません。

 現在も第一線で活躍するチャン・ミヒがファン・ジニに扮し、泥の中に咲く蓮のような美貌を見せています。特徴のある声とセリフ回しも彼女ならではの大きな魅力です。そして、ジニの運命を変えたとも言える靴職人を、国民的俳優アン・ソンギが演じました。セリフはなく出番も短いながら、その存在感に感服させられます。また、特筆すべきは息を呑むような美しい映像。四季折々の自然の風景の中に浮かび上がる一人の女性の人生の移ろいが、心に奥に刻みつけられるような、深い味わいのある一作です。

Text:小田香(おだかおり)


韓流映画祭2023
シネマート新宿、シネマート心斎橋にて開催中!
今回ご紹介した『ファン・ジニ』は6月16日~22日の1週間限定上映!

[鑑賞料金]一般:1,900円/大学生:1,500円/TCG会員1,300円
高校生以下:1,000円/シニア(60歳以上)1,200円
※各種サービス、利用可
公式HP:https://www.cinemart.co.jp/dc/o/hanryu-2023.html  twitter:@hanryu_2023

おうちでCinem@rt同時開催
[視聴料金]550円 [視聴期間]48時間
HP:https://www.cinemart.co.jp/vod/

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