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10月27日(木)までの上映

七人樂隊(PG12)

INTRODUCTION

 2020年/第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクション作品『七人樂隊』は、香港映画ファンならずとも胸が躍るオムニバス映画だ。製作を兼任したアクション・ノワールの巨匠ジョニー・トーの呼びかけにより、長らく香港映画界を牽引してきた7人の名匠が集結。それぞれ固有の作風で世界的な注目を集める監督たちが、1950年代から未来を背景に撮り上げた7つの短編は、独立した物語でありながら時空を超えてエモーショナルに響き合い、魅惑的な “Septet(七重奏)” というべき作品に仕上がっている。
 7人の監督が格別なノスタルジーをこめて映像化した7つの物語には、各時代を特徴づける風景、音楽、ファッションが満載。デジタルカメラが主流の現代にあえて35mmフィルムでの撮影を行い、過ぎ去りし “フィルムの時代” へのリスペクトを表明したことも特筆すべき試みと言えよう。また、フランシス・ン、サイモン・ヤム、ラム・シュらの多彩なキャストが、味わい深いアンサンブルで映画に豊かな哀歓を吹き込んでいる。

STORY

 カンフーマスターのサモ・ハンが修業時代の自伝的エピソードを紡ぎ上げた「稽古」。『女人、四十。』のアン・ホイが教師と教え子たちの絆を人情味豊かに描いた「校長先生」。ウォン・カーウァイ作品『欲望の翼』などの編集マンとしても知られるパトリック・タムによる刹那的な青春ロマンス「別れの夜」。『マトリックス』の革新的なアクション表現に貢献したユエン・ウーピンは、「回帰」で老人と孫娘の交流を温かく紡ぎ上げた。
 さらに、ジョニー・トーが投資での成功を夢見る市民を風刺した「ぼろ儲け」。1990年代にジョン・ウーに続いてハリウッド進出を果たしたリンゴ・ラムの遺作「道に迷う」は、香港の街並みの変遷をひとりの中年男の心象風景に重ね合わせた感動編。“香港のスピルバーグ” ことツイ・ハークの最終話「深い会話」は、精神科医と患者の対話が予測不能にねじれていく不条理コメディである。

DIRECTOR'S PROFILE

「稽古」サモ ・ハン(洪金寶)

「稽古」サモ ・ハン(洪金寶/Sammo Hung)

1952年1月7日生まれ。“七小福”のメンバーの1人。製作、監督、脚本、出演を1人でこなす“カンフー映画のキング”で、尊敬をこめて“大哥大(大きい兄貴、ボス)”と呼ばれている。1989年、映画『七小福』で自らの師匠の于占元(ユー ・チャンユアン)の役を演じ、第33回アジア太平洋映画祭で最優秀主演男優賞を受賞。近年では『西遊記 孫悟空vs白骨夫人』『SPL 狼たちの処刑台』等に出演。
「校長先生」アン・ホイ(許鞍華)

「校長先生」アン・ホイ(許鞍華/Ann Hui)

1947年5月23日生まれ。香港の監督、製作者、脚本家。70 ~80年代の香港ニューウェーブで注目された。2017年6月には映画芸術科学アカデミーの会員に選ばれる等、影響力のある女性監督の1人。2020年第77回ベネチア映画祭で生涯功労賞を受賞。監督作『第一香炉』は第40回香港電影金像奨で撮影、美術、衣装デザイン&メイクアップ、オリジナル音楽の各部門にノミネートされている。
「別れの夜」パトリック・タム(譚家明)

「別れの夜」パトリック・タム(譚家明/Patrick Tam)

1948年3月25日生まれ。香港ニューウェーブの旗手。『欲望の翼』『楽園の瑕』で香港電影金像奨の最優秀編集賞を2度獲得。現在、香港浸会大学電影学院で客員教授を務め、後進の育成にも尽力している。2007年、監督作『父子』で香港電影金像奨の最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞の3賞を一挙に獲得した。
「回帰」ユエン・ウーピン(袁和平)

「回帰」ユエン・ウーピン(袁和平/Yuen Wo Ping)

1945年8月24日生まれ。監督作『スネークモンキー 蛇拳』『ドランクモンキー 酔拳』でカンフー映画ブームを巻き起こし、ジャッキー ・チェンを大スターに押し上げる。ハリウッドへも進出し『グリーン・デスティニー』『マトリックス』でアクション監督として世界に名をはせた。香港電影金像奨の最優秀アクション設計賞を5度受賞している。
「ぼろ儲け」ジョニー ・トー(杜琪峯)

「ぼろ儲け」ジョニー ・トー(杜琪峯/Johnnie To)

1955年4月22日生まれ。『エレクション』『ザ・ミッション 非情の掟』等で知られる香港の監督。2005年、『エレクション』がカンヌ国際映画祭でコンペティションに出品され、『エグザイル/絆』はベネチア、トロント等海外の多数の映画祭で賞賛された。2011年には『奪命金』が第68回ベネチア国際映画祭のコンペティション部門で上映される等、海外での評価も高い。プロデュース作品も多数。
「道に迷う」リンゴ ・ラム(林嶺東)

「道に迷う」リンゴ ・ラム(林嶺東/Ringo Lam)

1955年10月28日生まれ。『ワイルド・シティ』で知られる香港の監督(故人)。『プリズン・オブ・ファイアー(監獄風雲)』『友は風の彼方に(龍虎風雲)』『学校風雲(原題)』の風雲3部作が最も有名。中でも、『友は風の彼方に』はクライムアクションの傑作とされ、クエンティン・タランティーノ監督の『レザボア・ドッグス』にも影響を与えている。
「深い会話」ツイ・ハーク

「深い会話」ツイ・ハーク(徐克/Tsui Hark)

1950年9月1日生まれ。『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ 天地黎明』『西遊記2 妖怪の逆襲』等で著名な監督。創作アイデアだけでなく技術面でも、革新の先駆者。出世作の『蝶変(原題)』で武侠映画の伝統を覆し、『天上の剣 The Legend of ZU』ではSFXの威力を示した。「王朝の陰謀」シリーズ、『タイガー ・マウンテン 雪原の死闘』等、今なお、最もヒットを飛ばす監督のひとり。

予告編

監督

サモ・ハン(洪金寶)アン・ホイ(許鞍華)パトリック・タム(譚家明)ユエン・ウーピン(袁和平)ジョニー・トー (杜琪峯 リンゴ・ラム(林嶺東) ツイ・ハーク(徐克)

キャスト

ティミー・ハン(洪天明)フランシス・ン(吳鎭宇)ジェニファー・ユー(余香凝)ユン・ワー(元華)ン・ウィンシ
ー(伍詠詩)サイモン・ヤム(任達華)チョン・タッミン(張達明)ラム・シュ(林雪)

スタッフ

2021年/香港/広東語/ 111 分/ビスタ/ 5.1ch /原題:七人樂隊/英題 Septet The Story of Hong Kong 日本語字幕:鈴木真理子/
配給:武蔵野エンタテインメ ント/ PG12
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