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Cinemartで不定期連載中の「【韓流お仕事図鑑】あなたのもとに韓国ドラマが届くまで」。この連載は、韓国ドラマを日本のお茶の間に届ける過程に携わる人たちへのインタビューです。今回、その中で「師任堂(サイムダン)、色の日記」に携わる人たちへのインタビューを、この「師任堂~」特集ページでも掲載!

今回は特別編!「師任堂(サイムダン)、色の日記」(以下、「師任堂~」)でソン・スンホン演じるイ・ギョムの声を演じた俳優、内田夕夜さんにお話をお伺いしました。

ご自身も俳優でありながら、声優として洋画等や海外ドラマの吹き替えでも活躍され、レオナルド・ディカプリオやウィリアム・フォンなどの吹き替えで知られる内田さん。画面で演じる側でもあり、声を吹き込む側でもある。ハイブリットな活躍をされる内田さんだからこそのお話は必読です!


<プロフィール>
内田夕夜(Uchida Yuuya)
劇団俳優座所属。レオナルド・ディカプリオ、ライアン・ゴズリング、ジェームズ・マカヴォイなどの吹き替えを多く担当している舞台俳優・声優。海外ドラマや洋画の吹き替えでも数多くの役をこなす。主な出演作に『スーパーナチュラル シリーズ』サム役、『美男(イケメン)ですね』シヌ役など。


第1回 「美男<イケメン>ですね会」 :2017.4.4更新
第2回 「怨(えん)という感覚」 :2017.4.5更新
第3回 「ソン・スンホンの"咳"」 :2017.4.6更新

声優・内田夕夜さん #3

― 「師任堂~」で、内田さんが演じられていて好きなシーンはありますか?

内田:
やっぱりサイムダンとふたりのシーンが楽しいです。お互いのマイクが近いということもあるんですが、良い意味でサイムダンを演じられる生田智子さんは声優さんではないので、芝居の飛んでいき方がズドンと飛んでくるんです。


― 内田さんからみて「師任堂~」という作品自体の見どころはどんなところだと思いますか?

内田:
実は、まだ全話見られていないんですよ。市来さんが見せてくれなくて(笑)。
でも、やはり見どころはイ・ヨンエさんの美しさですね。僕も「宮廷女官チャングムの誓い」をずっと見ていたので、主演がイ・ヨンエさんで、吹き替えが生田さん、と言うと「チャングム」のイメージがすごく強いんです。

もちろんあの時も美しかったですが、「チャングム」では「元気いっぱい!」「前向き!」みたいなキャラクターだったんですよね。
「師任堂~」では、母でもある役柄なので、艶があってしっとりしていて。でも「チャングム」が踏襲されている真っ直ぐさもあるので、「チャングム」ファンの方にもおすすめですね。

あとは、やはり作品自体がすごく上手く出来ていると思います。毎回、次の台本をもらうのが楽しみです。
金剛山図という絵が物語のベースになっていますが、それが現在にも過去にも存在していて。その絵が美しいということを現代人は知っているけれど、作品の中では実物も見られるし、その絵を描いた人たちの心についても描かれていて。それらが綺麗に繋がるというよりは、散りばめられているものが集まってくる。それが謎解きになっていたり、対決になっていたりだとか、様々な形態をとっていて、実によく作られた作品だと思います。

「師任堂(サイムダン)、色の日記」より。


― 内田さんからみて、「師任堂~」日本語吹替版ならではの魅力はどこだと思いますか?

内田:
吹き替えの収録現場では「一字一句間違えるな」っていうディレクターさんもいるんですが、今回はそうではなく、感情優先で演じせていただいてます。
あと、「そんな人間いないよね」という役は演じられないのですが、「ギリギリいるだろうな」というキャラクターが集まっているのが日本語版かな、という気がします。

― 何回か吹き替えの収録現場を拝見させていただきましたが、それぞれキャラクターがたっていて、面白いですよね。

内田:
「ギリギリだけどいるよね、そういう人」みたいな。特にこの作品はそれを強く散りばめることが出来る現場でした。

「師任堂(サイムダン)、色の日記」より。

― これから「師任堂~」日本語吹替版をご覧になる方に、「ここは特に注目して聞いてみて!」というシーンやポイント等あれば教えて下さい。

内田:
ガヤです(笑)

― 即答ですね(笑)

内田:
どんちゃかしているようなシーンでは、ただでさえギリギリのキャラクターたちを、よりギリギリまで高めていることが多いんです。よく聞いていただくと、おもしろいことを言っていたりします。
僕としてはもちろん「ギョムのセリフに注目です!」って言いたいところなのですが、それは当然としつつ(笑)、ガヤと呼ばれる部分をよく聞いていただくと非常に面白いと思います。

― 以前、「師任堂~」のガヤを収録している現場を見学させていただいたのですが、笑いが起きていました。
はじめて注目して聞いてみたので、こんなに面白いんだって驚きましたね。

「師任堂(サイムダン)、色の日記」より。


― 続いて、今回のソン・スンホンさん以外にも、レオナルド・ディカプリオさん、アジアでいえばウイリアム・フォンさんやチソンさんなど、
いわゆる内田さんの"持ち役"である俳優さんが何人もいらっしゃいます。
同じ俳優さんの演技をされるときに意識されることはありますか?

内田:
自分も舞台で演じる演じ手であると考えたときに、彼らは台本をもらったときに、【間】って書いてあるような部分があったと思うんです。
それは、台本に「○秒」と書いてあるわけではなく、人によって全部違うんです。
つまりその人の感覚によるものなので、役が変わるからといって間が変わるわけではないんです。ディカプリオさんならディカプリオさんの自分が一番良い間っていうのがあるし、それぞれの方にそれぞれの間がある。それが良い悪いではなくて自分とどれぐらい違うか。
たとえば「自分が一番良いと思う間より、この人はちょっと長いぞ」とかね。そういったことを意識しています。

あと...若干企業秘密になるのですが...咳を意識します。

― 咳ですか?

内田:
はい。演技のようで演技ではなく、素に近い部分なので。
不思議なもので、同じ役者さんで違う作品をやっても、咳は同じ感じになるんです。もちろん演技なんですが、演技が出来ない演技、みたいなところがありますね。

― 「Dr.JIN」と「師任堂~」、内田さんはどちらもソン・スンホンさんの声を演じられているので、見比べてみると同じ咳が聞けるかもしれないんですね。

内田:
同じ咳をしていると思います。少なくとも何箇所かは、確実に同じ咳をしているシーンがあります。

「師任堂(サイムダン)、色の日記」より。


― このインタビューを読まれる方にも、ぜひそのシーンを見つけていただきたいです!
では、内田さんから見て、吹き替えならではの魅力や楽しみ方は何だと思いますか?

内田:
圧倒的に情報量が多いですよね。だから、吹き替えは平行世界を表現出来る。
同じ画面の中で、ここでしゃべっています、向こうでしゃべっています。実は向こうのセリフが、こっちのセリフにとって、重要なカギになる、ということがあるんです。字幕版でもそれは表現しようとされていると思いますが、吹替版の方が圧倒的にそれが出来る。

あと、僕はこの仕事をやる前は字幕派だったのですが、この仕事をやるようになって、意識的に日本語吹替版を見るようになりました。
そうして初めて気が付いたのは、いかに見逃していたことが多かったのか、という事です。どうしても字幕版だと、目線がパッと字幕に飛ぶじゃないですか。その一瞬でどれだけのものを見逃していたんだろうって。

失っていたのは画面に映るものだけじゃありません。
日本語は決定の言葉が最後にあることが多いですよね。「私はあなたのことが好きです」なのか「好きじゃないです」なのか。最後がけっこうポイントだったりするんです。
でも、字幕って一定の文章を先に出さざるを得ないので、字幕では「あなたのことが好きです」まで出ているのに、画面では「あなたのことが...」って言っている。ちょっとだけ、先の展開がバレちゃうんです。

自分に叱咤激励する意味も込めて、出来さえよければ日本語吹替版の方がより作品に入り込めると思います。


― 字幕ってどうしても先回りしてしまうっていうのは私もよく見ていて思います。本当はもうちょっとドキドキできる時間が、あと何秒かあったかもしれないって。

内田:
それって意外と、字幕版ばかり見ていると気が付かないんですよね。
字幕派だったときは「これがオリジナル」という感覚で見ていたんですが、日本語吹替版を見るようになって、実は字幕の方がオリジナルでも見落としてしまう部分が多いんじゃないかな、という思いに変わりました。

「蘭陵王」より。

― では、最後にご自身の<マイ・ベスト・韓国ドラマ>を教えてください。

内田:
『彼女を信じないでください』ですね。とても思い出深い作品です。


― 本日はありがとうございました!
あと...あまりお仕事と関係ないことで恐縮なのですが...最後の最後に...
いつも気になる「内田夕夜」というお名前について聞いてもいいですか?
つい、あのロックンローラーの方が思い浮かびますが、どういう理由でついた芸名なのでしょうか?

内田:
内田は本名なのですが、大学入学したての頃、周囲から「内田って"内田裕也"の内田だよね」と言われた流れから、いつの間にか「ゆうや」と呼ばれるようになりました。

漢字は、僕自身がイタズラ書きで絵を書いたりしたときに、ひらがなで書くよりキレイな文字が欲しいなと思って「夕夜」とサインをしていたんです。次第に、大学の同期がそうやって呼ぶようになり、先輩も後輩も、まわりが「ゆうや」と呼んでいるからそう呼ぶようになり...。
先ほどもお話しした通り、俳優座は桐朋学園という大学を出ないと入れなかったので、俳優座でも、ある程度歳の近い人たちは全部大学の先輩後輩。なので、「ゆうや」というあだ名と一緒に劇団に入り、みんなは「ゆうや」って呼ぶし、年賀状でもそちらの名前が多くなり...(笑)。

もう変えちゃおう!と思って社長のところに行って「この芸名にしたいです」って言ったら、「あ、漢字変えたの?」って言われて(笑)。


― あはは!(笑)

内田:
「いや、そもそも名前も変わってます」みたいな(笑)。もう完全に「ゆうや」の方が浸透していたんです。名前の方が先についてくれたみたいなかんじです。

(終わり)

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「師任堂(サイムダン)、色の日記」 
●予告編



★内田さんがイ・ギョムの声を演じる日本語吹替え版も収録!★
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発売元:フジテレビ/フィールズ/エスピーオー
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