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【インタビュー】『親愛なる君へ』チェン・ヨウジエ監督 前編"きっかけは、愛する権利を守る人々"



モー・ズーイーとの仕事は、「信じている」ではなく「分かっている」

― 本作では、モー・ズーイー(莫子儀)さんやチェン・シューファン(陳淑芳)さんをはじめ、どのキャストも素晴らしかったです。チェン・ヨウジエ監督がキャスティングを考えるときに特に重視されていることはありますか?

チェン監督 演技はもちろん重要ですが、人間の本質の部分、「この人はどうやって世界を見るか」ということを、キャスティングの際に一番大切にしています。それは別に俳優の良し悪しではなく、まずは目に見えない部分で思いが通じ合えるかどうかです。でも“思い”には形がありません。そういう目に見えないものを短いオーディションの中でどう感じ取れるか、そして俳優にも感じ取ってもらえるか。その確かめ合いが、僕がキャスティングの際に一番大切にしていることです。


― 主演のモー・ズーイーさんとは2度タッグを組まれていますが(※1)、彼はまさに“思い”が通じ合える方ということでしょうか?

チェン監督 もちろんです。モー・ズーイーとは「どこかで分かりあっている」という安心感があるんです。たとえ十数年間一緒に仕事をしていなくても。表現するのが難しいのですが、僕が言わなくても彼ならわかってくれる、というところがたくさんあるんです。

なので撮影中は、ほとんど彼に任せていました。もちろん事前にキャラクターの設定などは詳しく話し合います。例えば、髪の毛の色から若い頃好きだったバンド、収入や育った家庭、父親の職業など凄く細かなところまで。でも、このキャラクターをどう表現するかは彼に任せます。

※1 チェン・ヨウジエ監督の長編デビュー作『一年之初(一年の初め)』(06)にモー・ズーイーが出演しており、本作『親愛なる君へ』(20)では14年ぶり2度目のタッグとなる。


― 映画には映らない部分についてはやり取りされるが、映る部分はお任せするということでしょうか?

チェン監督 そうです。というより、僕と彼なら決めておくべき設定さえ決めておけば、脚本に描かれていることを彼はしっかりやってくれる。「そう信じているから」ではなく「僕と彼なら出来ると分かっている」んです。


― とても特別な関係性ですね。

チェン監督 でも、僕らはプライベートではほとんどで会わないんですよ。久しぶりに再会したのが、2018年の『一年之初(一年の初め)』出演者の結婚式でした。

その時に、モー・ズーイーが僕に「そろそろ一緒に映画をつくらないか?」って声をかけてきたんです。その時、僕も同じことを考えていて。ちょうど脚本を書き始めた頃だったのですが、実はすでに彼にこの役を任せることをほとんど決めていたんです。


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