【ほぼ週刊 映画紳士タモ コラム VOL.42】「うつし世は夢、よるの
夢こそまこと」とは江戸川乱歩の座右の銘だが、この言葉の元となったのは本家エドガー・アラン・ポーの詩の一節"A Dream Within A Dream"から採ったものだという。神よ、私たちが見、あるいは感じるすべては夢の中の夢でしかないのですか?と問いかけるポー。それは凍てついたボルチモアの路上に倒れた40年の儚かった人生のまさに絶唱ともいえる詩だった。推理小説の産みの親とも呼ばれるポーの原作になる映画は多いがそれらはホラーものとしても有名だ。中でも名作中の名作と圧倒的な評価の高さで知られるのが『世にも怪奇な物語』だろう。これはまたフランス・イタリア合作として3人の巨匠によるオムニバス形式になっていることでも話題を呼んだからだ。ロジェ・ヴァディムの『黒馬の哭く館』、ルイ・マルの『影を殺した男』、フェリーニの『悪魔の首飾り』である。この錚々たる監督たちが恐怖という美をまとい、生と死の間をさまよい、愛と憎しみに苛まれる人間の儚い夢を描くといったまさにポーに憑かれたような真剣勝負に臨んだのだ。
このオムニバス映画はまた華やかな女優対決といっても良い。ヴァディムの作品には当時の愛妻ジェーン・フォンダが『バーバレラ』で魅せた半裸体コスチュームで馬に乗りまくって、その悩ましさは中世という時代設定もあって背徳の匂いがぷんぷんするようだ。これを撮った直後『イージー・ライダー』を製作した実弟ピーター・フォンダとの最初で最後の共演も見もの(実際ロケ中、姉弟は非常に仲が悪くヴァディムも困ったようだが)。

バルドーはと言えば、オムニバス映画について以前『素晴らしき恋人たち』の時に「出番が少なく出演者がたくさんいる中で目立つのは競争相手のいない役を上手く演じるよりもはるかに難しい」と語っている。ルイ・マルとは『私生活』以来だった。その時はバルドーから申し出た出演だったが今回は原作にない役をもらい、アラン・ドロンとの白熱のSMバトルを展開する。だがドロンとの共演はしっくりいかなかったし、大きな黒髪の鬘をつけさせられてルイには少々お冠だったという。しかし反ってそれが作品に狂気を植えつけたのだからこれこそポーの魔力かもしれない。
そして女優対決を制し、観た者が決して忘れられないのが実は名も無き美少女だった。昔から悪魔とは黒い影を背負った男という発想だったが、フェリーニは初めて金髪の真っ白なドレスを着た瞳の大きな悪魔を創り出した。白い鞠を転がし闇に浮かぶ白い顔が微笑む時、誰かが魂を抜き取られる。ポーが見た夢、フェリーニこそ最高の伝道師であった。

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