【ほぼ週刊 映画紳士タモ コラム VOL.39】「結婚しなくていい、でも私を・・・
抱いてほしい」ってブリジットはこの映画の中で言う。こんなセリフを言わせたのはミシェル・ボワロン監督。フランス映画の巨匠中の巨匠ルネ・クレールの門下生だったが、軽妙洒脱なシャンパン・コメディを撮らせたらこの人を置いてないだろう。
実際『殿方ご免遊ばせ』が公開された頃はその後のフランス映画を決定づけたヌーヴェルヴァーグがスクリーンを占有するかのごとき勢いであったが、そんな小難しい理屈はともかく映画は面白ければいいんだとばかり打って出た感がする。いわゆる職人だ。日活の中平康に倣ったヌーヴェルヴァーグの連中よりもちょっと後の東宝の古沢憲吾作品を見るようだ。
ノリノリのジャズで始まり、当時のわが国の一般庶民にとっては高嶺の花だった快適そうなマンションに住み、大きな冷蔵庫から牛乳ビンごと丸呑みするといったアメリカ映画張りの生活やスリリングでゴージャスな展開だったりが観るものを飽きさせないのだ。

特にバルドーの扱い方の上手さは他の監督より群を抜いている。それはバルドー自身が自伝でこの作品を自慢できる映画の一つに挙げていることからも分かる。深紅のパーティドレス、ウエディングドレス、飛行服、ニースでのビキニ水着などなど、これでもかというカラフルなファッション。勝気なパリジェンヌが世の男性憧れのキッチン・スタイルであるエプロンとシャツだけでマンボを踊り、バスタオル1枚で新婚のベッドですねる所作の愛らしさと言ったら。
ボワロン監督はデビュー作『この神聖なお転婆娘』と『気分を出してもう一度』と3本の"ブリジットもの"(山田宏一氏はこう括っている)を撮っているが地のままの彼女を描くことで艶やかなコメディエンヌの才能も引き出している。だからルイ・マルやジャン・リュック・ゴダール作品での演技然とした彼女よりこのボワロン監督のものが僕は大好きだ。
相手役も"スクリーンの恋人"と言われガルボ、バーグマンと40年代にアメリカ中の人々の涙を搾ったシャルル・ボワイエという絶妙な配役。バルドーもついにここまで来たかと納得させられるが秀逸なのはすべての観客に屈託のない微笑を浮かべて愛のさざなみを送ってくれるラストシーンだろう。"女"を描く、それもその女の最高の魅力を。これが監督の腕だ。このラストを観て世界中の男どもがどれだけ幸せな気持ちになっただろう。
12年後、僕が配給会社の就職試験を受けたときの映画が『個人教授』であった。ミシェル・ボワロン監督の熟達した手腕は会社には大ヒットを、僕には合格という喜びをプレゼントしてくれた。

「愛蔵版 欧州女優コレクション」
http://www.oushu-joyu.com/
「殿方ご免遊ばせ [HDニューマスター版]」商品情報
http://shop.cinemart.co.jp/shop/goods/goods.aspx?goods=OPSD-S933





コメントする