【ほぼ週刊 映画紳士タモ コラム VOL.36】「ベベは演技しない、ベベは・・・
存在するだけなのである」と名言を吐いたのはロジェ・ヴァディムであった。ベベは赤ちゃんという意味とイニシャルのBBをかけたブリジット・バルドーの愛称。それほど自然体で愛らしかったのだろうが、思春期前の僕らにはセックス・シンボルとしてヌードを彷彿させ、また別にちょっと恥かしい意味合いをもっていて、ご存知のように日本語的に言えば着物の幼児語であり、またある地域では女性のそのものズバリをさす言葉だったから尚更興奮させたのかもしれない。そのベベにまさに一から演技指導をやり、自らが書いたシナリオに出演させ、彼女を主演に監督デビューまでしてしまった男が言うのだからこれ以上のベベ評はない。ロジェは2000年に72歳で亡くなっているが『素直な悪女』で別れた後は自身兄妹みたいと言うぐらい寂しがりやのベベは何かにつけて頼りにしていた。そんなベベを知り尽くした男は有能なマネージャーであり、革命的なプロデューサーでもあった。彼のベベに関する全仕事の中で最も優れていることは彼女の才能を信じて18歳から『ビキニの裸女』をはじめとして多くのB級作品に出演させていることだ。妖精のような色気をはじけるような肢体に包んで夫の言うことを守ってフランス映画のみならずハリウッドのメジャー超大作にまでチョイ役だけど出演しているけなげなベベ。「才能に恵まれながら名監督に起用されダメになってしまった新人をいっぱい知っている。単なる娯楽映画に出ている限り女優としての失敗はない」というロジェのステージ・ハズバンド的女優生育法がベベの天衣無縫な演技を完成させたといえる。その中でもイギリス映画である『わたしのお医者さま』は準主役としてもちろんシャワーを浴びるシーンやシャンソンを歌うという後のベベ映画の原点ともいえる魅力を全編に発散している。ビンテージでレアなベベを堪能しながら『ベニスに死す』など後の名優ダーク・ボガードとの共演は、珍しくも貨物船の船医が主人公とあって今の時代では絶対醸し出せない甘軽な航海ロードムービーとなっている。この辺りからベベの山の手のわがまま娘のキャラクターが芽吹いてくる。それを決定的にしたのが名匠ルネ・クレールの助監督だったミシェル・ボワロンが初めて監督した『この神聖なお転婆娘』。"シャンペン・コメディ"と言われるお洒落な青春お色気映画のヒロインを演じ脚本を書いたロジェとともに徐々にスターの座をつかんでゆく。ファム・ファタールとしてのベベもいいが、僕が一番好きなのはこの明るくお茶目な素の自分を見せているボワロンの"ブリジットもの"である。

「愛蔵版 欧州女優コレクション」
http://www.oushu-joyu.com/
「わたしのお医者さま [デジタル・リマスター版]」商品情報
http://shop.cinemart.co.jp/shop/goods/goods.aspx?goods=OPSD-S929




コメントする