2010年2月22日

【ほぼ週刊 映画紳士タモ コラム VOL.25】「男に心から愛された経験をもつ女は・・・

一生孤独に悩むことはない」とは詩人であり抒情詩的作家として今でもファンの多いリルケの言葉だ。いや何故こんな高尚なことを思ったかというとそれは『禁じられた抱擁』のカトリーヌ・スパーク演じるセシリアにぶちのめされたからだ。ここにいるのはいままで観て知っていたスパークではない。全然別の女がそこにいたからだ。金持ちの母に甘えるだけ甘えている画家と称すディノの心も肉体も食い尽くしてしまう悪い悪い女の子がいた。ときには無軌道に走る若者たちではあるがどことなく幼さが残るスパークの愛らしさについついすべて許してしまう僕たちではあったがこのセシリアにはディノでなくともついて行けない。大体がこの映画では全裸を見せる。これは初めてだと記憶している。いままでも下着姿とか背後から胸のラインを見せたりというチラリズムは当然あったのだけど、一気にここまでやるとは思わなかった。それがあの有名な全裸の上にデッカイ1万リラ札を1枚1枚乗せていくシーンであった。この作品が公開されて1年後にビートルズの♪キャント・バイ・ミー・ラブが大ヒットしたのだけれど、まさに金じゃあ私は買えないわよと言わんばかりの見事なシーンであった。しかもセシリアの相手はディノだけではなかった。冒頭に出てくる老画家などは絵描き中に死んでしまうし、若い映画の製作者なんてのも出てくる。お金だけじゃなくつきあっている男と次々と関係を持つなんて一体この女は何を考えているのだろう。セシリアよ、いや違った、スパークよ、考え直してくれ、本当の愛、いや愛し合って結ばれるということの大事さを。スパークは僕たちにとっては可憐なセクシー・アイドルではあったが、その魅力はちょっと手の届かない所にいる良家の子女的無邪気さにあった。あの実生活でもさもありなんと思える甘ったるい目つきや仕草は誰でも簡単にできるというものではないのだ。あの麗しさは持って生まれたものなのだ。だがそのスパークが眼一杯セシリアになりきって僕たちに見せつけたのは女の子じゃなくて女だった。若者の群れから離れた孤独な女だったのだ。知らぬ間に彼女は成長していた。当時流行のアントニオーニ監督張りの愛の不毛を演じられる女優になっていたのだ。そういえばこの頃はもう一児の母になっていたのだから。

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『禁じられた抱擁』DVD情報 
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「愛蔵版 欧州女優コレクション」公式HP
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